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“夜の街”への警戒を繰り返す小池都知事(写真:アフロ

初の感染者が確認されてから半年を迎えるも、状況は悪化するばかりだ。6月下旬、WHOのテドロス事務局長は「最初の1カ月に報告されたのは1万人以下だったが、この1カ月は400万人近くにのぼった」と感染スピードが増していることを明かし、ついに総感染者数は1千万人を超えた。

東京都の新規感染者も100人超えを連発し、いよいよ現実味を帯びてきた“第2波”の到来。緊急事態再宣言を求める声もあるものの、政治家たちは消極的だ。

「小池都知事は感染者の多い“夜の街”への外出自粛を求めるばかりで、緊急事態宣言については否定的な姿勢を崩しません。また経済回復を急ぐ政府や各自治体も8月から実施予定の『Go Toキャンペーン』を推奨。そうした状況を受け、国民の危機感もゆるんでいるように見えます」(全国紙社会部記者)

こうした現状を予言していたのが、政府の専門家会議のメンバーとして知られる北海道大学西浦博教授だ。

「西浦教授らの研究チームは6月初頭に、“流行前の行動を続けた場合、7月中に都内の感染者数が1日100人を超える”という試算を発表していました」(前出・全国紙社会部記者)

それが現実のものとなるなか、さらに恐ろしいシミュレーションが公開された。統計学を専門とする千葉大学大学院・小林弦矢准教授とデータ分析会社・Nospareのチームが5月下旬に日本の感染状況を分析した論文を発表した。

論文によると、4月の緊急事態宣言前の行動様式を100%とすると、宣言後の“外出自粛”や“リモートワーク”といった行動変容によって、拡大ペースが50~60%まで低減。緊急事態宣言には感染拡大を抑える効果があったという。

問題は、この次だ。

今後、行動パターンが宣言前の80%に戻った場合は、ゆるやかに感染者は増え続けるものの、’21年春以降には収束していくと予測。

しかし、90%に戻った場合、拡大ペースが上がり、11月には約175万人もの感染者が発生すると試算。

さらに、100%に戻った場合は、8月に約50万人が、10月には約350万人が感染する可能性があるというのだ。第1波を凌駕する試算となっている。この試算の実現性を、NPO法人・医療ガバナンス研究所の上昌広理事長も否定しない。

「規制を緩和して感染者が増えていない国はありません。アメリカでは今も1日で5万人が発症しています。日本も今のまま何もしなければ感染は増え続け、夏には50万人という数字はありえます」

論文で試算された感染者予測には潜在感染者が含まれる。つまり、感染しても発症しない無症状の患者が日本でのパンデミックを左右するのだ。感染症を専門とするのぞみクリニックの筋野恵介院長は言う。

「無症状の人が実際にどれぐらいいるかわかりませんが、かなりいるとは思います。7月2日の都内の感染者107人も、軽症者ばかりで重症者はいませんよね。やはり、無症状の人が気づかないうちに感染を拡大させてしまう可能性はあると思います」

無自覚な感染拡大を防ぐうえで欠かせないのが、検査によって自身の状態を知ること。しかし、PCR検査は症状が現れなければ受けられないところがほとんどだ。

そこで、注目を集めているのが過去の感染や、感染初期段階かどうかも判別できる抗体検査だ。感染の有無をはっきりさせるのに役立つと筋野先生は続ける。

濃厚接触者でありながら無症状でPCR検査を受けられない人でも、抗体検査で感染がわかって隔離できれば、人への感染を防げます。感染初期の場合、まだ人にうつす可能性もあるので、うちの病院では陽性の患者さんには最低5日の自宅待機をお願いしています」

しかし、抗体の検出が可能になるのは感染してから約1週間後。抗体を持っていることがわかったときにはすでにほかの人にうつしている可能性もあり、決して万能ではない。

「また抗体を持っていても、いつ消えるかわかりません。“抗体があるからマスクはいらない”といった考えはやめてください」(筋野先生)

第1波では、世界から感染者の抑え込みに成功したと評価された日本。しかし、本当の正念場はここからのようだ――。

「女性自身」2020年7月21日号 掲載