7月3日から降り始めた大雨により、南部を中心に大きな被害を受けた熊本県。4日までの雨量は400ミリから500ミリと推計され、土砂災害が頻発。球磨川の氾濫で流域の街には濁流が流れ込んだ。膨大な量の水が引いた後の街には、泥だけが残ったのである。今回、「週刊文春」記者は4日から現地入りし、各地の被害状況を取材した。

 八代市の南西にある芦北町では、小高い山に大量の雨水が浸透し、上部から崩壊。ふもとに建っていた民家を飲み込み、住民の2名が犠牲となった。道路を挟んで反対側に住んでいる住民がその様子を振り返る。

バケツをひっくり返したような雨がただでさえやかましいのに、そこからもっとすごい、ドカーンという轟音が響いたんです。お父さんとお母さんは生き埋めで、自衛隊が一生懸命捜索してくれたけど、そのまま帰らぬ人となってしまった」

 今回の豪雨で象徴的と言えるのは人吉市の被害だ。日本三大急流の一つである球磨川は急速な勢いで増水し、支流との合流点や曲がりくねったエリアで氾濫。その威力を見せつけた。堤防はなすすべもなく圧壊し、車は吹き飛ばされてひっくり返り、小さな建物はもとの場所から遠く離れたところで玩具のように転がっていた。流されずに済んだ家屋であっても、その中は2階部分まで泥に浸かり、スクラップになった白物家電を複数人で運び出す姿が散見される。

「もともと雨がよく降る地域ではあるけど、今回の雨はちょっと今までとは降り方が違って、本当に怖かったです。家自体も古いから、たくさん水を含んで2階の床部分が反っちゃっていて、上がることができない」(近隣住民)

 いくつかの集落が連なる山あいの球磨村では、赤い外見が目立つ相良橋と、南九州を縦断する肥薩線球磨川第一橋梁が水量に耐えきれず、流失した。取材班は今回、相良橋の流失部分をドローンで撮影。ラフティングツアーの案内所跡地で、現在は自衛隊員の拠点となっている場所を借りてドローンを飛ばしたところ、無残にも橋脚だけが残る橋と、大きくうねる川の様子を収めることができた。橋付近の家々はほぼ全壊し、6日の時点では人が片付けに入った形跡もなく、手付かずの状態で取り残されていた。高齢者向けに食事の宅配を行う配達員は、民家の残骸の前でため息をつく。

「今朝、お客様に何度も電話したんですけどつながらなくて、心配になってしまって安否を確認するためにここまで来たんです。まさかこんなことになっているとは……。この辺りで避難所になっている場所はどこですか? 今からそこに行ってみようと思います」

 熊本以下、福岡や佐賀でも豪雨の被害は拡大している。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年7月16日号)

球磨川と支流の合流点付近にかかある橋には、流木が高く積み上がった ©吉田暁史