栃木県宇都宮市の性のテーマパーク秘宝館」が6月で約45年の歴史に幕を閉じた。18歳未満立ち入り禁止の展示は、ドキドキさせつつ、日本中の民俗風習を楽しく学べるもので、男性館長(65)による名解説も人気だった。

6月29日に最終営業を終えたのは「性神の館」。閉館の理由を聞いた。(編集部・塚田賢慎)

栃木最後の秘宝館。最終日にファンが駆けつける

ーー大変お疲れ様でした(注:館長はすでに別の「お堅い」仕事をしているため、実名を出せません)

開業は1975年8月1日。あと1カ月でちょうど45年でした。私から閉館を発表したわけではありませんでしたが、SNSで知った人がたくさん来てくれましたよ。なかには仕事を休んだ人もいて、昨日の最終日は月曜にもかかわらず、大変忙しかったです。

秘宝館と呼ばれていますけど、裸の人形がガチャガチャ動くような展示は置いていないので正式には「博物館」だと思っております。性神信仰や性のお祭りに関しては日本一詳しいと自負しております。

ーー惜しまれての閉館ですね。あえて秘宝館と呼ばせてもらいますが、栃木県では最後の1館だったのでしょうか

そうです。栃木では最後でした。全国でも知る限り、熱海(静岡県)の「熱海秘宝館」、伊香保(群馬県)の「珍宝館」くらいしか知りません(注:埼玉県・八潮にも別の秘宝館がある)。うちの近くには「鬼怒川秘宝殿」もあったけどやめちゃった(2014年末閉館)。動く展示を修理できる人がいなかったようです。

珍宝館とは合同で秘宝館ツアーを組んだ仲でもありまして、閉館にあたって、女性館長さんが「ご苦労様でした」と挨拶してくれました。

立ち退きが原因だった

ーー多くの観光業のように、新型コロナの影響もあるのでしょうか

コロナは関係ありません。立ち退き要請がありました。こちらの建物は私のものですが、土地は借りています。地主が別のかたに変わってしまいまして、1年以上揉めていましたが、出ることに決めました。

自分で取り壊すと300万円かかるそうで、それであれば微々たる額でも立ち退き料をいただくことにしたんです。時代の流れですね。10年後もまともにご案内できる自信がありませんでした。

先祖は武士から性玩具コレクター

ーー性神の館が誕生した経緯は?

ここを立ち上げたのは私の父親で、55歳で亡くなった後の1983年に私が引き継ぎました。開館した当初が最盛期で、お客さんは数百人、従業員は6人いましたが、今は私と女房の2人で十分間に合うほどお客さんは減っていました。

私のひいひい爺様が、江戸末期に武士の身分を捨てて、ふすまの絵師をやっていたのです。彼はコレクターでもあり、歌麿の浮世絵(春画)や、大奥愛用のべっこう、町民が使っていた水牛の角などの「張型」(男性器を模した玩具)をたくさん集めていました。べっこうは高級で町民には手が出なかったそうです。

“助平”な家系ですが、私の祖父だけはこういったものが大嫌いでした。うちの蔵に残されていた品物を使って、父親が商売を始めました。オープン当初は(秘宝館の)最盛期で、『アフタヌーンショー』や『トゥナイト2』(ともにテレビ朝日)に取り上げられました。

ーー館の特徴はなんでしょうか

先ほども申し上げましたが、全国の性の伝承や、性のお祭りの解説です。そちらさんの地元はどちら? 秋田ですね。秋田県であれば「横手のぼんでん」は男性器由来ののぼりをかかげるお祭りですし、「蒸の湯(ふけの湯)温泉」は子授けの温泉として有名です。

ほかにも、奈良、佐渡島、東京の板橋など、全国各地に性にまつわるお祭りがあります。一番うれしいのは、リピーターが私の解説を聞きたくてお友達を連れてくることでした。

東日本大震災で閉館危ぶまれる

ーーこれまでにも閉館の危機はありましたか

お客さんのほとんどが、鬼怒川、湯西川温泉のついでにいらっしゃいます。東北の大震災の後に、温泉旅館も潰れて、うちの入りもどっと減りました。平日で10人、土日で20〜30人。ゼロの日もありました。

すでに返し終えましたが、個人的な借金も1億3000万円ございましたので、別の仕事もやっておりました。性神の館だけであれば、やれていなかったかもしれません。

ーー先ほど「博物館」と称していましたが、館の正式な業態は何でしょうか?

警察には「性風俗特殊5号」で届を出していました。

「店舗を設けて、専ら、性的好奇心をそそる写真、ビデオテープその他の物品で政令で定めるものを販売し、又は貸し付ける営業」

いわゆるアダルトショップと同じ仲間になります。

摘発された秘宝館もあったが

ーー2006年には無修正の性交写真を展示したとして秘宝館の館長らがわいせつ図画陳列の疑いで逮捕される事件もありました

わいせつ図画陳列罪で捕まるとしたら、無修正の写真はダメでしょう。うちにいた元社員のかたも別の大人のおもちゃ屋さんで販売して捕まったそうです。性神の館には写真は一切ありません。

前科もございませんし、捕まったことも1回もない。警察のかたも5年に1度のペースでいらっしゃいます。館内をご覧になってから「警察です。18歳未満を入れていませんか?」と身分を明かしてお聞きになるくらいのものです。何か批判をされたこともありません。

全国のエッチお祭りには子どもも参加しています。真面目な観点で展示をしておりますので、堂々と営業してまいりました

ただ、何も知らずにきて、ショックで泣いてしまうお嬢さんもいらっしゃいました。

近年は女性のファンも増加。復活は?

ーー昔とくらべて客層に変化はありましたか

昔は6割は男性でしたが、最近は逆転して女性のほうが多かった。やはりネットでお知りになるようです。年齢層も20〜30歳が多く、帰られるころには大笑いしていかれます。エロはあるけどグロはない。笑ってためになるおもしろ博物館でございます。

ーー復活はあるのでしょうか

コロナ禍の中で生涯をかけられません。100%ではないけど、もう復活はない。前妻との間に息子もいるが、私の代でおしまいです。普通の人の定年まで続けたんだから、すごいじゃないですか。

どうしてもやりたい志がある人がいれば、展示物は譲りますよ。でも無理でしょう。私ほどの知識や、上手な口調ではできません。

年金もございますし、今の仕事をしていれば、なんとか老後生活はできます。

ーー同業者の秘宝館へのメッセージ

できる限り、寿命がある限り、続けてください。

ーーおすすめの秘宝館はありますか

性神の館と同じような展示があります。静岡の伊豆下田にあるお寺なんです。大人のおもちゃや地獄絵など良いものを持っている。ぜひおすすめです(寺に確認したところ、平成に入った直後に展示はなくなっていた)。

「エロはあるけどグロはない」栃木の秘宝館、45年の歴史に幕 誇りに満ちた館長のこだわり