週刊少年ジャンプ(以下ジャンプ)にまつわるさまざまなトピックを取り上げる『月曜の朝を待ちわびて。』、おかげさまで第6回を迎えることができました。今回も盛りだくさんです、はりきっていきましょう!

文 / おしこまん
イラスト / かずお

◆現在のジャンプは読み始めるのに最適!?

前回、『鬼滅の刃』の完結を取り上げましたが、その後すぐ、2010年代後半のジャンプを支えた『ゆらぎ荘の幽奈さん』と『約束のネバーランド』の2作品が完結となりました。

2010年代半ばから『NARUTO』『BLEACH』『こちら葛飾区亀有公園前派出所』などをはじめとする長期連載作品が次々と完結したことや、いわゆる「引き伸ばし」が近年は見られなくなっていることは、本連載で過去に取り上げました。それらはジャンプの新時代到来を予感させるものでしたが、2020年も半年を過ぎた現在、見事にフレッシュな誌面として結実しています。

現在連載中の作品から、長く続いているものをリストアップしてみました。括弧の中の年数が連載開始した年です。

ONE PIECE』(1997年 HUNTER×HUNTER』(1998年 ハイキュー!!』(2012年) 僕のヒーローアカデミア』(2014年) ブラッククローバー』(2015年)

これらの後に、2017年スタートの『Dr.STONE』『ぼくたちは勉強ができない』が続きます。連載19作品のうち、約4分の3が連載開始から3年以内という事実。もちろん、おもしろいからこそ長く続いているわけで一概に長期連載が悪いわけではありませんが、一読者としては、未読の長期連載作品は少し手に取りづらい、という意見も否定できません。その点では、現在のジャンプは読み始めるにはよいタイミングでしょう。

◆ベテランと新鋭が揃い踏み! 今期の新連載

終わる作品があれば始まる作品もあるのが世の常、ジャンプの常。今期の新連載は以下の4作品です。

あやかしトライアングル矢吹健太朗、代表作:『ToLOVEる』など) 破壊神マグちゃん(上木 敬) 灼熱のニライカナイ(田村隆平、代表作:『べるぜバブ』など) 僕とロボコ(宮崎周平)

連載経験のあるベテランの新作と初連載の新人作家による作品がふたつずつです。執筆時点では『僕とロボコ』以外の3作品が始まっています。

あやかしトライアングル』『灼熱のニライカナイ』も安定のおもしろさでしたが、個人的にはノーマークだった『破壊神マグちゃん』がいちばんのお気に入りです。かつての強大な力を失ってしまった破壊神マグちゃんと、ひょんなことからマグちゃんの封印を解いてしまった女子中学生・宮薙流々(みやなぎるる)の奇妙な共同生活を描いたコメディーです。



Webマンガ誌・少年ジャンプ+ではこれら新連載の第1話を試し読みできます。
第1話が掲載されたジャンプの次号発売日より。掲載時点では『あやかしトライアングル』『破壊神マグちゃん』『灼熱のニライカナイ』の第1話が読めます)

新連載をおもしろく感じられるのは、ジャンプを毎週チェックしていていちばんうれしいことのひとつです。筆者がジャンプを買い続けているのはその瞬間を期待しているから、なのかもしれません。

◆『鬼滅の刃』1億部目前!?

続いて、本連載ではもはや定番となった感のある『鬼滅の刃』の発行部数についての話題です。6月24日(水)、集英社より発行部数が8,000万部を超えた(電子版を含む)という発表がありました。また、7月3日(金)発売のコミックス21巻の初版発行部数は300万部とのこと。

今後、コミックスは10月2日(金)に22巻、12月4日(金)に最終巻となる23巻が発売予定です。今後も、完結を迎えた2020年24号で発表されたスピンオフ短編『煉獄外伝』、10月には劇場版アニメの公開が控えており、まだまだ勢いが衰えることはなさそうです(『鬼滅の刃』については、毎回こんなようなことを書いている気がします)。発行部数が1億部を超えるのも時間の問題でしょう。

◆『約束のネバーランド』海外実写ドラマの制作が発表

2020年28号で完結となった『約束のネバーランド』。海外実写ドラマ(英語版)の制作が発表されました。監督は『スパイダーマン:スパイダーバース』のロドニー・ロスマンです。

今後、12月18日(金)公開の実写映画や2021年1月に放送時期が決定したアニメ第2期も控えていますし、本編が完結しても、まだまだ楽しみは続きそうです。

◆『アクタージュ act-age』ついに舞台化

2018年から始まった、俳優・夜凪 景(よなぎけい)の成長を描いた『アクタージュ act-age』。作中でも人気のエピソード、宮沢賢治銀河鉄道の夜』の舞台を実現させるプロジェクトが発表されました。2022年の公演を目指し、現在、夜凪 景役のリモートオーディションが開催されています。

プロジェクトのウェブサイトに掲載された、原作・マツキタツヤと舞台の脚本・演出を務める松井 周へのインタビューは非常に示唆に富むものでした。特に印象的だったのは、松井氏が『アクタージュ act-age』の魅力を語った、以下の部分です。

松井 読んでいて、演技したくなる漫画だと思うんです。僕は演技って、生活する事とそう離れていないというか、誰でも日常の中で「今ちょっと嘘ついちゃったな」とか「今なんか演技したな」っていう瞬間があるように、生活と地続きに繋がっていると思っていて。「自分は普段こういうふうに行動するな」とか、「こういう振る舞いをしちゃったけど、これってどうなんだろう」みたいな事を、読みながらふと考えさせてくれるんです。だから『アクタージュ』を舞台に乗せる以上は、やっぱり見てくれる人に「演技したい」と思わせる作品にしたいですね。

(舞台「アクタージュ act-age銀河鉄道の夜~」オーディション オフィシャルサイトより引用)

アクタージュ act-age』は毎週楽しみにしている作品のひとつですが、本作で扱われている演技や俳優といったテーマは、自分の生活にはあまり縁のないもので、全く知らない世界を覗くように接していました。しかし、少し立ち止まって考えてみると、たしかに生活の中で何かを演じている瞬間は自分にもあります。

引用部分以外にも、松井氏の言葉からは原作への確かな信頼を感じましたし、新型コロナウイルスによって一変してしまった社会状況の中、それでも「人が集まる」ことを諦めたくないという想いには胸を打たれましたし、マツキ氏がところどころ『アクタージュ act-age』本編の裏話的なエピソードを語っていたのもうれしかったです。

◆19年ぶりに再アニメ化! 『シャーマンキング

6月12日(金)、『シャーマンキング』が19年ぶりに再びアニメ化されることが発表されました。本作は武井宏之によりジャンプで1998年から2004年の間に連載され、最初のアニメは連載中の2001年から2002年に放送されました。

新アニメの放送は2021年4月、現在は講談社から刊行されている全35巻を原作とし、シリーズを最後まで描き切るとのことです。



個人的に、『シャーマンキング』はとても思い入れの強い作品です。外出自粛中のゴールデンウィークに全巻を買い揃えて再読したばかりだったこともあり、とてもタイムリーな発表でした。

主人公・麻倉 葉の「がんばらない」「無理をしない」といったスタンスは筆者の人格形成に大きな影響を与えましたし、少年マンガには欠かせない熱血主人公とは対極に位置するようなキャラクターの描き方もとても魅力的でした。

ストーリーが進むにつれ、葉のキャラクター性だけでなく、作品全体が王道バトルマンガのお約束展開をかわし続けるようなものになっていきます。絶対に倒せないことが明言されているラスボス、登場人物の強さを表す数値がなんの意味もなさないこと(「想い」ひとつでなんとでもなる、という考え方が本作では極めて重要な意味を持ちます)、「死」の扱いの軽さ、この世には正義も悪もないという世界観、「やったらやり返される」「大切な事は心で決める」などのシンプルでありながら不思議と心に残るセリフの数々……。

従来のジャンプ作品とは明確に異なるメッセージ性を持った『シャーマンキング』の輝きは、みかんの絵が物議を醸した2004年の連載終了から16年経った現在でも色あせることはありません。

◆「ジャンプらしさ」の現在をめぐって

ジャンプ作品について語られる時に、「ジャンプらしい/らしくない」という言葉をしばしば耳にします。この言葉を発した人が想像する「ジャンプらしい」作品は、主人公が熱血系だったり、打ち勝つべき「ラスボス」が明確だったりする作品……例えば『ドラゴンボール』『スラムダンク』『ONE PIECE』などでしょう。

これらが「ジャンプらしい」作品であることには、筆者も完全に同意します。一方で、ジャンプはいつだって「ジャンプらしさ」の殻を打ち破ってもきました。『シャーマンキング』は、そんな「ジャンプらしくないジャンプ作品」の代表のひとつだと思います。

様々な局面において旧来の価値観が更新されつつある現代の日本においては、再アニメ化をきっかけに本作のユニークなメッセージがより広く受け入れられるのではないかと密かに期待しています。また、このタイミングで本作が再アニメ化されるということ自体が、連載開始から20年以上が経ち、進行形で更新され続ける「ジャンプらしさ」の現在と同期しているようでもあり、興味深いです。合わせて今後も注目していこうと思います。

それでは、また次回!

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掲載:M-ON! Press