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量産ミニの中で過去最速のJCW GP

textMatt Prior(マット・プライヤー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
たまたま、筆者は同じ日にミニ・ジョンクーパー・ワークス(JCW)GPと、ポルシェカイエンGTSクーペへ試乗した。ライバル関係にある2台ではない。

数字的な違いは面白い。カイエンGTSクーペは、車重2.2tもあるファミリー向けSUV。最大牽引重量は3.5tもある。一方のミニJCW GPは2シーターのハッチバック。車重1255kgだが、306psもあるストリートレーサーだ。

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ミニ・ジョンクーパー・ワークス(JCW) GP(英国仕様)

両極端な2台だが、どちらがドライバーズカーとして優れているだろう。

このミニJCW GPは、3代目。3000台の限定生産で、英国へは575台が入ってくる。日本への導入は240台だという。

最初にJCW GPを名乗るミニが登場したのは、2006年。赤いドアミラーカバーLSDを採用。リアシートは省かれ、追加される部品以上の仕上がりを獲得していた。

続く2代目の登場は2013年。英国のファンからはGP2と呼ばれている。素晴らしい走りを獲得していたものの、価格も相応に上昇していた。そして2020年に登場したのが、3代目だ。

エンジンは通常のJCW GPと同じ、4気筒ターボエンジン。最高出力は306ps、最大トルクは45.8kg-mへと増強されている。標準のJCW GPと比較すると、75psと13.5kg-mもたくましい。

ECUの変更だけでなく、強化クランクに新しいピストン、コンロッドが組まれている。ターボチャージャーも大型のもので、冷却系も強化された。

歴代のJCW GPがそうだったように、3代目もこれまでの量産ミニの中で過去最速。記録は更新され、0-100km/h加速は5.2秒で、最高速度は264km/hに達した。ただし、速いことと楽しいこととは、別の問題ではある。

レーシーな見た目に勇ましいサウンド

JCW GPのトランスミッションは、8速ATのみ。筆者は、MTが選べないことに疑問を感じる。英国での価格は、3万5345ポンド(473万円)なり。

車高は、通常のJCWより10mm低い。派手なリアスポイラーなどは、テレビゲームグランツーリスモに登場した、ミニ・ビジョンにも似るデザインだ。

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ミニ・ジョンクーパー・ワークス(JCW) GP(英国仕様)

ホイールは18インチで、カーボンファイバー製のフェンダーアーチにピタリとフィット。見た目はかなりレーシーだと思う。ボンネットの内側には、強化されたサスペンションタワーストラットレースが備わる。

インテリアでは、JCW GPとして特別感を高める要素はあまりない。リアシートが省かれクロスメンバーが組まれているが、実際は剛性を高める部品ではないようだ。ダッシュボードには、製造番号が記されたプレートが配される。

それ以外のインテリアは、典型的なミニ。横に並ぶトグルスイッチには、保護用の丸い金属部品が付く。事故時に誰かがスイッチで怪我をしないように、規制で決まっているのだという。

その中央に、エンジンスタート用の大きなトグルスイッチがある。エンジンが目覚めると、かなり勇ましいサウンドを放つ。アイドリングへ落ち着くまでに、数回の破裂音が混ざるほど。

昼間のサーキットまでのドライブなら、気持ちを鼓舞する演出として喜べるかもしれない。しかし、普通の日の早朝や深夜には、近所の人へ迷惑をかけてしまいそうだ。

ぎこちない乗り心地と忙しないトルクステア

これが、ミニJCW GPの性格を物語っている。エネルギーに溢れるものの、洗練という言葉がそぐわない。例えば、ポルシェ911 GT3や一昔前のルノークリオトロフィーとは違う。

ドライバーの充足感にフォーカスされた、優れた動的性能を伺わせるルックスではある。しかし英国の一般道を走らせた限り、ミニJCW GPは期待どおりではなかった。

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ミニ・ジョンクーパー・ワークス(JCW) GP(英国仕様)

まずは乗り心地から。筆者は、硬い乗り心地でも、あまり気にしない。

マクラーレンなどは、スポーツモデルが必ずしも硬い乗り心地でなくてもいいことを示している。もちろん、フォード・フィエスタSTなど、硬い例もある。

一方のミニJCW GPは、硬いだけでなく、荒々しくぎこちなさを感じてしまう。1255kgと悪くない車重ながら、重さを感じさせるようでもある。落ち着きがなく、マンホールキャッツアイを超えるだけでも乱れる。

アクセルペダルを踏み込むと、トルクステアが生じる。チャレンジングなカーブの続く道では、アルファ・ロメオ4Cのように忙しない。

ドライバークルマとの一体感が強ければ、忙しなさは運転を楽しむ一部になることもある。でもミニJCW GPの場合は、大変さの方が先に立ってしまう。

見た目に負けないアグレッシブさを備えるのが、エンジン。2.0Lユニットからは、306psと45.8kg-mという不足ないパワートルクが生み出される。

低回転域では多少のターボラグがあるものの、レスポンシブで吹け上がりも軽快。フルスロットルからアクセルを離すと、激しいアフターファイアーの破裂音も鳴らしてくれる。

理想は初代のミニJCW GP

折角のエンジンへ水を指すのが、8速ATしか選べないトランスミッションデュアルクラッチユニットのように、シャープなつながりで変速を楽しむことはできない。シフトダウン時には2秒ほど、ためらいが生じることもある。ヤキモキしてしまう。

もちろん、ミニJCW GPの性格が輝く場所はある。サーキットだ。

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ミニ・ジョンクーパー・ワークス(JCW) GP(英国仕様)

アルファ・ロメオ4Cは、砂の浮いた滑らかなテストコースだけでなく、英国の少し湿った平滑なサーキットでも、素晴らしい走りを楽しめた。おそらく3代目ミニJCW GPも、似たコンディションでなら、爽快なドライビング体験を味わわせてくれるのだろう。

イタリアまれのアルファ・ロメオ4Cは、英国の一般道とは相性が合わなかった。果たして英国生まれの新しいミニJCW GPは、英国の一般道で事前にテストされたのだろうか。

筆者が求めるのは、初代のミニJCW GPのようなクルマ。軽く、ほどほどにパワフルで、小さく機敏。理想的なモデルだった。

3代目ミニJCW GPを好きになれる人は、本当にミニを愛せる人だけだろう。完成度は高いと思う。派手なリアウフィングを備え、見た目も魅力的な、台数限定の特別なミニだ。これだけでも評価はできる。そして、かなり速い。

でも、素晴らしいドライビング体験を得られるホットハッチなら、英国ではフォード・フィエスタSTという選択肢がある。必要な費用は、ミニJCW GPの半分で済む。

ミニ・ジョン・クーパー・ワークス(JCW) GP(英国仕様)のスペック

価格:3万5345ポンド(473万円)
全長:3838mm
全幅:1727mm
全高:1415mm
最高速度:264km/h
0-100km/h加速:5.2秒
燃費:13.7km/L
CO2排出量:167g/km
乾燥重量:1255kg
パワートレイン:直列4気筒1998ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:306ps/5000-6250rpm
最大トルク:45.8kg-m/1750-4500rpm
ギアボックス:8速オートマティック


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