宇宙人が発見できない理由


 宇宙とは、もはや想像不能なほどに果てしなく広がる空間だ。宇宙旅行をしたい者の目の前には、そのための空間がどこまでも続いている。

 だが地球周辺の軌道宇宙については、その限りではないようだ。それというのも、「ケスラー・シンドローム」と呼ばれる危険な現象があるからだ。

 ケスラー・シンドロームという宇宙ゴミの連鎖増殖が地球上を覆いつくしている為、宇宙人を見つけることに支障をきたしているという。

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宇宙ゴミの連鎖的な衝突で破片が増殖「ケスラー・シンドローム」

 ケスラー・シンドロームとは、1978年NASAドナルド・J・ケスラーが提唱した次のような現象だ。

 地球の軌道に滞在する人工衛星が増えれば、それらが衝突する確率も上がる。万が一、人工衛星の衝突が起きれば、その破片(デブリ)が軌道にバラまかれることになる。

 それは秒速数十キロでぶっ飛ぶミサイルの群れのようなもので、そのために衝突の確率はさらに上がる。

 やがて軌道宇宙におけるデブリの密度が臨界点を超えたとき、衝突が連鎖的に生じ、デブリを自己増殖させていく。

 一度連鎖的な衝突が起きてしまえば、数十年に渡ってデブリは指数関数的に増え、ついには地球周囲にデブリの膜が形成される。それは進入したあらゆる物体を破壊する危険な死のゾーンだ。

スペースデブリ

iStock

すでに現実化している危機


この状況は、2013年の映画『ゼロ・グラビティ』で描かれている。しかしフィクションの世界だけでなく、ケスラーによれば、現実に始まっているという。

 たとえば、2009年に起きた人工衛星の衝突事故を受けて、彼はGuardian誌で「連鎖は今起きています」と述べている。

 米企業が所有するイリジウム33号と露軍のコスモス2251号が衝突したこの事故では、およそ千個のデブリが生じ、今後1万年に渡って地球を周回し続けると考えられている。

 もしケスラーの予言するシナリオが今後数十年で現実になってしまった場合、それは現代社会に暗い影を落とすだろう。

 デブリによって出現した死のゾーンのおかげで人工衛星を飛ばせなくなれば、通信や天気予報など、現代社会を支えるさまざまなシステムが機能を停止してしまう。


映画『ゼロ・グラビティ』予告5

それがフェルミのパラドックの答えなのか?

 だが、はたして人工衛星の打ち上げが事実上不可能になってしまうほど、デブリの膜が大きくかつ高密度になることは本当にあるのだろうか?

 現時点において、デブリフィールドを通過する際の危険性は、その中にある人工衛星に比べ、それほど大きくはないように思える。ケスラー自身、「道路の横断は、そのど真ん中で暮らすよりずっと安全でしょう」と述べている。

 しかし、どこかの時点でもっと極端な状況になり、惑星の住人が宇宙の”囚われ人”になってしまうことなどあり得るのだろうか? あるとすれば、宇宙人が見つからない理由はそれなのかもしれない。

 かつて物理学者のエンリコ・フェルミは、宇宙の広さや年齢から考えれば宇宙人がいてもおかしくないはずなのに一向に見つからない状況を不思議に思い、「彼らはどこにいるんだ?」と問いを発した(フェルミのパラドックス)。

 惑星に囚われることになる人類の立場にしてみれば、その状況を作り出せるほど高度な文明ならば、解決策も考案できると期待したいところだ。さしあたっては、フェルミのパラドックスの答えの一候補として、ケスラー・シンドロームを頭の片隅においておこう。

References:Prison Planets: Could the Kessler Syndrome Explain Why We Haven't Heard from Aliens? - The Daily Grail/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52292673.html
 

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