栗原氏が昨季トッテナム戦でファン・ダイクが見せた守備対応を絶賛 「見れば見るほど高度な守備」

 リバプールは昨季に14年ぶりのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)優勝を達成し、今季は30年ぶりのプレミアリーグ制覇を果たしている。文字どおり“黄金期”に突入しているが、その礎を築いているのが。ディフェンスリーダーを担うオランダ代表DFフィルジル・ファン・ダイクだ。

 2018年にリバプールへ加入したファン・ダイクは、すぐさまディフェンスリーダーとしての座を確立。昨季はプレミア年間最優秀選手にも輝き、バロンドールバルセロナアルゼンチン代表FWリオネル・メッシに次ぐ2位に入賞している。世界最高のDFとして名を馳せるシーズンとなった。

 そんなファン・ダイクがトップクラスの実力を披露した象徴的な場面の一つに、昨季リーグ第32節トッテナム戦(2-1)のワンシーンが挙げられる。試合終了間際に1対2の大ピンチを迎えたが、その窮地を打開した守備対応について、昨季限りで現役を引退した元日本代表DF栗原勇蔵氏が「Football ZONE Web」で解説している。

 1-1で迎えた後半40分、前がかりになったリバプールは、敵陣でボールを失うと、トッテナムに素早いカウンターを仕掛けられ、FWソン・フンミンとMFムサ・シソコの2人に抜け出されてしまう。自陣に構えていたのはファン・ダイクのみで、1対2という絶体絶命の局面に直面した。

 しかし、ここでファン・ダイクが見事な対応を見せる。左サイドをドリブルでボールを持ち運ぶシソコと、右サイドのスペースに向かって走り込むソン・フンミンの間にポジションを取り、パスコースを切りながらも完全にフリーにさせない距離感でシソコを縦へと前進させる。

 判断に迷ったシソコが左足に持ち替えてシュートモーションに入った瞬間、ファン・ダイクは爆発的なスピードで詰めて足を伸ばし、圧力を感じたシソコのシュートは大きく枠を逸れることになった。的確な対応を見せたファン・ダイクだが、栗原氏はこのワンシーンに「見れば見るほど高度な守備ですね、これ」と舌を巻いている。

ファン・ダイクの“確率を低下させていく守備” 「瞬間的な場面で可能性を下げている」

「瞬間的な場面で可能性を下げている。左に持ち替えた瞬間に飛び込んでいる。ここまで選択肢を限定できた時点で、ファン・ダイクとしてはできることはやっている。最後のアタックもかなりの圧力がかかっているので、相手も急いで蹴ってしまって枠にすら飛ばなかった。シュート打つ側の視野には間違いなく入っていたはず。もう一歩でもソン・フンミン側に近ければ、シソコに右足でどんなコースにも蹴られていた」

 失点濃厚の局面、ファン・ダイクハーフコートで残された猶予のなか、着実に相手の選択肢を狭めるプレーを見せた。ソン・フンミンにパスを出されない絶妙な間合いを取り、シソコにシュートを打たせるよう仕向けた。そのうえで、利き足の右足では打ちにくい距離感を保ち、最終的には “シソコの左足”という最もゴールを決められる可能性の低い選択肢まで追い込むことができたと説明している。

「このドリブルしているシソコ自身がおそらく『あのファン・ダイクを1対1で抜けるはずはない』と潜在的に思っている。なので、心情的にはソン・フンミンに出したくて仕方がなかったはず。だから、どんどん判断が遅れていった」。ファン・ダイクが窮地で示したこの駆け引きこそ、世界最高たる所以と言えるのかもしれない。(Football ZONE web編集部・城福達也 / Tatsuya Jofuku)

リバプールDFファン・ダイク(左)が昨季の対トッテナム戦で見せた守備対応を栗原氏が絶賛【写真:Getty Images】