1865年6月19日アメリカで長らく続いた奴隷制度がついに終わった。この日は「奴隷解放記念日」と呼ばれるが、これまではアフリカアメリカ人以外には知られることのない祝日だった。

 ところが今年、Black Lives Matterの盛り上がりが奴隷史の見直しにも波及し、多くの企業がこの日を急遽、祝日休業とした。同時にカマラ・ハリス上院議員が連邦の祝日(日本の国民の祝日に相当)とする法案も提出している。 

 奴隷解放は米国史上の非常に大きなターニング・ポイントであったが、わずか半年後の同年12月テネシー州にて白人至上主義グループKKK(クー・クラックス・クラン)が結成されている。奴隷解放に納得できず、白人の優位性を訴え、黒人を迫害することが目的の集団だ。 

白人至上主義集団「KKK」とは何者か

 オリジナルメンバーは6人の元南軍将校だ。映画などによく登場する白い頭巾は結成当初は使われていなかったが、シンボルマーク十字架モチーフとしている。つまりキリスト教徒たちであり、黒人以外にユダヤ系、後には移民、左翼主義者、LGBTQなども排斥の対象としている。自身と同じ欧州系白人・キリスト教徒・保守派・異性愛者以外を一切受け付けないのである。 

 KKKは瞬く間に南部全域から全米に広がり、多くのメンバーを得た。経済的に成功した黒人、白人に対して「生意気」な態度を取る黒人、白人女性を襲った、レイプした(と虚偽の糾弾をされた)黒人男性をリンチ、殺害した。黒人を木に吊るし、殴打、身体の一部を切り取り、火を点けた。リンチは見世物として行われ、多くの見物人がやってきて、遺体の記念写真も撮影された。 

 そんなKKKもいつしか規模が衰えていくが、1915年にKKKを描いた映画『國民の創生』の公開により第2期を迎える。その後、1950年代から60年代に公民権運動が起こると、KKKの活動はまたもや活発となった。

 2009年バラク・オバマアメリカ史上初の黒人大統領になると、その時期までに格段に減っていたKKKを含むヘイト団体の数が急増した。奴隷制の終焉時と同じく、黒人が白人と同じ権利や立場を得ようとするたびに、白人至上主義は活発化するのである。 

 そして2020年11月大統領選を控えた今年、コロナ禍に見舞われて300万人を超える感染者、13万人超の死者が出ている。全米がロックダウンとなり、経済はかつてない規模で停滞。そんな中、5月に黒人男性ジョージ・フロイド氏が白人警官に殺害される事件が起き、ブラックライブズ・マター抗議デモは今も続いている。

 コロナ禍とデモの両方をうまく捌けずにいるトランプの支持率は下がり、トランプ本人と支持者は大いに焦っている。そもそもレイシストであるトランプの支持者には強硬な白人至上主義者がおり、今また不気味な動向を見せている。 

日本生まれ日本育ちの大物白人至上主義者 

 アメリカヘイトグループを追跡調査するSPLC(Southern Poverty Law Center)は、米国に現在も多数あるヘイトグループを17のカテゴリーに分けている。KKKはそのひとつだが、「白人国粋主義」「ネオ・ナチ」など、黒人排斥を訴えるものは他にも複数ある。 

 白人国粋主義のカテゴリーに登録されている人物の1人が、ジャレッドテイラー(68)だ。テイラーは日本生まれのアメリカ人だ。宣教師である両親の日本滞在中、1951年に神戸で生まれ、16歳まで日本で育っている。米国に戻った後にイェール大学で哲学を修め、フランスのパリ政治学院では国際経済を学んでいる。英語、日本語フランス語に堪能であり、ハーヴァード大学で日本語を教えていたほか、日本の企業と関わる仕事を手掛けていた時期もある。

 テイラー1990年に白人至上主義の雑誌アメリカン・ルネッサンスを発行開始。著作も多数あり、かつ白人至上主義イベントを開催するなど、現在に至るまで活動を続けている。 

 人種による知能指数の違いを研究し、その内容を激しく批判されていたフィリペ・ラシュトン博士(故人)の説を信じるテイラーは、自身のイベントに博士を招いてレクチャーさせたこともあった。ラシュトン博士によると、ヨーロッパ人(白人)の知能指数は高く、アフリカ人は低い。しかしアフリカ人に比べるとアメリカ黒人はやや高い。驚くべき点は、東アジア人は白人よりも若干高いとしていることだ。 

 テイラーは親日家であることも手伝ってか、この説を強く信じているが、反移民主義者でもある。生まれ故郷の日本を好きであり続け、日本人のIQは高いとしながらも、アメリカヨーロッパ人(白人)のみで構成されるべきであり、日本人が移民としてアメリカにやってくることには反対なのだ。

 したがって前回の大統領選では「メキシコとの国境に壁を建てる」「米国にいるビザ無し移民推定1,100万人を全員強制退去」など、トランプの荒唐無稽な公約が実現されるとは信じていないとしたものの、移民排斥に共感し、トランプを支持した。 

「人種的、文化的に均質」と持ち上げられる日本 

 ジャレッドテイラーは、日本を「人種的、文化的に均質」であるとして、多様化した西側諸国より優れた国になるだろうと発言している。元KKKリーダーデヴィッド・デューク(70)、オルタナ右翼リーダーリチャードスペンサー(42)、2015年にサウス・カロライナ州の黒人教会で乱射し、信者9人を殺害した単独犯ディラン・ルーフ(26)、2011年ノルウェーでの連続テロ事件で計77人を殺害したとされるアンネシュ・ベーリング・ブレイビク容疑者(41)など、所属グループ・年齢・国を問わず、多くの白人至上主義者が同様の意見を掲げている。 

 今から10年以上も前となるが、筆者は取材で「ガン・ショー」を訪れたことがある。大きなイベント会場に多数の銃販売のブースが並び、観客が訪れ、銃を品定めしては買っていく見本市だ。 

 会場はニューヨーク州都のオルバニーだったが、販売者も客もほとんどが白人だった。黒人は、米軍が出店しているブースで大型銃の説明をしていた兵士と、わずか2〜3人の客のみ。アジア系はおそらく筆者と同行の編集者だけであり、他には見掛けなかった。無数の銃器に囲まれ、非常に居心地の悪い空間であったが、主催者、出店者、共に筆者の質問には問題なく答えてくれた。 

 銃以外に小物販売のブースもあり、ナチス関連の小物を売るテーブルがあった。その隣では旭日旗の小物が販売されていた。アジア諸国を攻め、統治した「単一民族」日本の象徴と受け取られているのだろう。 

 この流れから古い日本文化に憧れる白人至上主義者もいる。今年6月、ミズーリ州にて複数の爆発物を隠し持っていたことから逮捕されたキャメロン・スウォボダ(26)は、ブラックライブズ・マターのデモ参加者をターゲットにするつもりだったと報道されている。 

 スウォボダのインスタグラムにはミリタリー装備の自身の写真が上げられているが、プロフィール欄には「親日家」を意味する「Japanophile」 の記載がある。スウォボダのものと思われるピンタレストのアカウントには日本語で「和服」と書かれたカテゴリーの他に、ローマ字で「Tanegashima teppou」(種子島鉄砲)と題し、古い鉄砲の写真をアップしたカテゴリーもある。 

ジャレッドテイラーを登場させた日本のテレビ番組 

 6月初頭、ジャレッドテイラーは日本のBS-TBSの番組『報道1930』に人種問題の専門家として登場し、ジョージ・フロイド氏殺害後のデモと暴動についてコメントした。日本のテレビが世界的に名を知られる白人至上主義者に黒人運動を語らせたことは非常に大きな驚きである。 

 テイラーは開口一番、こうした事件が起こるたびに白人側の人種差別がなんども強調されるが、それは報道の無責任であると断定した。 

 武器を持たないフロイド氏を警官が殺害したこと自体は正当化できないとしながらも、フロイド氏の身長と体重を持ち出し、大柄なフロイド氏が逮捕に抵抗した結果であると主張。

 数年前に大きな社会問題となった黒人少年トレイヴォン・マーティン(17)マイケルブラウン(18)殺害事件にも言及し、どちらも被害者側に非があるとした。そうした見解に番組司会者が疑問を投げ掛けると、そもそも黒人の犯罪率は白人のそれより高いと、事件の本質を意図的にはぐらかしてコメントを終えた。

 ちなみに、最後に「アジア系の犯罪率は白人よりも低い」と、脈絡なくアジア系を持ち上げる一言を付け加えている。 

 テイラー高学歴の知識層であり、口調や物腰は穏やかだ。何より日本語が流暢。しかし、ヨーロッパ諸国から入国禁止とされるほどの白人至上主義者である。そうした人物を「アメリカは白人の国だと主張しているオルト・ライトオルタナ右翼)の重鎮」とあらかじめ紹介した上であっても、同番組のコメンテイターとして繰り返し使うTBSの意図は何なのか。 

そもそも日本は単一民族国家ではない

 日本はそもそも単一民族国家ではなく、かつ現在はテイラーが暮らしていた1960~70年代とは比べものにならないほど人種や民族が多様化している。その日本を今も単一民族国家、均質国家と信じ、ねじれた憧憬心を膨らませているのが白人至上主義者だ。 

 さらに、全ての白人至上主義者がアジアに傾倒しているわけではない。アメリカではアジア系への差別は昔からあり、コロナ禍以降は「コロナを持ち込んだ」として差別事件が急増した。そもそも白人至上主義者には移民排斥主義者も多く、アジア系も「アメリカから出て行け」の対象だ。 

 日本に誤った憧れを抱く白人至上主義者と、その白人至上主義者を識者として尊ぶ日本。このおぞましい関係を解くには、日本が移民も多い多民族国家であると、自ら世界に知らしめていくほかはないのである。 

(堂本 かおる

KKKのメンバー ©getty