厚生労働省が2019年12月に発表した「令和元年(2019)人口動態統計の年間推計」において、日本人の国内出生率は86万4千人となり、初めて90万人を下回る結果となりました。前年比で5.92%減という急激な落ち込みに少子化問題の深刻さが懸念されています。

結婚して子どもを持つことが当たり前の選択肢とはいえなくなった現代において、ここ数年「子連れ様」というワードを耳にする機会が増えました。「子どもを連れているのだから優遇されて当然」という考えがすけて見えるような、過剰な配慮を周囲に求める親。さすがに見逃すことができない子連れ様が引き起こしたトラブル事例に注目しました。

出生数が初の90万人割れ。歯止めのかからない日本の少子化 

先に述べたとおり、2019年の出生数は統計を開始した1899年以来はじめて90万人を割る結果となりました。厚生労働省発表の2018年の合計特殊出生率(一人の女性がその年齢別出生率で一生の間に生むとしたときの子どもの数)は1.42と少子化に歯止めがかからない状態が続いています。

内閣府が掲げる「ストップ少子化・地方元気戦略」では、子どもを望む夫婦の希望がすべてかなった場合の出生率を「希望出生率」と定義しています。「希望出生率1.8」を目標値として待機児童対策や働き方改革などを推進しているものの、現実の数値との間には大きな開きがあり、目標達成は困難な状況にあります。今や結婚したら子どもを持つのが当たり前といった概念は薄れ、共働きで子どもを持たない選択をしたDINKs家庭に代表されるように家族の在り方の多様化が進んでいるといえるでしょう。

「LIMO[リーモ]の今日の記事へ」

子連れなら何でも許される?周囲を巻き込む子連れ様の出現 

「保育園の運動会が近隣住民からの騒音クレームにより予定していた会場で開催できなくなった」、「子連れで電車に乗った際に、泣きだした我が子に向けて舌打ちをされた」など、子育て中の親の中には少子化が進む今の日本で子どもを産み育てる難しさを感じている人も多いようです。

しかし、その一方で子どもを連れているから優先されるべき、大目にみてもらって当然であるといわんばかりの、親のルール違反が周囲の反感を買っているケースも見受けられます。いわゆる「子連れ様」と呼ばれる親たちが引き起こした、実際にあったトラブル事例をみていきましょう。

見逃せない!子を持つ親のルール違反・実例3選

スーパーで買い物中のトラブル

買い物をしていたら後ろから思いっきカートを足にぶつけられました。驚いて振り向いたところ、まだ5歳くらいで前方も確認できない背丈の子どもにカートを操作させ、他人にぶつけても謝るどころか我関せずといった態度の母親。ぶつかった箇所にできた青あざは1週間ほど消えませんでした。幸いあざ程度で済んだからよかったものの、骨折でもしていたらどうするつもりだったのでしょう。」

飲食店にまつわるトラブル

「最近子連れ歓迎の居酒屋が増えていますが、私の自宅はチャイルドコーナー併設をうたった居酒屋の裏にあります。週末の夜など、23時過ぎに店から出てきた酒に酔った親たちとその子どもたちの大きな話し声に非常に迷惑しています。車の往来も多いところなので、小さな子供の飛び出しも心配です。酔っぱらっている親は子どもを見ていないし、いつ事故が起きてもおかしくないと思っています。」

バスの中でのトラブル

「バスの中で子どもが靴を履いたまま、座席の上で飛び跳ねたりしていました。そのうち、子どもが足をバタバタさせて、隣にいる私にぶつかっていたけど、その状況が見えているのに一切知らんぷり 。避けるスペースがなかったためじっとガマンして蹴られっぱなしでいましたが、服は汚れてしまいました。注意したかったけど、見ていて知らんぷりするような親なので、何か言ったらこちらが気分を害しそうなのでやめました。」

少子化社会における子育て家庭の在り方とは

「子は国の宝」という言葉がありますが、子どもと一緒だからといってルール違反が許されるわけではありません。最近ではコンサートや居酒屋など子連れでも楽しめる場所が増えてきていますが、その一方で周りの人に迷惑をかけないよう利用する親のモラルも問われているのではないでしょうか。

子連れ様と呼ばれる親の存在は、きちんとルールを守って行動している子育て家庭まで厳しい目で見られる風潮を引き起こしかねません。多様化した家庭環境にある人々が快適に日々の暮らしを送れるよう、周囲の人々への配慮を怠らずに少子化社会に順応していきたいものですね。


【参照】
厚生労働省令和元年(2019)人口動態統計の年間推計
内閣府ストップ少子化・地方元気戦略