現代ではオン、オフ問わず、「コミュニケーションツール」として、メールやSNSが多用されている。そんな中、若い人を中心に、文章の文末に句点をつけない現象が多く見られるそうだ。


「教えて!goo」にも「文末に句点を付けない人はなぜ?」と質問が寄せられていた。そこで今回はNPO法人日本語教育研究所の所員に、句点をつけない人の特徴や心理に加え、「書き言葉」における社会的マナーや、現状を踏まえた今後の日本語教育の目標についても話を聞いてみた。


■文末に句点をつけない人の特徴や心理

明治時代から使われるようになった句読点。かねてから文末に句点を付けるのは書き言葉のルールのはずだが……。

「文章で情報を伝えるときは、原則として句読点をつけることになっています。話しているときは、表情やジェスチャー、間合い、イントネーションなどにより、情報の切れ目やまとまりを表すことができます。しかし書き言葉ではそうはいかないので、句点や読点を使って情報を的確に伝えようとするのです。ですが現代の若い人の間では、話し言葉に近い書き方のほうが、自分の思うことを正確に表現できると考えられており、あえて句読点を使わない傾向がみられます」(NPO法人日本語教育研究所)

句読点をつけると、話しているときのような“ニュアンス”が伝わらないと考えられているようだ。

「たとえばマンガの吹き出しは、実際の話し言葉がそのまま文字になっているため、句点が使われないことが多いです。LINEもマンガと似ていて、書き手と読み手の心理的距離が近く、話し言葉のやり取りを想定しているユーザーが多いことから、むしろ書き言葉的な記号は敬遠されがちです」(NPO法人日本語教育研究所)

マンガやLINEで句点が省かれる理由は、「心理的距離の近さを表現するため」だった。Twitterでも同様だろうか。

不特定多数に拡散できるTwitterは、LINEほど『直接話しているような感覚』や『親しい間柄のみのやり取り』といった“近い距離感”が共通認識になっていないため、LINEよりは書き言葉のルールに準じた記号が用いられているようです。しかしLINE同様に、文末は改行によって文の終わりが認識されたり、絵文字や『!』をつけることなどで表現されるため、句点が省かれることが多いのです」(NPO法人日本語教育研究所)

話し言葉のニュアンスをより伝えるため、句点は別のもので代用されているのだ。


■書き言葉の社会的マナーと今後の日本語教育の目標

気心知れた相手へのメッセージなら、句点をつけなくても問題はない。だが、ビジネスの場ではどうだろう。

「ビジネスの場で、不特定多数の人、あるいは上司など社会的地位が上の人に向けてメールなどを送る場合。また、仕事上の『報告書』や就活の際の『エントリーシート』のように正確さや目的に適した形式が求められる提出書類を作成する場合などは、書き言葉のルールを守りましょう。たとえば『明日は雨が降る 天気ではない』という一文では、『明日は雨が降る』と『天気ではない』の間に句点を書くか書かないかにより正反対の解釈ができ、句点を省いたことにより、意図せずに誤解を生む可能性が生じます。社会的な書き言葉のマナーでは、誰に何をどのような目的で書く文章なのか、よく考えて書けるかどうかが重要です」(NPO法人日本語教育研究所)

昨今「よく考えて書く」という社会的マナーが、SNSなどの普及により軽視されつつあるようだ。

「社会生活では、きちんとコミュニケーションを取れる人なのかどうかは、『聞く・読む・話す・書く』という4技能のうち『受容能力(聞く・読む)』よりも『産出能力(話す・書く)』によって可視化され評価されます。特に『書く力』は、その人の知的水準が顕れる能力と認識されています。簡潔で誤解されることのない目的に合致した文章を書けるよう導くことは、これまで同様今後も、国語教育、日本語教育に共通の目標です」(NPO法人日本語教育研究所)

意思疎通や情報共有などにメールやSNSは便利だ。だが送る相手との距離感や、“TPO”に応じた、正しく適切な文章を書く力は、いつまでも失わずにいたいものだ。


●専門家プロフィール:NPO法人 日本語教育研究所
日本語教育の発展、国際社会の日本語・日本文化への理解促進に寄与するための活動として、日本語教育に関する調査・普及啓蒙、学習者支援、教師支援、日本語教育支援の4事業を軸に、日本語教育各方面のニーズに応える活動を展開している。

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)

日本語の専門家に聞いた!文末に句点をつけない人の心理