新型コロナウイルス感染症COVID-19)の影響により、テレワークを導入する企業が日本でも広がってきました。

東京商工会議所は、2020年5月29日6月5日東京23区の会員企業12,555社(回答数1,111件)を対象に調査した「テレワークの実施状況に関する緊急アンケートの調査結果」 を発表しました。それによると、テレワーク実施率の割合は、同年3月に調査した26.0%から、67.3%と緊急事態宣言以降、大幅に増加したことがわかります。

在宅ワークが普及し自宅で過ごす時間が増えたことにより、家庭での役割が変わった人もいるようです。

一切家事をしない夫が在宅ワークに 

都内在住のAさん夫妻も、在宅ワークにより妻と夫の役割が逆転したようです。IT企業に勤めるAさんの夫は、もともとは家事を一切しない『亭主関白な夫』だったといいます。

「家事はすべて私まかせでした。共働きですが子どもはいませんし、2人分の家事ならたいしたことないと思っていたようです。」

そんな夫でしたが、彼の勤務先がテレワークを推奨したことにより事態が一転。夫が在宅ワークに切り替わったことで、家事を任せることにしたそうです。

「私は変わらず、朝からバタバタと出社。夫は、朝からのんびりコーヒーを飲んで仕事を始めているようで。夫から『朝から忙しそうだね』と冗談をいわれて腹が立ちました!『私は、朝から洗濯を済ませて出社している。家にいても自分のことしかしていないあなたと比べないで』と言い返してしまいました…。」

夫婦喧嘩に発展しそうな状況からか、夫が洗濯を引き受けることにしたようです。

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主夫デビュー失敗 

はじめての洗濯だったというAさんの夫は、初日から大失敗だったようです。

「洗濯なんて、洗濯機に入れてスイッチひとつで完了すると思っていたんです。乾燥までかけて、それを夕方まで放置したようでした。私が仕事から帰ってきたら、洗濯物が大変なことになっていました……。」

洗濯槽の中で絡まって、シワだらけになったTシャツ。なにかに引っかかったのか、レース部分がほつれたAさんの下着。
あきらかに縮んだとわかる、夫のジーンズ。洗濯のことをなにも知らなかった夫は、わけて置いていたはずの洗濯物を一気に洗ったそうです。しかも洗剤の入れる場所がわからず、直接洗濯槽に洗剤と柔軟剤を入れたのだとか。

「ゴワゴワ、しわしわの洗濯物を見て、これはいけないと夫に一から教えました。ネットに入れているものは、入れたまま洗濯できること。洗剤や柔軟剤の投入口に、乾燥機不可の素材があること。洗濯ひとつにしても、知らないことだらけだと気づきました。」

こうして、夫の主夫デビューは失敗に終わるのでした。

少しずつ覚える家事 

それから、夫は初日の失敗を踏まえて少しずつ家事を覚えるようになったそうです。

「洗濯物はだいぶ改善されました。しかも私が残業するときは、夕食の準備までしてくれるようになったのです。まさか、そんなことまでできるようになるなんて、在宅ワークさまさまだと思いました。」

まだ完璧に家事をこなせることはありませんが、「家事は男がやってもいい」という考えに変わったのは大きいといいます。今は2人暮らしのAさん夫妻ですが、いずれ子どもが生まれるかもしれません。「それまでに、家事ができる夫になってよかった」と、Aさんは感じているようです。

これからは夫婦で家事分担

緊急事態宣言が解除され、週に数回出社することになったAさんの夫。しかし、在宅ワークでなくても、積極的に家事分担をするようになったのだとか。「家事は2人でするものだ」という考えに変わったことが大きいようです。やはり、夫の意識改革がAさんの夫婦関係を良好にしたようでした。

ひとりで家事を抱えるのは大変なことです。内閣府男女共同参画局が打ち出した「夫婦が本音を出せる魔法のシート」をご存じでしょうか。そこでは、夫婦間でなかなかいいにくかったちょっとした不満や、伝えられなかった気持ちがまとめられるようになっています。

ひとりで抱えがちな家事や育児を『2人で』シェアするために話し合う、このコミュニケーションツールを活用するのもひとつの手になりそうです。

Aさん夫妻は、新型コロナウイルス感染症COVID-19)の影響で、在宅ワークになったことがプラスに働いたようでした。家事や育児は、ひとりでする必要はありません。お互いに支え合って、協力し合うことで、より夫婦の関係も強くなるのかもしれませんね。


【参照】
東京商工会議所「テレワークの実施状況に関する緊急アンケートの調査結果
内閣府男女共同参画局「夫婦が本音を出せる魔法のシート