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プジョー208と基本的な構成は共有

text:Mark Tisshaw(マーク・ティショー)
translationKenji Nakajima(中嶋健治)

 
ヴォグゾール(オペル)から新しくリリースされた、純EVのコルサ-e。目下、英国では一番売れている電気自動車となっている。

挑戦的な価格を下げ、同時期にリリースされた純EVのライバルたちと比べても遜色ない航続距離を確保。見た目も良く、ショールームでの誘目性も充分にある。

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ヴォグゾール(オペル)・コルサ-e 7.4kW エリート・ナビ(英国仕様)

免許をとって初めて乗るクルマ、というイメージを英国で長年築いてきたヴォグゾール・コルサ。多くの英国人にとって、初めてのEVがコルサ-eということにもなりそうだ。

今年の始め、まだ国の間の行き来が自由だった頃、ドイツコルサ-eへ試乗した。とても大きな感銘を受けた。それから数ヶ月。予定より少し遅れたが、ガソリンから電気へ、給油ノズルから充電プラグへ、エネルギー源を切り替える準備は、英国でも整ったようだ。

この6代目となるコルサは、何度かAUTOCARでも取り上げている。オペル・ヴォグゾールの経営母体がGMからグループPSAへ切り替わり、完成半ばだったクルマを短時間で設計し直した、最新型だ。

プジョー208の兄弟モデル的な位置づけとして、記録的なスピードで量産までこぎつけた。新しいプジョー208と基本的な構成は共有し、ガソリンとディーゼルエンジンのほかに、純EV版もラインナップする。

親しみのある見慣れたコルサ

コルサ-eの特徴となるのが、グループPSAの他のコンパクトモデルと同様、独立したモデルではなく、エンジンモデルと並列的な選択肢として純EVが選べること。ユーザーが、より自然に電気自動車へ移行できる方法だと考えているようだ。

純EVだからといって、コルサ-eに怯える必要はない。基本的には親しみのあるコルサ。先代よりかなりスマートなルックスになっているが、ずっと前から見慣れたクルマという印象も受ける。

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ヴォグゾール(オペル)・コルサ-e 7.4kW エリート・ナビ(英国仕様)

むしろ筆者としては、プジョー208のように明快なデザインを得ていないことが、少し残念。最新の208は、現時点で最高のルックスとプロポーションを備えた、コンパクト・ハッチバックだと思う。

それはインテリアも同様。プジョーが同じアーキテクチャを使用し、どんなインテリアを生み出したのかを知らなくても、平凡な印象を受けてしまう。

ボディには、控えめに「e」というエンブレムがあしらわれ、アルミホイールコルサ-e専用。エンジンを搭載したコルサと識別する小さなポイントになっている。しかし、前後ともにトレッドは広げられ、見えない部分での違いは大きい。

ホイールベースを若干延長し、フロント・サスペンションは引き締められた。リア・サスペンションのトーションビームは後方へ移動され、50kWhの重たいリチウムイオンバッテリーを搭載する空間と足腰を得ている。

充分に力強く、落ち着いた走りの質感

このバッテリーとモーターの性格が、コルサ-eを定義している。静止状態からの加速は、純EVらしくかなり力強い。でも、いくつかのライバルのように、手を焼くほど活発というわけでもない。

鋭い加速は80km/hから100km/hを過ぎた辺りで穏やかになっていく。そうはいっても、現実的な交通状況の中では、必要なだけの加速力はまだ残されている。

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ヴォグゾール(オペル)・コルサ-e 7.4kW エリート・ナビ(英国仕様)

平均的なコルサ・ユーザーの場合、深くアクセルペダルを踏み込んだときの鋭さには、ハイパフォーマンス・グレードのVXRに乗っているかのような印象を受けるだろう。何かの間違いで、ミュートボタンがオンの状態で。

大きなバッテリーは、乗り心地やハンドリングに影響を及ぼしている。エンジンを積むコルサと比べると、コルサ-eは345kgほど重たい。結果として、とても落ち着いた走りの質感を得ている。重心高が10%ほど低いことも、貢献しているはずだ。

乗り心地はエンジン版コルサより良いものの、コーナーへのターンイン時などで、勢い感のある操縦性は失われている。ステアリングホイールへ伝わる、操舵時の重み付けは良好。初めは反発感があるように思えるが、運転するほどに好印象へ変わるだろう。

高速道路や市街地など複合条件で走らせた時の航続距離は、ドライブモードが「B」の状態で、夏場でも320kmくらいは得られそうだ。適切に制御された回生ブレーキシステムが稼働し、エネルギーを無駄にしない。

電気自動車と意識せずに選べる

コルサ-eの車両価格には、家庭用充電器も含まれている。また、標準で100kWの直流急速充電器にも対応していることも、メリットだ。

初めての電気自動車として、コルサ-e単体での訴求力はかなり高い。ドライビング体験は、一部のライバルほど痛烈というわけではない。外観も車内も、デザインは落ち着いている。そのかわり、親しみやすさという強みがある。

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ヴォグゾール(オペル)・コルサ-e 7.4kW エリート・ナビ(英国仕様)

英国は内燃エンジンを搭載する新車の販売を、将来的に禁止する計画を立てている。それを実現するには、政府が率先してコルサ-eを大量購入する必要もあるだろう。

英国人にとって、親近感の湧く純EV。特に電気自動車を意識していない人でも選べる純EVが、新しいヴォグゾール・コルサ-eだと思う。

ヴォグゾール(オペル)・コルサ-e 7.4kW エリート・ナビ(英国仕様)のスペック

価格:3万310ポンド(400万円/英国政府補助金適用後)
全長:4060mm
全幅:1765mm
全高:1435mm
最高速度:149km/h
0-100km/h加速:7.6秒
航続距離:336km(WLTP)
CO2排出量:0g/km
乾燥重量:1455kg
パワートレイン:同期電気モーター
バッテリー:50kWhリチウムイオン
最高出力:135ps/3674-10000rpm
最大トルク:26.4kg-m/300-3673rpm
ギアボックス:1速ダイレクトドライブ


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