世帯年収の話をするとき、たいてい「1000万円超えているか」が基準になるのではないでしょうか。最近は共働き家庭の増加もあり「夫婦合わせればだいたいそれぐらいだけど…」という人も増えてきました。しかし、「あのうちはたいそう優雅に暮らしているんだろうな」なんて話を振ると、子供を抱える共働き家庭からは「とんでもない!うちなんかよりよっぽど優雅な人がいる!」との返事が。「優雅な人」とはいったい誰のことなのでしょう。

世帯年収1000万円。それでも貯金できない場合も

金融広報中央委員会が調査した「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和元年)」によると、1000万円以上の高収入世帯であっても16%、1200万円以上の世帯でも11.6%の人が「貯蓄をしなかった」と回答しています。

年収が高くても貯蓄をしないという人が1割以上存在するというのは単純に驚きですが、その理由として「また稼げばいいと思っている」といった自分がお金を生み出す力があるという自信からの行動の人もいれば中には「お金を貯める余裕がない」という人も。こんなに稼いでいるにもかかわらず「余裕がない」とはいったいどういうわけなのでしょうか。

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子供の教育費を筆頭に「消費支出が高すぎる」

夫婦共働きでお子さんが二人いるというKさん。世帯年収は1000万円を超えていますが、車も軽自動車だし、旅行なども年に一度国内旅行をすればいい方だといいます。

「夫婦で働いているからといって『たくさん稼いでいる』といった実感はありません。子供がいるとどうしても仕事の後やることが多くなって『もったいないけどスーパーでお惣菜を買ってしまおう』なんてこともあり、そういった地味な出費が贅沢、といったくらいの生活です。

うちは男の子二人なんですが、年々食費も上がってきています。また、運動系の習い事もやっているのでそれらの支出もばかになりません。学年が上がってくるとどうしても塾などにいかなければならないし、そうなってくると可処分所得に対して消費支出が高すぎる。うちは気持ち程度貯金するよう目標を立てていますが、家族でちょっと遠出でもした月は貯金に回せないこともあります」

内閣府平成18年に発表した「子どものいる世帯の年齢層別消費支出」によると、子ども一人の幼稚園から大学までの教育費はおよそ1100万円台から1800万円台とされています。

さらに、食費や通信・娯楽費といったものも加わってくるので、確かに子育て家庭が「いくらあっても生活が苦しい」と感じるのは納得かもしれません。加えてKさんは「学生時代から仲の良かったあいつが最強だといつも顔を思い浮かべます」と発言。あいつとは、独身実家暮らしを続けるいわゆる「子供部屋おじさん」の友人だというのです。

子供部屋おじさんが優雅な理由

最近よく耳にするようになった「子供部屋おじさん」という言葉。これは、大人になっても独り暮らしや結婚などをして独立せず、子どもの頃同様に実家の自室で暮らし続ける男性のことを指すようです。

「中年ニートとは違うの?」という声も聴きますが、子供部屋おじさんは働いていないわけでも、決して経済的に親に頼らないと暮らせないという人ばかりでもありません。「パラサイトシングル」とも近い言葉のようですが、こちらも「実家に寄生しないと暮らしていけない」という意味を多く持つ分、優雅といわれるのはやはり子供部屋おじさんなのかもしれません。

先ほどのKさんの友人男性は、就職もしっかりしており、趣味は車。ファッションや食、女性にもあまり興味がないのでとにかく好きなだけお金を車にかけることができるというのです。学生時代、共に車の魅力を語り合っていたというKさんは、結婚と同時に車の趣味を引退。「お前が軽自動車を乗るなんて」と友人に驚かれたそうですが「妻や子供にとってもっとお金をかけるべきところがあるのであれば、自分はこれが最良な選択だと思っている」とのこと。

一方、実家に住みローンもなく子供の教育費に頭を悩ませることのない子供部屋おじさん。年収としてはKさんの方が少し上のようですが「お金を好きに動かせる」人生を送っているのは一目瞭然のようです。

最強の選択をするかは人それぞれ

Kさんと友人はそれぞれ「結婚するかしないか」という選択をそれぞれ行いました。しかし、中には自らの希望と関係なく「奨学金を申請しないでも暮らせる人・暮らせない人」「一軒家を建てるにしても親が土地をくれたり、建設費用を出してくれる人」など年収とは別の部分の収支で、消費支出が増えたり減ったりします。

そういったラッキーともいえる環境を生かしながら年収とは切り離したところで貯蓄をしたり優雅な生活を送る人を見ると、隣の芝生の青さが眩しくなるというKさん。とはいえ「お金とは別のところで家族の健康だったり、成長を楽しむという喜びに出会えたことが金額で表せないとも思う」とのこと。Kさんのお話は、自分にとって「最強」の選択は何か改めて考えるきっかけとなりました。

【参考】
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和元年)
内閣府子どものいる世帯の年齢層別消費支出