『岡崎に捧ぐ』などの作品で知られる山本さほさんは、なぜか厄介な人たちを引き寄せてしまう謎の能力の持ち主。トラブル続きな日々をつづったエッセイ漫画『きょうも厄日です』の中から、その一部を作者インタビューと合わせて公開します。(聞き手/構成:杉本吏)

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●漫画『きょうも厄日です』とは?

 街を歩けば不思議な人に出くわし、電車に乗れば面倒な人に絡まれ、旅行に行けばおかしな事件に巻き込まれる……。山本さほさんの身に降りかかる災難を、“笑い時々ホラー”なタッチで描きます。

●作者プロフィール山本さほ

 1985年生まれ。幼少時代からの親友「岡崎さん」との友情や子供時代の思い出を描いた自伝的作品『岡崎に捧ぐ』がネット上で話題となり、漫画家に。現在、『きょうも厄日です』(文春オンライン)『無慈悲8bit』(週刊ファミ通)連載中。

山本さほ先生インタビュー(1)

――今回は「怒りの瞬発力」というお話です。確かに、何かあったときに一瞬で怒る(怒れる)人と、そうじゃない人がいますよね。

山本: 私には本当に怒りの瞬発力がなくて、分かりやすいところでいうと「車を運転しているときのクラクション」です。目の前に人が急に飛び出してきて、「あぶねーだろ!!!」ってすぐ言える人がいるじゃないですか。あれ私、できないんですよ。

――そうか、確かにあれも瞬発力ですね。

 判断にすごく時間が掛かるんです。人が飛び出してきても、まず「あれ、ここって横断歩道だったっけ?」とか「信号は青だったっけ?」とか、そういう方を先に考えてしまうんです。いつも「私が悪い前提」で考えが始まるんですよ。

 だから自分に落ち度が全然なくても、一回「私が悪い」ってことで考えて、ゆっくりと「私は悪くないのでは……?」ってことが全部整理できてから、じわーって怒りが来る。

――それってロジックのあとに感情が来てますよね。理屈が確認できてからやっと怒り始める、というのは。

 そうそう。そこ(理屈の確認)を全部やらないと、やっぱり「間違えて怒っちゃったらどうしよう」っていうのが心配なので。

――「まず私が悪い前提で始まる」っていうのは、そうなった原因というか、きっかけのようなものはあったんですか?

 やっぱり私の今までの全作品で共通して言っているのが、自己肯定感の低さなんですよね。なんか自分の順位が低いんです、すごく。

――過去の作品では「小学生時代には全能感があった」と描かれていて、実際かなり奔放だったようですが。

 小学生の頃はそんなこと(自己肯定感の低さ)なかったと思うから、中学、高校、卒業してから……と、じわじわ出来上がっていったんだと思いますね。

――ちなみに、先ほど「間違えて怒っちゃったらどうしよう」と言われてましたが、間違えて怒ってる人なんて世の中にめちゃくちゃいっぱいいますよね。

 そうですね(笑)。めちゃくちゃいるし、そういう人たちに私たちは日々、悩まされてると思うんですよ。「あれ、なんで今自分が謝ったんだろう」って。

――そういう性格を直したり解決したりしたいとは思いますか?

 うーん……でも、そんなにすぐキレたくないじゃないですか。私はすぐキレる人は好きじゃないから、別に今のままでいいかな。確かに「適切な場面でキレる」ことができるようになったらスカッとはするんでしょうけど、今のままでいいです!

<(2)に続く>

漫画『きょうも厄日です』