国内の航空機メーカーが結集して開発した戦後初の大型ジェット機、C-1輸送機もすでに初飛行から半世紀。当たり前のように見られた機体も、日本の空から姿を消す日が近づきつつあります。現状と退役の予定を見てみます。

航空技術の向上に貢献 日本初のジェット輸送機

2020年は、日本の国産機開発においてエポックメイキングになった機体が誕生してから50年の節目の年です。その機体とは航空自衛隊C-1輸送機で、1970(昭和45)年11月10日に岐阜基地で初飛行に成功しました。

C-1輸送機は、エンジンこそアメリカのプラット&ホイットニー製ですが、それ以外は国内メーカーが独自に設計開発しており、ジェットエンジンを複数搭載した大型機としては日本初の機体です。

C-1の開発は1960年代に始まり、1966(昭和41)年から基本設計をスタート、1968(昭和43)年5月には実物大模型、いわゆるモックアップが完成しました。そして1969(昭和44)年夏から試作機の製作に着手、翌1970(昭和45)年8月に試作初号機がロールアウトし、3か月後の11月に初飛行と相成ったのです。

量産は1981(昭和56)年10月まで続き、試作機含めて計31機が航空自衛隊に納入され、愛知県の小牧基地を皮切りに、埼玉県の入間基地、鳥取県の美保基地と3か所の航空自衛隊基地へ配備されました。

新型輸送機C-2の増勢でC-1はいつまで現役?

その後、小牧基地のC-1は短期間でアメリカ製のC-130H輸送機に更新されたため、1980年代後半からC-1の運用は入間基地と美保基地の2か所になります。2000年代になると、C-1の老朽化や性能不足から、後継機の開発が本格的に始まり、新たな国産輸送機C-2が登場したことで、2010年代後半に美保基地のC-1C-2へ置き換えられました。そのため、2020年7月現在ではC-1の運用は入間基地のみとなっています。

一応、岐阜基地でも飛行試験機(フライングテストベッド)として、C-1の試作初号機が飛んでいます。しかし、あくまでも各種装備品の試験用であるため、外観は銀色塗装で機首には細長い計測プローブが付くなど量産機とは異なっています。

このようななか、2020年3月18日鳥取県美保基地にC-2輸送機の量産9号機が配備されたことが報じられました。C-2輸送機は2018年度に防衛省財務省の合意によって、調達数が22機と決まっています。試作機2機と合わせて約半数が、すでに航空自衛隊に引き渡された計算になるのです。

他方で、2020年6月に防衛省が公開した「2020年度版航空自衛隊の概要」では、2020年度から入間基地にもC-2輸送機の配備が始まることが記されています。

そうなると、既存のC-1輸送機の運用も近い将来終わるといえるでしょう。約30機導入されたC-1ですが、すでに現役機は約10機にまで減っています。

C-1の展示は山陰のみ 今後は増えるか

C-2輸送機は2016年から運用を開始し、4年ほどで1個飛行隊分の機数がそろったことになります。現在のペースのまま調達が続いた場合、2025年ごろには入間基地もC-1からC-2に完全に切り替わることが予想されます。

調達ペースはどうなるかわかりませんが、初の国産大型ジェット機であるC-1が元気に空を飛ぶ姿を見るのも、そう長くないといえるでしょう。

なお2020年7月時点において、C-1の保存展示機は鳥取県の美保基地に1機だけです。しかし、ここは基地内なので、見るのは基本的にフェンス越しになります。日本の航空機開発技術の底上げに貢献したC-1なので、YS-11旅客機のように市井の博物館などで保存展示してもいいかもしれません。

ちなみに、C-1をベースに4発エンジン機とした試験機「飛鳥」は、岐阜基地に隣接する岐阜かかみがはら航空宇宙博物館に保存展示されています。

航空自衛隊入間基地に所在する第402飛行隊のC-1輸送機(柘植優介撮影)。