よゐこ有野晋哉が薄緑の作業服に身を包んだ“有野課長”としてゲームの魅力を伝えるバラエティー「ゲームセンターCX」(隔週木曜深夜0:00-1:00※7月は9日(木)・23(木)、CS・フジテレビONE)が、6月11日の放送で放送回数300回を迎え、6月21日には300分生放送が行われた。「300回」という数字は、毎週放送であれば6年ちょっとで達成できる回数ではあるが、2003年11月にスタートした「ゲームセンターCX」では約17年かけてその数字に到達した。

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シリーズの中心は「たけしの挑戦状」「アトランチスの謎」など伝説のレトロゲームに挑戦する“有野の挑戦”。多くのユーザーが懐かしいと感じるゲームソフトが登場するのも当然魅力の一つだが、ただ一人の出演者・有野の“ゲーム愛”と“主役として出過ぎない”感覚も人気を支えているようだ。

レギュラー放送・商品化・イベントなど番組全体のまとめ役でもある番組プロデューサーの石田希さんに、17年間愛され続ける「ゲームセンターCX」の魅力を聞いた。

■ ゲーム一色の300分生放送後もやっぱりゲーム!?

――300回放送、おめでとうございます!

ありがとうございます。数字としてはすごく見えますが、毎週レギュラー放送していればもっと早く…たぶん6年ちょっととかで迎えている数字なんですけど(笑)。なので回数よりも、17年続けられていることがすごくありがたいですね。

――そんな300分生放送で奇跡のクリアをするところも有野さんらしいというか…(笑)。

生放送って想定外のことも考えて、いろんな準備をしておくんです。とはいえ、まさか有野さんが余裕でクリアするなんて…全く想定していませんでした(笑)。有野さんだけは「200分で終わらせるで」って言ってたんですけど、「それはそれで番組史上初なんで、おもしろいですね」と返して「バカにしてるやろ」ってツッコまれて…そんなやり取りをするくらいリアリティがなかったですね。生放送のいろんな打ち合わせの場で、「有野さんご本人は200分でクリアすると言ってます」と話すと、決まって皆さん「いやいやいや〜!」って(笑)。

でもスタートしてみたら、「これは…本当に200分でクリアしちゃうかも」って裏でざわざわし始めて、いざクリアした時にも「すごい!おめでとう!」よりも「やばいやばい…早い早い!」「次の準備できてる?」って舞台裏はバタバタしていました。有野さんには、番組初の快挙をお祝いできなくてすみません…という気持ちです(笑)。

そして有野さん、300分ゲーム一色の生放送を一人でやり切った後、「家でなんのゲームしようかな」って帰って行かれましたからね (笑)。ホンモノですよね。

■ 17年続けてきた番組の変化

――さすが、筋金入りのゲーム好きですね(笑)。ここ数カ月、新型コロナウイルスの影響はこの番組にもあったのでしょうか?

うちの番組はスタッフも映りますが出演者は有野さん一人なので、とにかく有野さんを守ろう、と。収録をする会議室の中には有野さん一人だけで、ゲームをサポートする挑戦ADはリモートで説明して…といった対策はとりました。なので、有野さんが苦戦しても、リモートでテクニックを習得してもらえるようなゲームを探しましたね(笑)。

あと通常は10時間くらい収録するんですが、今は長時間収録を避けられるようなゲームを選んだり。目線を変えると今までやってこなかった名作も結構あったりするので…良い方向に持っていくしかないですよね。

――それにしても300回ともなると、ゲーム探しが大変そうですね。

放送開始当時は宝庫だったんですけどね。ファミコン全盛期があって、誰もが「このソフトやったやった!」って反応できるくらい、どれを選んでもお宝状態で。でも、300回にもなると枯渇してきました(笑)。もうダイヤの原石を探す感じでADがリサーチして、ディレクターや作家・演出と「これいいね」「こんなゲームあったんだ」「これやってたな~」とか、ああだこうだ言ってます。何故か今まで掘り当てられなかったダイヤが出てくると興奮したりして(笑)。17年続く今でも番組の会議は盛り上がりますね。

――これまで終わりの危機はなく続けてこられたんでしょうか?

終わるという話は出たことないと思います。放送回が100回を迎えた時に100日間くらいお休みするタイミングはありましたけどね。

――17年続けられて、番組として変化はあったりしますか?

初期の頃は、「このゲームをクリアするかしないか」に生死がかかってるくらいの劇画的な作りをしていたんですけど、最近は有野さんを見守る感じになってきているかもしれないです(笑)。

スタッフも代替わりしていって、かつての挑戦ADがディレクターになっていたりするので、有野さんのゲームの腕を分かっていて予想が立てやすくなっている部分はあるかもしれませんね。と言いつつ、300分生放送で見事に裏切られましたけど(笑)。

――初期から変わっていない方もいらっしゃると心強いですね。

そうですね、初期からいるメンバーの力は大きいです。作家の健作さん(酒井健作)、岐部さん(岐部昌幸)、演出の藤本さん(藤本達也)はテレビ業界の一線でやっていて、一緒に番組制作ができるって本当にありがたいことで。会議や収録がとにかくおもしろいのも、そのおかげです。

藤本さんはテレビ愛が素晴らしいし、健作さんと岐部さんはゲームに対しての愛情がすごくあって、有野さんはそのどちらも持っている。愛情のある人の話は勉強になるし、楽しいですよね。それが番組にも現れているかもしれません。

――いくつかゲーム番組を担当されていると伺いましたが、制作時に共通して気を付けている点ってあったりするのでしょうか?

ゲームに愛がある人に出演してもらう、そしてゲームを楽しんでもらう、ということですかね。ゲームって娯楽なので、楽しくやってこそのものだと思うんです。番組となると、視聴者さんは他人がゲームしているところを見る訳で、だからこそ楽しくプレイしていてほしいです。そこはかとなく「ゲーム好きなんだろうな」という感じが伝わるような番組作りを大事にしています。

■ ゲームが大好きだけど絶妙に上手くない、唯一無二の存在

――なるほど。数年前からYouTubeのゲーム実況や、最近ではゲーム番組もよく放送されていますが、そういった世の中の変化は意識されたりしますか?

したり、しなかったり…ですかね。ゲーム番組の制作を多く担当するので意識しないことはないですけど、一方で17年変わらずに「有野の挑戦」をやっていたりもするので(笑)。あまり実況コンテンツは見ないんですけど、最近だとすゑひろがりずさんのゲーム実況はずるいなと思いましたね。あのキャラが実況やるのはおもしろい(笑)。あと、兄者弟者さんの実況は、ナレーションのお仕事ができそうなくらい声が良くて聞きやすいし、最後のアニメーションもかっこいいし、世界観が出来上がっていて人気があるのも納得でした。

――ゲーム番組といえば「ゲームセンターCX」が思い浮かぶ人も多いんじゃないでしょうか。DVD人気もすごいですし…。

ありがたい限りです。でも、テレビ番組の知名度でいうと全然高くないので(笑)。同級生や友達に「『ゲームセンターCX』やってる」と話しても、「知ってる知ってる!」なんてリアクションはほぼなくて、むしろ「え…ゲーム?」って(笑)。「よゐこの有野さんが緑の服着てずっとファミコンやってる番組」っていうとやっと分かってもらえるくらいの。

なので、不思議な番組ですよね。いまだに番組のDVD-BOXが2〜3万セットとか買っていただけているんですよ。箱セットだから8千円くらいして安くないですし、そもそもブルーレイや配信が主流のこの時代にDVDですから(笑)。8月20日に番組の本が出るんですけど、Amazonで書籍総合3位にランクインしたのも驚きでした(笑)。

こうやってファンの方がずっと応援してくれているのは本当にありがたいですね。地方や海外へロケに行くと、「課長~!」って喜んで会いに来てくれるんですよ。番組のファンの方がご結婚されて、奥さんやお子さんと一緒にイベントに来てくださったりするのも感慨深いですね。小さなお子さんが有野さんと同じ作業服着ていたりして、かわいいんですよ。これだけファンの方の熱量が高い番組はなかなかないかもしれません。

――なんというか…有野さんの魅力自体が不思議でもありますよね(笑)。

ゲームが好きで上手な方はたくさんいらっしゃるんですけど、ゲーム大好きだけど絶妙に上手くないのが有野さんなんですよね。そして、あきらめず丁寧に最後までやり抜くところも魅力で。そのコイン取りに行くの危ないんじゃないっていう場面で、コインを取りに行くのが有野さん。それで、やっぱり死ぬ…でもあきらめない。ちゃんとコインを取って、雑魚の敵もやっつけて、なんなら隠しアイテムまで探して、とにかくプレイを地道にやるんです。でも上手くない(笑)。そういう方はなかなかいないですよね。

それと、ゲームに対して共演者のようなリスペクトがあると思います。単なる小道具とは思っていない、というか。絶対ゲームの邪魔をしないし、自分だけおいしくなろうともしない。ゲームも自分もおいしくしたい感じですかね。

聞いたことのない一癖も二癖もあるゲームをやらされて(笑)、スタッフに文句は言ってもゲームを絶対ディスらないんですよ。コントローラーを投げるとかもないですしね(笑)。

――番組を見ていると有野さんの文句って、相手をイヤな気分にしない文句ですよね(笑)。

そうそう、傷付けないし、愛のある文句なんです(笑)。

■ 主役の自分よりゲームを話題にさせる有野の魅力

――ゲームを共演者としてリスペクトしているという話、確かに番組から伝わってきます。

日本武道館幕張メッセでやった大型イベントは、来てくださった大人から子どもまで皆さん楽しんで満足してくれて、大成功だったんです。その大舞台に、有野さんはたった一人で立ったんですよ。芸人さん一人で一万の席を埋めるって、本当にすごいことなんです。だけどそこでプレイしたゲームが、主役の有野さんより話題になったりするんですよね(笑)。それを有野さんもスタッフも分かって作り上げているところもあります。

――確かに…失礼かもしれませんが、有野さんって主役になる空気を作らないですね。

それなのに、たまにものすごいミラクルを起こすんですよ。300分生放送も、まさかあんなに早くクリアするなんて誰も思ってなかったんです。17年やってきて、まだ「初めて」を出す人。制作陣は皆、「自信なくすわー」って言ってました(笑)。

――300回を突破しましたが、番組はまだまだ続きそうですね。

チーフ・プロデューサーの菅さん(菅剛史)が20周年の話をしていたので、そこまでは続くと思います(笑)。番組10周年が日本武道館、15周年が幕張メッセ、20周年はさいたまスーパーアリーナ…は難しいんじゃないかなと個人的には思ってますが、イベントはやりたいですね。

テレビが全盛だった時代から、YouTubeが出てきたり、リアルイベントが盛り上がったり…時代の変化もありますけど、この番組は変わらず地味に、でも新しい試みをやっていきたいですね。8月に今さらながらファンクラブも立ち上げるので、そこでもおもしろいことできたらなといろいろ考えています。

あとは、Nintendo Switchがレトロゲームになるまでやろうって。これ、新しいゲーム機が出るたびに言っているんですけど。「発売から20年経ったらレトロ」という基準にしているので、そういう意味ではまだまだ先は長いかもしれないですね(笑)。(ザテレビジョン

放送300回記念に300分生放送を行ったよゐこ有野のゲームバラエティー「ゲームセンターCX」