【J番記者コラム】大幅なターンオーバーを実施、開幕4試合でフルタイム出場選手はゼロ

 開幕から1勝1分2敗と、前年度王者の横浜F・マリノスが今ひとつ波に乗れていない。

 12日に行われたFC東京との一戦では、この試合がJ1通算100試合目となったFW遠藤渓太の今季初ゴールで先制に成功。しかし、その後はFC東京のFW永井謙佑やFWディエゴ・オリヴェイラのスピードを生かした攻撃に屈し、3失点で1-3と逆転負けを喫した。

 それでもアンジェ・ポステコグルー監督は「いいゲームができたと思うし、続けてやっていくことが大事。このサッカーを続けることで結果はついてくる」と前向きに総括した。さらに1勝1分1敗で終えたリーグ戦再開後の3連戦についても「この3試合は全体的にいいゲームができている。みんなを使いながら自分たちのサッカーができている」と手応えを明かした。

 振り返ると、この3試合は多くの選手を起用してターンオーバーしながら戦っていた。

 再開初戦の浦和レッズ戦(0-0)では、開幕戦のガンバ大阪戦(1-2)から先発を6人入れ替えた。右手骨折で戦線離脱しているGK朴一圭をはじめ、負傷による出入りこそあったものの、この中断期間中に復帰したMF天野純や新加入のDF小池龍太が先発し、反対に昨季の得点王であるMFマルコス・ジュニオールがベンチスタートという斬新な組み合わせで臨んだ。

 続く湘南戦(3-2)では浦和戦から5人をメンバーチェンジ。運動量が多く負担の大きい両サイドバックを入れ替え、3トップ中央にはFWエジガル・ジュニオを起用した。その試合では後半途中の3枚替えが奏功し、途中出場の天野やMF水沼宏太、FWオナイウ阿道が結果を残して逆転勝利を手にする。

 そして直近のFC東京戦は、湘南戦から今度は先発を7人替える策に打って出た。主将のMF喜田拓也や昨季のMVP&得点王のFW仲川輝人がベンチに座る布陣は、これから過酷さを増していく過密日程を戦うための、選手層の厚さを示したとも言える。

 開幕から4試合を消化し、横浜FMには早くもフルタイム出場の選手がいなくなった。4試合連続で先発したのもMF扇原貴宏ただ1人だ。優勝メンバーであろうと、個人タイトルを獲得した選手であろうと、特別扱いはしない。「11人の選手だけでなく、今シーズンは特に全員を必要としている」と話す指揮官は、選手たちのプレータイムを均等に分けることでその言葉を具現化した。

8月中旬以降に公式戦15連戦…戦力の底上げは必須

 今後、15年ぶりの優勝を成し遂げた昨季のメンバーが重要な役割を担うのは間違いないが、その面々だけでJ1リーグ連覇を達成できるはずがない。さらにAFCチャンピオンズリーグが10月後半から11月前半にかけて集中開催されることが決まり、8月中旬以降は中2~3日での公式戦15連戦(ルヴァンカップ準々決勝1試合を含む)が確定している。

 こうして考えていくと、今はまだギアをトップに上げる必要がない。4カ月以上も公式戦から遠ざかっていたコンディションを鑑みても、目の前の試合に勝利することを目指しつつも負傷のリスクを軽減しなければならなかった。同時に多くの選手をピッチに送り込むことで、実戦を通してチーム作りができる貴重な機会だったのかもしれない。

 今週末の鹿島アントラーズ戦からは、再び中3日での3連戦が組まれている。「選手たちをしっかり守って、怪我なくやっていきたい」と語ったポステコグルー監督は、ここでもターンオーバーを活用しながら戦っていくのではないか。もちろん、3人から5人に増えた交代枠もポジティブに作用するだろう。

 目先の結果だけを追い求めるならば、勢いと強さが同居した昨季終盤のメンバーを中心に編成すればいい。それは難しいことではなく、目に見える結果を残したのだから異論反論も出ないはず。ただし、中長期的な視野を持った時の施策やマネジメントは別問題だ。

「自分たちのサッカーを続けることが一番大事」

 リップサービスする気など毛頭ない指揮官はそう繰り返す。この大前提を最後まで貫くために、今はその時々でベストの11人を選んでいく。(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)

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