photo by Haya_BS via Flickr (CC BY-SA 2.0)

 新型コロナで企業の利益構造は大きく変わった。逆境にも強い企業の決算書にはどんな特徴があるのか。決算書を読めばアフターコロナにも負けない株が見つかる!

◆楽しく財務3表が理解できる「#会計クイズ」が話題に
 コロナ禍で株価は暴落。株のバーゲンセールに乗り遅れまいとネット証券口座の開設数は急増した。2月中旬には2万4000円近くだった日経平均は3月には1万6000円台まで下がったが、現在2万2000円台に回復。

 しかし、冷え込む実体経済と乖離した株価が今後どうなるのか楽観視はできない。またアフターコロナにおいては、企業のビジネスモデルが「新しい生活様式」に適応しているか見定める必要もあるだろう。

 それには決算書の財務3表(損益計算書貸借対照表、キャッシュフロー)が手がかりとなる。初心者にはハードルが高そうだが、楽しく財務3表が理解できると会計クイズが話題だ。

◆決算書から[アフターコロナ勝ち組銘柄]を探せ!

 早速、上の会計クイズで、会社の経営成績表である損益計算書から各企業のビジネスモデルを考えてみたい。お馴染みのカフェチェーン店3社のなかから、コメダHDを選べるだろうか。発案者の「大手町のランダムウォーカー」氏は「謎解きに似た楽しさを感じてほしい」とアドバイスを送る。

「上場企業の一般的な飲食店の原価率は4~5割が標準的です。③はかなり優秀ですね。販管費は原価率との兼ね合いですが、4~6割程度で営業利益は数パーセント。それを踏まえると、①は販管費が小さすぎますし、③は販管費が大きすぎますよね。コーヒー1杯の値段は高い順に、ルノアール、コメダHD、ドトール。高級店のルノアールは店内の席と席の間隔は広く、くつろげる環境を提供しています。すると回転率は下がり、店舗管理費用や従業員の給料など販管費の割合は相対的に原価よりも高くなりやすい。仮に③をルノアールとすれば、コメダHDは①と②のどちらでしょうか。ヒントコメダHDのフランチャイズ率は95%ということ。フランチャイズビジネスモデルを考えれば正解に近づけます」

 さて、あなたは正解にどこまで近づけただろうか? 大手町のランダムウォーカー氏からのヒントは「販売先の違い」だという。よく考えて、次のページの回答編を見てほしい。

コメダHDの損益決算書はこれ!

「答えは①がコメダHDです。ルノアールやドトールが一般消費者を対象にした喫茶店ビジネスであるのに対して、コメダHDはフランチャイズである珈琲所コメダ珈琲店へのコーヒー豆などの卸売りが売上高の7割近くを占めています。フランチャイズ出店が中心で、自社でほとんど店舗を保有していないため、販管費が少ないが正しいですね。販管費の中心は人件費とフランチャイズコーヒー豆などを配送するための運賃です。このクイズ損益計算書から企業の販売先を特定することがテーマでした。消費者として利用しているだけでは見えてこないビジネスモデルの違いも決算書からは見えてきます」

コロナの影響が決算書に表れるのはこれから!
 コロナの影響が決算書にはっきり表れるのは、これから先になる。しかし過去の決算書からも事前に危機を察知できる。「まず注意すべきは実際の現金の流れを把握できるキャッシュフロー」とファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は話す。

損益計算書を見れば黒字でも、キャッシュフローフリーキャッシュフロー)の赤字が続けば黄色信号です。5月に倒産したアパレル大手のレナウンは、その状態に似ていたので、自由に使える手元資金は残らなかった。コロナ禍のさなかに倒産したため“コロナ倒産”と思われていますが、キャッシュフローを分析していれば、もっと早くから倒産の兆候は摑めました」

 そして予測が難しい相場では、貸借対照表バランスシート)から財務内容が健在な企業を探すのも一つの手だ。

「不景気でも株価が下がりにくく、回復時には戻りが早い企業には、共通点があります。貸借対照表の純資産と流動資産が大きく、有利子負債が少ない堅実な企業で、例えば任天堂やキーエンス、ワークマン、オービックなど。危機を乗り切る体力があり、景気が低迷していてもビジネスモデルの転換やM&Aが模索できます。これらは旧来の日本型経営で、コロナ前は海外からは投資や株主還元に消極的だと批判されていました。しかし、今は危機に強い日本型経営がかえって海外で見直されています」(深野氏)

◆決算書を1期だけ見ての早合点にも注意
 ただし、決算書を1期だけ見て、投資先を判断するのは危ないという。

 特に今期の決算書はコロナ禍の異常値が反映されるため気をつけたい。コロナ特需を受けただけの勝ち組が今後も伸びるとは限らないからだ。

アフターコロナは短期的なリバンド狙いの投資ではなく、感染第2波に備えつつ長期的な視点に立たなければなりません。投資先を選ぶキーワードは『連続性』です。コロナ禍でも増収増益が途切れなかった会社は、これからも強さを発揮するでしょう。例えば33期増収増益のニトリや工具通販のモノタロウ、埼玉に本社があるスーパーマーケットヤオコーが挙げられます」

 さらに15期以上の増収増益であれば、リーマンショック東日本大震災をくぐり抜けてきたため、アフターコロナの予測できない事態にも柔軟に対応できる可能性が高いと深野氏は太鼓判を押す。

「’20年3月期決算でヤオコーは31期連続の増収増益を達成し、一介の地方スーパーマーケットの時価総額が、大手百貨店の三越伊勢丹を逆転しました。これには市場関係者も驚いています。ほかにドラッグストアのツルハHD、関東を中心にスーパーマーケットを展開するベルク、売掛債権の保証サービスなどを提供するイー・ギャランティなど、増収増益が続く企業はまだまだあります」

 下表のようにヤオコーは派手さはないが、一歩ずつ着実に業績を伸ばしている。決算書を「連続性」で読み解けば、アフターコロナキラリと輝く意外な優良銘柄を発掘できるかもしれない。

着実に業績を伸ばしている地方スーパーマーケットヤオコー。派手さがないので、見落としがちだが長期保有に適した銘柄だ

【大手町のランダムウォーカー氏】
Funda代表取締役。毎週日曜日21時よりTwitterで会計クイズを出題している。3月に発売した著書『会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方』(KADOKAWA)が会計本では異例の大ヒット

【深野康彦氏】
AFP、1級ファイナンシャルプランニング技能士。3年間のクレジット会社勤務を経て独立系FP会社に入社。その後、独立し、現在は、ファイナンシャルリサーチ代表を務める

<取材・文/週刊SPA!編集部>

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