何が何だか分からないけど、おもわず引き込まれて笑ってしまう。YouTubeで、そんな作品をさかんに発表しているグループがある。2011年にYouTube NexT Upメンバーに選出された、劇団スカッシュだ。ダスキン、アイフル、楽天など企業とのコラボ作品も発表。これがまた、受けた。今、勢いに乗る劇団スカッシュに、「なぜ、YouTubeなのか」、「何が楽しいのか」、「コラボ作品に取り組んでみた感想」などの質問をぶつけた。「直接、言葉で説明するのはどうも苦手で……」と言いながらも、本音を語ってくれた。自らの活動や立ち位置に対する真剣な姿勢が印象的だった。

――なぜ、活動のメーンをYouTube(ユーチューブ)に移したのですか。

スカッシュ:やはり、見ていただく人の数ですね。4人での活動ということで、宣伝にも限界がありました。それこそ、チラシ配りとか、いろいろとやりましたけど。

  今年はYouTubeの活動に集中しています。すると、たとえばTシャツを300枚売り出しても、即日完売といったように、注目度が違うんですね。やはり、劇団として活動している以上、多くの方に見ていただかないと。

  今後もずっと動画サイトだけの活動とは考えていません。ころあいを見て、舞台の活動も再開します。とはいえ、今はYouTubeにおけるスタイルを確立することに全力を傾けています。

――YouTubeにおけるスタイルとは、どんな特徴があるのでしょう。

スカッシュ:映像といっても、映画などとは違って長回しはできません。スマホで見ていただくことを前提として考えています。展開やカット割りをとにかく早くする。「15秒で(お客さんの心を)つかむ、3分で終わらせる」ことをセオリーにしています。

  言い方を変えれば、見ている人の気持ちが落ち着いたのではだめなのですね。ですから、他の映像作品なら大丈夫でも、YouTubeではだめということもあります。

  雰囲気とか季節感、人物描写なんかはカットです。いきなりストーリーに入る。制約といえばそうなのですが、そういう工夫を楽しんで作っています。このあいだ発表した作品でも、男2人が川原でキャッチボールをしている。「なぜ、川原?」という説明はなしです。

――アイフルマンのシリーズですね。企業とのコラボ作品に人気が出ています。このことについて、どうお考えですか。

スカッシュ:まずは、知名度の高い企業ということで、注目して覚えていただけることがあります。例えば劇団スカッシュを知らなくてもアイフルさんということだったら、年齢層に関係なくご存知の方が多いですよね。

  ただ、やはり最も大切なのは作品の質だと考えています。まず、予算のこと。企業とのコラボの場合、製作費を出していただけますからね。機材なども、しっかりと用意できます。見る側にとっては、それだけメリハリがある作品になっているはずです。

  それと、企業とのコラボといっても、直接の広告をしているわけではありませんからね。ストーリーを作って、見ている方が「よく考えたらコラボだった」という感じでしょうかね。作品として楽しんで頂いた上で企業のことも覚えてもらいたいと思っています。

――YouTubeで活動していることの楽しさとは、どんなものでしょう。

スカッシュ:楽しいことと言えば、多くの人に見ていただけて、しかも反応が分かるということですね。コメントの記入を、フルオープンにしています。いろいろと言っていただける。もちろん、厳しいご意見もありますよ。でも好意的に評価していただける場合が多い。

  これはYouTubeでなくてツイッターでの書き込みなんですが、全然関係のない流れなのに「困ったことがあったら、アイフルマンを呼ぼう」という書き込みがあった。これは、うれしかったなあ。

  それから、YouTube仲間に「よくやった」なんて評価してもらったこともあります。とにかく、広がりのある世界ですね。今回のアイフルマンは、ひとつの作品なのに6チャンネルを跨いでいます。テレビとは違ったYouTubeならではの楽しさのひとつですね。

  逆に怖いのは、見た人が少しでも「つまらない」、「もう、いいや」と思われたら、その瞬間に別の動画に切り替えられてしまう。だから、制作には気合がはいりますよ。

  台本を作る際にも、全員で徹底的に討論します。本当にガチです。全体で3分以内の作品の、それもたった1つのシーンでも、撮影現場で改めて8時間ももめたことがあります。

  今はとにかく、YouTubeの作品づくりが面白く、手ごたえもあるので熱中しています。楽しい作品をもっともっとお届けします。

**********

  企業とのコラボについて、劇団スカッシュはYouTubeに集まる人との「感性の相性」をとにかく大切にして、創作活動に励んでいるようだ。劇団スカッシュの取り組みは、単に企業と出演者のコラボというのではなく、YouTubeという場を通じて、企業と出演者、さらに視聴者の3者が結びついたコラボと考えるべきなのかもしれない。

  アイフルとのコラボの場合、全ての動画の総計で40万回近く再生されている。企業にとっても、劇団側にとっても効率的に「知ってもらいたい」、「よい作品を作って、みてもらいたい」という目的を実現させており、ユーザーにとっても「おもしろいものを見たい」という願望をかなえているだけに、劇団スカッシュの取り組みは、今後も大きく注目されていきそうだ。

  写真はサーチナ編集部撮影。左から劇団スカッシュの前川健二、中田大地、大塚竜也、大塚祐也。(取材・構成:中山基夫)