小説投稿サイトに連載された小説が話題となり、コミカライズ、アニメ化もされた「異世界居酒屋『のぶ』」が実写ドラマとなり、WOWOWにて放送中だ。庶民的な居酒屋とファンタジーの世界が融合した新感覚な本作の見どころを紹介する。

【写真を見る】大谷亮平と武田玲奈の板前&看板娘姿も様になっている

ドロップ』(08)、『漫才ギャング』(10)などの品川ヒロシが監督・脚本を務める本作。有名料亭の板前だった大将の矢澤信之、その料亭の娘だった看板娘の千家しのぶが切り盛りする一見どこにでもありそうな居酒屋「のぶ」。しかし、なぜかこの居酒屋の入り口は、中世ヨーロッパのような異世界の古都・アイテーリアにつながっており、兵士や貴族、僧侶に商人といったファンタジー世界の住人たちが毎日訪れていた。

主人公である「のぶ」の大将役を務めるのは、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」や連続テレビ小説まんぷく」などに出演し、映画や舞台でも活躍する大谷亮平。口数は少ないが、客が求める料理をすぐに調理して出してしまうなど、頼れる漢を頼もしく演じている。流れるような手さばきとシンプルな割烹着も似合っていて、いかにも職人な魅力にあふれている。

一方、元気いっぱいな接客が印象的なしのぶには、主演作『パパのお弁当は世界一』(17)、『人狼ゲーム インフェルノ』(18)などの若手、武田玲奈がキャスティング。肝の据わった性格で貴族や役人相手にも動じないなど、ある意味大将以上に頼もしい存在だ。ジョッキにビールを注ぐ姿も様になっている。

異世界の住人も個性的な人ばかり。アイテーリアの衛兵ニコラウスを白洲迅、ハンスBOYS AND MEN小林豊、2人の上官ベルトホルトを阿部進之介が演じる。また、厳しい税の取り立てを行う役人ゲーアノート役に波岡一喜、聖職者なのに酒や肉料理を嗜む教会の助祭エトヴィン役で田山涼成、店にやって来ては幼なじみケンカばかりしているガラス職人ローレンツ役で品川庄司庄司智春らが登場する。

そして、大将の料理に感激した客たちが見る幻として、ロバートの秋山竜次が神様や天使に扮して現れ、不思議な笑いで包み込む。中世ヨーロッパ風の衣装に身を包んだキャストたちが普通の居酒屋で食事している、どこかシュールな雰囲気も絶妙だ。

「のぶ」で出されるのは生ビールから揚げ、さや付きの枝豆など、おなじみの居酒屋メニューが中心。しかし、異世界の住人たちにとっては珍しいものばかりで、彼らの新鮮な反応も本作の見どころになっている。例えば、アイテーリアでは常温の、悪く言えばぬるいビールが一般的だが、「のぶ」で出されるのはキンキンに冷えたラガービール。その爽快な喉越しに衝撃を受け、夢中になって一気に飲み干してしまう。

このほか、食べ飽きているはずのジャガイモおでんの具になったことで、ダシがしみ、からしとも合わさることで起きる味の科学反応に感動する。そのまま食べるだけでも美味なナポリタンが、粉チーズやタバスコを徐々に降りかけることで味に奥行きが生まれて驚く。アイテ―リアでは不気味な姿から忌み嫌われていたウナギが、大将の調理によって蒲焼きにされ、その絶品さに価値観を揺さぶられるといった姿が描かれていく。観ている側にとっては食べ慣れた料理ばかりなのだが、これらリアクションの数々が、「そこに感動するのか!」という新たな発見を与えてくれる。

本作は全10話構成。第1話が公式サイトで視聴でき、最終話に向けての一挙放送もされる予定なので、気になる人は一度チェックしてみてほしい。ほのぼのとした空気感に、いつの間にか虜になってしまうはず。

文/トライワーク

居酒屋メニューに感動する異世界の住人たちのリアクションが楽しい「異世界居酒屋『のぶ』」