SCANDALの新曲「SPICE」は、モンスターストライク等で知られるミクシィXFLAGが制作するオリジナルショートアニメーション「XPICE」の主題歌。とてもパワフルなバンドサウンドで、作曲はギターのMAMI、作詞はドラムのRINAが手掛けている。

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RINA(Dr・Vo)「XPICEのアニメチームに、昔からSCANDALの曲を聴いてくれてる方がいて、それでオファーをくださったんです。アニメのラフ画を見せてもらって、作品のコンセプトや楽曲への具体的なオーダーが話し合われる会議にも参加させてもらって。主役のヒーローのふたりがお互いに自分の能力に満足してなくて、コンプレックスを抱きながら戦ってる、ヒーローなのに無敵じゃないってところにすごく共感したんです。そのテーマを軸に歌詞を書いていきました」

MAMI(G・Vo)「日本のアニメーションの技術を世界に発信したいって気持ちがチームにあって、私たちも海外でライブさせてもらってるのでその姿勢にも共感しました。自分たちの前のアルバムの『Kiss from the darkness』に入ってる『A.M.D.K. J.』みたいな曲調が良いってリクエストしてもらったので、勢いのある曲調やバンド感は大切にしながらも、これまでチャレンジしたことなかった引き算もしながら作っていって。あと、HARUNAのボーカルにエフェクトをかけたり、楽器ではないところに遊びがあるのもチャレンジでしたね」

『XPICE』のテーマは「勇気と理解」、そして「共に戦うこと」。バンドという運命共同体で、歩みを止めることなく作品を作り続けているSCANDALの道のりにも当てはまる。

RINA「まだまだ男社会と言えるバンドシーンの中で、どうやって自分たちなりの表現で生き抜いていくかっていうことは自分たちのテーマでもあります。作品の登場人物たちが自分たちなりにトライし続けるところにも共感できたし、大きなテーマでいうと多様性みたいなところにも繋がっていくと思いました。今はいろいろな知識を知れる機会が増えて、理解が広まっていってる時代だと思うんですけど、やっぱりまだまだ細かく知って行くべきところがある気がしていて。ジェンダーのことや、人種のこと、一人ひとりの生き方についても、考えるきっかけになった。今回はあえてすごくストレートな歌詞を書いたんですけど、アニメのオファーがなかったらここまで吹っ切れなかったかもって思いますね。そこからコロナ禍になって、さらに普遍的でまっすぐな曲を作り続けたいって気持ちが強くました」

 サビの、“誰かを想って こぼれ落ちて行く 涙は最高のスパイス”というフレーズはとくに力強く爽快だ。

RINA「『Kiss from the darkness』は、自分たちの弱みもちゃんと音楽に表現できたらいいなとか、ネガティブなフレーズも表現できたらいいなってところがひとつ課題としてあったんですけど、それを一枚のアルバムにできてからの今回の『SPICE』はすごく繋がってる気がして。キャリアと年齢を重ねてきて、ステージ上だけで成立する音楽に自分たちが違和感を感じるようになってきたというか。そんなにメンタルを変身させずにステージに上がれる楽曲がこれから必要だなって思いましたね」

 プライベートレーベル『her』を立ち上げて初めて作ったアルバムが『Kiss from the darknesss』。そこで自らの素を出した経験はどんな影響を与えたのだろう。

MAMI「聴いてくれた人たちがSCANDALを身近に感じてくれたことが一番嬉しかった。今まで隠そうと思ってたわけじゃないんですけど、やっぱり強くいなきゃいけない、いつも笑顔で太陽みたいなSCANDALでいなきゃいけないんだって気持ちがあった。みんなと同じ感情を持つ生き物なんだけどなって思ってたので、それが自然と音楽にもなっていったアルバムでした。今までライブの予習復習として聴いてた感じの子たちが多かったんですけど、もうちょっと日常のBGMにしてくれるようになったのもすごく大きかったです」

TOMOMI(B・Vo)「あのアルバムでアコースティックに挑戦してみて、難しい挑戦でしたけど、今までのSCANDALの曲たちとそんなに差を付けずに違和感なく聴いてくれてた感じがしたのは嬉しかったですね。あとアートワークも最近は自分たちが映ってなくて、好きなクリエイターの人たちとコラボしたりしてるんですけど、そういう意味でもすごくナチュラルに受け入れてくれてたり」

■ 言葉にしなくても、みんながお互いにリスペクトがあって。

結成から14年。「勇気と理解」「共に戦うこと」は、バンドを持続させることにおいても大切な要素だ。

RINA「4人ともが、性格も得意な部分も全く違うんですよね。それぞれの良いところと弱みを認め合ってて許し合ってる。何回でもこの人たちのこと許せるなって思える初めての人たちなんですよ。だからずっと一緒にいられるし、この4人じゃないと音楽をやることが成立しない。極端なことを言うと、この先SCANDALを続けるかやめるかの二択だと思ってるんです。誰かが脱退して休止したり別のメンバーを入れるっていう選択肢がないバンド(笑)」

HARUNA(Vo・G)「続けていくことも勇気だなって思いますし、一年一年モードが違う中で、それをちゃんと4人で共有し合えて理解し合えていられることは奇跡に近いなって思う。スタッフも含めて、そういうメンバーと出会えて良かったなって思う日々ですね。最近できることが制限されてしまってる中で、どういうことができるか4人で考えて、『Living in the city』をすぐに配信したり、いろんなことに対応できる勇気をちゃんと持ってることがすごく大事だなって」

MAMI「言葉にしなくても、みんながお互いにリスペクトがあって。もしひとりのアーティストだったら発信するのが怖いことだったりしても、4人集まってSCANDALって1個の個体になるとチャレンジ精神も湧いてくるし、そこに対しての理解もみんなあるから成り立っているって最近は特に思いますね。『her』を立ち上げたこともそうですけど、作る楽曲や歌詞に関しても責任を持つことを恐れなくなった。1から自分たちで曲を作ろうってなってから、だんだん自分たちの楽曲にもっと責任を持つことが自然とできてきてる」

TOMOMI「コロナ禍になって誰にも会わなくなって、メンバーにも三カ月くらい会ってなかったんですけど、自分の中ですごく大切なものが浮き彫りになった感覚があったんです。SCANDALって自分にとって一番大きな軸なんだなってのは改めて思いましたね。毎日メンバーに会いたいなって思ってたし、今何してるのかな、話したいなとか毎日考えたりしてて。考えたら人生の半分くらい一緒にいるんですよね。でも全く飽きないんです(笑)。自分では意識してなかったけど、勇気と理解っていうのは知らない間に芽生えているものだったって思います。続けることって難しいけど、相性さえ良ければめちゃくちゃ簡単で。相性が良いメンバーが集まることが一番難しいことだと思うんですよ。それは当時私たちが通ってたダンススクールの先生が『この4人で』って選んでくれたのがグッジョブだっただけで、私たちはそんなに難しいことはしてないんですよ (笑)」

RINA「『もうちょっといけるんだけどな』ってずっと思ってるんですよね。残してきた結果にもそうだし、作る音楽に対してもそうだし。その場その場では納得して出してるんですけど、これができるんだったらもうちょっといけるんじゃないかなってずっと思ってる気がしてます。そういう熱が消えない限りは続けて行けるんじゃないかなって。でもやっぱガールズバンドで15年続けられたっていうのは偉いと思います(笑)」

結成14周年記念日である8月21日には一夜限りの生配信ライブを行う。中止になってしまった3月からのツアーのセットリストだけでなく、衣装、舞台セット、映像、照明なども再現されるという。

HARUNA「8月21日は毎年いろんなことをやってるので、いろいろ計画はしてたんです。でもまず3月からのツアーが全部中止になってしまって。すごく自信を持って届けたアルバムだったし、ツアーのゲネプロも全部終わっていて、あとは見せるだけってところまで行ってたので、やっぱりそのライブをどうしてもお客さんたちに届けたかったんです。それでスタッフの協力もあって、配信ライブを1日できることになったんですね」

MAMI「今までの配信ライブとは違うアングルが楽しめると思う。いつもだったら客席を気にしてカメラが入れないところまで入れると思うんで。オンラインなのでみんなが最前列ですし、自分たちでは∞キャパって言ってます(笑)」(ザテレビジョン・取材・文=小松香里)

新曲「SPICE」を配信リリースするSCANDAL