国交省飛行機内トイレでの「喫煙」に加熱式、電子たばこを含むことを明記、ところが以前から日本の航空会社では機内は「たばこNG」が一般的です。しかしこの風潮になったのはここ20年ほどです。なぜダメになったのでしょうか。

世界的な「機内禁煙」の走りはアメリカ

国土交通省は2020年7月より、飛行機の機内トイレにおける「禁煙」の対象に、加熱式たばこや電子たばこが含まれることを明文化します。国内の各航空会社の機内利用ルールとしてこれまで、紙たばこだけでなく、電子たばこなどの喫煙も禁じられていたものの、明文化することでより「隠れて吸う」人がいなくなるように、対策を徹底する方針です。

ところで、日本の航空会社の飛行機内での喫煙が禁じられるようになったのは、ここ20年から30年のことです。かつては機内で、乗客が紙たばこをくゆらせる姿は、ごく普通に見られるものでした。

旅客機内を禁煙化するムーブメントは、アメリカが始まりといわれています。同国で機内全面禁煙に取り組んだ草分けは、1981(昭和56)年に設立されたミューズエアという航空会社とされており、設立当初から4年間、機内での喫煙を全面的に禁じています。

その後アメリカでは、国が公共交通機関について禁煙化していった流れを受け、1980年代後半から短距離国内線90年代に入ると比較的長い国内線でも禁煙が一般的となり、1994(平成6)年にはデルタ航空が同社の全便で全面禁煙を実施します。

これはもちろん、たばこを吸わない人に対する快適性や健康被害に対しての問題もあったほか、ブラジルのヴァリグ航空などで、たばこの火の不始末が原因とされる航空事故も発生したことがあり、安全性を高めるためというのも理由です。

「機内禁煙」 日本ではいつから定着?

日本においては2000年ごろまで、旅客機内での喫煙は、フライトの状況などにもよりますが一般的に特に禁じられるものではありませんでした。そういった風潮があったことは座席にも見ることができ、たとえば1995(平成7)年に導入され、2020年に退役したANAウィングス(導入時はエアーニッポン)のボーイング737-500型機「スーパードルフィン」などは、座席に灰皿が設けられています。

そうしたなか、世界的な機内禁煙化の潮流を受け、JAL日本航空)では1990(平成2)年に2時間以内の全路線で、1998(平成10)からはすべての国内線を全席禁煙にするなどの取り組みが見られました。これは1992(平成4)年に、ICAO(国際民間航空機関)が国際的な機内禁煙化を勧告したことも関係しています。ただ当時の日本国内線および、国際線については、全路線で禁煙というわけではありませんでした。

その後JAL、ANAともに全面禁煙へ踏み切ったのは1999(平成11)年のことで、以降、現在のように機内でタバコを吸ってはいけないというのが一般的になりました。当時のJALの報道発表によると、多くの利用者から全席禁煙に対する強い要望があったため、としています。

ただ、後進の航空会社には、JAL、ANAが禁煙となったあとも喫煙可とし、これをセールスポイントとしていた会社もあったようです。たとえば北海道に本拠を構えるAIRDOは、一部座席に喫煙席を設定することで搭乗率の向上を目指していました。ところが社会的な禁煙の流れに逆行していたほか、当初の期待ほど搭乗率の向上にはつながらなかったとして、2001(平成13)年にこれを撤廃、全面禁煙としています。

ANAのエアバスA380型機の機内モニター。安全ビデオのなかに「禁煙」の告知がされる(2019年、恵 知仁撮影)。