今、才能ある日本の若者たちが韓国を舞台に活躍している。先月デビューメンバーが発表され、話題となった「Nizi Project」も日本のソニーミュージックと韓国の芸能事務所JYPエンターテインメントの日韓共同企画。参加者の大多数は日本人でありながら、彼女たちが目指していたのはJ-POPではなくK-POPスタイルアイドルであった。

 総合プロデューサーとして番組を牽引していたのは、2PMTWICEの生みの親であり自身もアーティストのJ.Y.Park。彼が少女たちへ語りかけた真摯な言葉に、心動かされた人も多いのではないだろうか。これまで多くのスターを育ててきた自負と経験からくるものなのだろう。

 そして挑戦者の少女たちも、信念を持って自ら勝負する場所を選んでいた。NiziUのリーダーとして1位でデビューが決まったマコは小学生の頃からK-POPアイドルに憧れて韓国語を勉強。2年7ヶ月もの間JYPの練習生として活動してきた。

 HIPHOPアーティストZeebraモデル中林美和の間に生まれた“サラブレッド”として注目を浴びるリマも、日本の大手芸能事務所傘下のダンススクールからJYPへ移籍している。

 10代の彼女たちがあえてK-POPの世界に身を投じた背景には、活躍している先輩たちの成功例と世界進出への野心がある。

TWICE」の成功と「IZ*ONE」の凱旋

“韓国発の日本人スター”の代表例はNiziUの先輩、TWICEのモモ、サナ、ミナだ。日本で正式デビューした2017年からヒットを飛ばし、紅白歌合戦にも出場。「情熱大陸」でも取り上げられると、普段はK-POPを聴かない層や幅広い世代から支持されるようになった。韓国でも今年7月時点で9枚目のミニアルバム「MORE&MORE」がガールグループの史上最多売り上げを更新するなど、未だ勢いは衰えない。

 TWICEブレイクしたきっかけのひとつに日本人メンバー・サナの歌う「shy shy shy」というフレーズがあったり(“シャーシャーシャー”と聞こえるのが可愛いと話題に)3人の名前を合わせ“ミサモ”と呼ばれバラエティ番組で活躍するなど、彼女たちの存在感は大きい。

 さらに直近の成功例として外せないのがIZ*ONEだ。韓国の芸能事務所の練習生と日本のAKB48グループに所属するアイドルの中からオーディションを勝ち抜いた12人のメンバーで活動。その中でもHKT48出身の宮脇咲良は圧倒的な人気を誇る。同じくHKT48から韓国へ渡った矢吹奈子、そしてAKB48チーム8出身の本田仁美もダンスの実力を認められチームに不可欠な存在となっている。

 6月に行われたオンラインフェスティバル「KCON:TACT 2020 SUMMER」では3日目のトリを飾り、深夜にもかかわらず日韓のファンを中心に投げ銭メッセージの嵐。両国での人気を証明する形となった。

 K-POPで活躍する日本人は女性だけではない。東方神起EXOの後輩・NCT 127には大阪出身のユウタ、そして彼と同い年の高田健太も「PRODUCE 101 シーズン2」で知名度を上げ、JBJ95というユニットで活動している。

 いまや韓国の音楽番組やバラエティ日本人タレントが出てくるのは、珍しいことではなくなった。その背景にはK-POPの「世界的成功」と「日本市場への期待」がある。

“未知の世界”から“目標”へ「K-POPネイティブ」世代の登場

 少し過去に遡ってみると「日本人K-POPアイドル第一号」は2008年デビューしたA'st1(エースタイル)の藤原倫己だと記憶している。その前には在日三世のSuger・アユミ(現・伊藤ゆみ)も日本語訛りの韓国語で人気を博していた。

 彼らのデビューに至ったきっかけは「ソウル旅行中にスカウトされた」というもので、今の「必死にオーディションを突破」という流れとは対照的だ。当時はまだ韓国のグループがグラミー賞でパフォーマンスしたり、当たり前のように東京ドームライブを行うなんて想像もしなかった時代。憧れよりも未知への挑戦、まるでスタートアップ企業へ就職するような感覚だったのではないだろうか。

 だが、現在は違う。この10年でK-POPの舞台は憧れであり目標に変化した。TWICEをはじめとする現役の日本人K-POPアーティスト90年代後半生まれ。NiziUのメンバーに関しては2000年以降に誕生しており、物心ついた頃にはすでに日本でK-POPが浸透していた世代だ。

 ちなみに東方神起の日本デビュー2005年、日本の地上波がこぞって少女時代KARAを取り上げていた「第一次K-POPブーム」は2010年前後。多感な時期に衝撃を受けた音楽がたまたまK-POP」だったというパターンもあるだろう。そこから“本場”を目指すのは不自然なことではない。

 東方神起BIGBANGファンだった母親の影響を受け、SMエンタテインメントやYGエンターテイメントオーディションを受ける学生も多いと聞く。

韓国の音楽業界が「日本人」を求めるワケ

ダンスと歌で勝負したい」そう考える若者にとって、韓国の充実したアーティスト育成システムは魅力的に違いない。オーディション番組や練習生達のリアルバラエティを見るだけでも、ダンス・歌唱レッスンと語学研修、「アーティストたるもの」という倫理指導に至るまで徹底されているのが分かる。

「お姉ちゃんが勝手に履歴書を送って……」というセリフはもう通用しない。デビュー前からすでに、本気でワールドスターを目指す者だけが生き残れるプロの世界なのだ。花開くのはごく一部、しかしその先には大きな成長と世界規模の舞台が見える。ゆえに母国を離れてでも、人生をかけて挑戦しようと思う若者が集まるのだ。

 ではなぜ韓国側は日本人メンバーを採用するのだろうか。最大の狙いはやはり「日本市場への期待」だ。

中国進出に力を入れていたが……

 近年BTSを筆頭にK-POPアメリカ進出が止まらない。BLACKPINKSuper Mなど大手各社がこぞって対米プロモーションに力を入れている。

 K-POPグループの国際化は今に始まったことではない。2010年代前半は中国人メンバーを入れるというのがトレンドであった。当時の中華圏ではドラマから音楽、コスメに至るまで韓流ブームの真っ只中、韓国の芸能事務所もこぞって中国進出に力を入れていた。

 しかし中国人メンバーの相次ぐ脱退、さらには、2016年に韓国がTHAADミサイルの配備決定を公表すると中国側は「限韓令」を発令。中国からの締め出しと、痛手をおった後に目立ってきたのが「日本人メンバーの採用」と「日韓合同プロジェクト」だ。

日本ファンの特徴は「末長く応援してくれること」

ガラパゴス”と揶揄されようと、未だ日本は世界で第2位の巨大な音楽市場。そして日本のファンの特徴として「一度ファンになると末長く応援してくれる」という傾向がある。その証拠に本国ではすでにチケットパワーのない、下火のアーティストであっても日本公演では席が埋まるという現象も起きる。

 目まぐるしく移り変わる本国の勢力図、雨後の筍のごとく新人たちがデビューする中で日本のファンを抱えておくことは芸能事務所としてもアーティストとしても大きな支えとなるのだ。活動する際に立ちはだかる言語の壁、そして揺らぐ日韓情勢の中でも、日本人メンバーの存在は手堅い架け橋となってくれる。

 そして韓国では特に日本人女性アイドルに対する好感度が高い。男性芸能人がファンを公言したり、日本語訛りの韓国語が「カワイイ」と愛される理由の一つになっている。そして「アニメの登場人物のようだ」と日本の漫画・アニメ人気の影響で応援する人もいるという。

 逆に男性の場合は日本人であることを前面に出すというよりも、バラエティでユーモラスな一面を垣間見せたり、現地のタレントといかに自然な掛け合いができるかなど“順応力”で支持される傾向がある。

2020年以降も続く、韓国経由で世界を狙う日本人スターたち

 直近の注目株は今年7月にデビュー予定のボーイグループTREASURE」だ。12名のうち4人が日本人で構成されている。BIGBANGBLACKPINKの後輩であることも期待できる理由のひとつ。

 K-POPというジャンルが世界的な成功を収め、日本人の若者にとっても「目指す場所」になったこと。育成システムオーディションプログラムが完成されており、そのまま日本でも再現して展開できる兆しがあること。さらに韓国側も日本の若い才能を必要としている現状から、今後も「韓国経由で世界を目指す」日本人スターが続くことが予想される。

K-POPゆりこ)

NiziU公式サイトより