【J番記者コラム】開幕戦に続き先制も…ホームで名古屋に逆転負け

 J1再開初戦の7月4日は、清水エスパルスがクラブ創設後に初めて有料対外試合を行った日で、サポーターとクラブが設定した28回目の“誕生日”。また、清水自体は2度目となる無観客試合ではあったが、スタンドにはサポーターが購入しクラブ社員が作成した「#SPULSE HBD(Happy Birthday)」のコレオグラフィーの文字。そして「リモート応援システム」が、ホームの清水の選手を後押しするはずだった。

 今季就任したピーター・クラモフスキー監督が掲げる攻撃的なサッカー。その戦術浸透には時間がかかると思われたなかでシーズンはスタートしたが、その矢先の新型コロナウイルスの影響による約4カ月半の中断期間。幸いにも静岡への影響は少なく、対戦した名古屋グランパスなどに比べれば充実したトレーニングが積めていた。再開戦前日には「まったく不安はない。強い基盤というものが、攻撃においても守備においても作れた」と、クラモフスキー監督は自信をのぞかせていた。

 その言葉通り、前半の立ち上がりはパスを繋ぎ、前線からのプレス、そしてこの戦術の肝となる切り替えの早さで、「自分たちのサッカー」を展開した。

 前半18分には前線での金子翔太の鋭いチェックからこぼれたボールを、後藤優介が拾ってドリブルでカウンターを仕掛け、並走して右サイドでフリーとなった金子へ。ペナルティーエリア内に侵入した金子は、スライディングタックルブロックに入った相手2人も間に合わない素早いタイミングでシュートを放ち、チームとして開幕戦から2試合連続となる先制点を決めた。

 さらに同29分には、Jリーグデビュー戦となったカルリーニョス・ジュニオの強烈なシュートが、名古屋GKランゲラックの手をかすめゴールバーに当たるチャンスもあった。

 しかしその3分後、自陣ペナルティーエリア内に人数はいるものの、ボールの出どころへのプレスが遅れて失点。同40分には名古屋が清水対策として狙っていたサイドバックの裏のスペースを突かれ、折り返されたボールのクリアがオウンゴールとなり1-2と逆転されてしまった。開幕戦のFC東京戦(1-3)とは前半と後半の違いはあるものの、先制しながら逆転され、尻すぼみとなる展開は同じ。後半も反撃を試みるが1点が遠く、開幕2連敗を喫した。それでもクラモフスキー監督は試合後、「勝ちに値するパフォーマンスを出していた」と気丈に話した。

敗戦の中に見えた“希望の光”

 約4カ月半前の開幕戦で見えた希望の光は薄れてしまったのか――。

 しかし敗れたとはいえ、この試合では高卒ルーキーの鈴木唯人と清水ユース出身の2年目GK梅田透吾がリーグ戦初先発初出場を果たし、まだまだ課題は多いがそれぞれに見せ場も作り、今後に期待が持てるプレーを見せた。再開戦を前に怪我人が増えてしまったのは残念だったが、若手、中堅、ベテランで「自分たちのサッカー」の時間帯をいかに長く保つことができるかが、今後のポイントとなるだろう。

 まだ2020シーズンの2試合が終わっただけだが、開幕戦後にクラモフスキー監督が口にした「ローマは一日して成らず」の言葉が、正直な気持ちなのだろう。(下舘浩久 / Hirohisa Shimodate)

清水エスパルスのピーター・クラモフスキー監督【写真:小林 靖】