「ダークナイト」シリーズに『インセプション』(10)、『インターステラー』(14)、『ダンケルク』(17)と次々に話題作を手がけるクリストファー・ノーラン監督。彼の最新作『TENET テネット』(9月18日公開)が控えており、好奇心を刺激する予告編が話題を集めている。そんなタイミングで、ノーランが世界的人気を確立するきっかけとなった『ダークナイト』(08)のIMAX版、4D版での再上映が決定。早速、池袋のグランドシネマサンシャインにあるIMAXレーザー/GTテクノロジーで本作を鑑賞してきたので、その模様をレポートしたい。
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■『ダークナイト』でIMAX撮影を本格投入したクリストファー・ノーラン
本題に入る前に、IMAXとノーランの歩みについて簡単に振り返っておきたい。いまではさほど珍しくなくなったIMAX撮影の作品だが、映画へ初めて本格的に取り入れたのがノーランだった。通常の35mmフィルムの面積比の4倍にあたる70mmの大判フィルムを使用するため、IMAXの撮影機材は巨大になり、映画で使用されることはほとんどなかった。
しかし、果敢にも彼は『ダークナイト』の印象的なシーンでIMAX撮影を敢行。当時世界に4台しかなく、50万ドルもするIMAX用のカメラをカーチェイスのシーンに使用し、誤って1台を大破させてしまうこともあったが、完成した映像の出来栄えは周知の事実で、その後もIMAX撮影の第一人者として活躍し続けている。
■そこにゴッサムシティがあるような没入感と臨場感
約26分間にわたる『ダークナイト』のIMAX撮影のパートは、全編で6シークエンス。そのうち4シークエンスが、本作のメインヴィランとして強烈な印象を残したジョーカー(ヒース・レジャー)の描写に割かれている。しかも、冒頭のジョーカー一味が銀行を襲撃するシーンから実施されており、早速その没入感に驚かされてしまう。
グランドシネマサンシャインのシアターでは、IMAXのパートになると画角が通常の大きさから約40%も上下に広がり、目の前の巨大なスクリーンすべてが、少しの隙間もなく映画の画面になってしまう。空から高層ビルが立ち並ぶ街並みを俯瞰で捉えた映像では、その奥行きがリアルに伝わり、スクリーンの中にほんとうにゴッサムシティがあるのでは?と思ってしまうほど。
さらに、マフィアの資金を管理している実業家を追って、ブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)が香港を訪れるシーンでは、夜間にビル群の合間をバットマンが縦横無尽に飛行する場面があり、ここでも目の前でほんとうにバットマンが空を飛んでいるかのような臨場感が味わえる。
■カメラも壊した(!)バットポッド登場のカーチェイスシーンは圧巻!
圧巻なのは、検事のハービー・デント(アーロン・エッカート)を護送する警察車両を、トラクターに乗ったジョーカーが攻撃する一連の流れ。なんとここでは、警察車両がトンネルに入ってからジョーカーを捕らえるまでのすべてがIMAXの映像になっている。カーチェイスを繰り広げながら、銃撃や爆破が連続する本作における中盤の見どころだが、特に大破したバットモービルを捨てたバットマンが、バットポッドで飛びだしてからが必見。
バットマンの主観映像や、低い視点からバットポッドを追いかける映像などが巧みに入れ替わり、観ている我々が運転しているかのような感覚に。一瞬たりともスクリーンから目が離せない緊迫感が続き、心臓のバクバクが止まらない。ここが先述の高価なカメラをお釈迦にした例のシーンなわけだが、その価値は十分にあったと言えるだろう。
■バットマンの悲痛さがより伝わりエモーショナルさもUP!
IMAX撮影をアクションシーンばかりに使わないところにも、ノーランの演出のすご味を感じさせられる。ジョーカーのワナにハマったデントと、ウェインの想い人であるレイチェル・ドーズ(マギー・ギレンホール)が拉致され、レイチェルが殺されてしまう場面。バットマンは瓦礫の上で悲しみに打ちひしがれ、レイチェルがブルースに宛てた最期の手紙も読み上げられる。巨匠ハンス・ジマーによる重厚感あふれるサウンドが、体に響くように染みわたり、よりエモーショナルなものとして昇華されている。
■『ダークナイト』ファンの熱いメッセージも続々!
SNS上では、早速IMAX版『ダークナイト』を鑑賞した熱いファンからのメッセージを確認することができる。
「初体験のIMAX版『ダークナイト』最高でした!やっぱり、画面全体に投影されると迫力がすごい…。ジョーカーがパトカーから体を乗りだして走るシーンがやばい!」「ラストシーンで画面が暗転して、“THE DARK KNIGHT”の文字とともに、ハンス・ジマーの重低音が効きまくったテーマが流れる。この流れがどうしても劇場で体感してみたかった!」「IMAX版がすごすぎて、感動して泣いてしまった。ゴッサムシティの背景ってあんなに美しいんですね。低音が席にまで伝わってきて、ハンス・ジマーの劇伴や爆発の効果音が最高だった」など、ファンならではのこだわりポイントや映像、音響面での感動を力説する声が続出している。
通常スタイルの上映やDVDなどで鑑賞している人も多いと思うが、経験してみて初めて、このIMAX版こそが『ダークナイト』の“完成形”なのだと思い知らされる。加えて、本編の前には、約6分間の『TENET テネット』のプロローグも上映されるなど、オトク感も高い今回の再上映。まずはその衝撃を、目で、体で、心で体感してみてほしい。
取材・文/トライワークス
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