日本の住宅は木を使った木造をメインに、コンクリートを使ったRC造、鉄を使った鉄骨造などでつくられています。
他にも複数の素材を組み合わせた混構造などもありますが、ここでは代表的な構造である、木造、RC造、鉄骨造のメリット、デメリットを紹介します。

構造が違うことで、それぞれが実現できる空間の違いや仕上がりの質感の違いが表れます。
それぞれの特性を知って、自分たちの建てたい家を考えてみてください。

「住宅の構造・工法」基礎知識。木造、RC造、鉄骨造の利点と欠点は?

木造住宅は間取りの自由度も高く、コスパがいい

六角形の木造住宅

設計/平真知子一級建築士事務所

日本で最も一般的な住宅建材は木ですね。
木を建物の建材として用いた歴史は長く、その技術も時代ともに発達してきました。
現代でも、一戸建て住宅の9割程度が木造建築です(国土交通省平成29年度住宅着工統計)。
RC造や鉄骨造と比べると、比較的安価に建てられ、設計の自由度も高いのが大きな特徴です。
一方強度が弱く、きちんとメンテナンスし続けないと耐久性に問題が。

ここでは木造住宅のメリット、デメリットをみてみましょう。

木造住宅のメリット

  • 木材は流通量が多く、工事費も比較的安価に抑えられる。
  • 木は軽い素材なので、施工がしやすい。
  • 構造上の問題がなければ、細かい部分の意匠性や設計の自由度は高い。
  • 枠組壁工法(2×4)ならば、高気密化、高断熱化をしやすい。
  • メンテナンスを怠らなければ耐久性も伸びる。

木造住宅のデメリット

  • 使い方の「適材適所」を守らなかったり、換気や手入れを怠ったりすると木材が腐り、シロアリが発生する。
  • RC造や鉄骨造に比べ、強度が低い。
  • 定期的に屋根や外壁などをメンテナンスする必要がある。
  • 施工者の技術によって、仕上がりにばらつきが生じやすい。
  • 火災が起こったとき、燃えやすい。
  • 耐力壁の取り方次第では、大空間や大開口を取りにくい場合がある。

木造軸組み工法のイラスト

木造の代表的な構造は木造軸組工法。柱・梁を用いた日本在来の伝統工法から続いている工法です。

木造枠組壁工法のイラスト

木造枠組壁工法は西欧から伝わった工法。2×4材を用いて壁をつくり、その壁材を構造材としています。

RC造は耐久性、耐震性、耐火性が高い。しかし高コストで地盤に制約も

TRCでできた事務所併用住宅

設計/アトリエA5

RC造とは鉄筋コンクリート(Reinforced Concrete)構造のことで、柱・梁・壁・床・天井など家の構造部分が鉄筋コンクリートでできた建築物のことをいいます。

RC造は、地震などで加わる外力に抵抗したり、分散させたりする構造になっているので、耐震強度・耐久性ともに優れています。地震での倒壊が少なく、コンクリートは不燃材なので火災にも強いのが大きな特徴。
また、設計の自由度が高く、木造では不可能な柱のない大空間も実現が可能です。

ただし、コスト面では木造よりはるかに高くなり、しかも重量が重くなるため、それを支える強固な地盤が必要となります。

RC造のメリット

  • 耐震性、耐久性、耐火性が抜群に高く、地震や火災に強い。
  • 設計の自由度が高く、大きな空間や湾曲した壁などもつくれる。

RC造のデメリット

  • 施工に手間と時間がかかり、コストが高い。
  • コンクリートは蓄熱しやすい性質があるので、断熱計画に注意する必要がある。
  • 地面にかかる重量が大きいため、支えるための強固な地盤を必要とする。

鉄筋コンクリート造のイラスト

RC造には柱と梁で荷重を受けるラーメン構造と、壁で荷重を受ける壁構造があります。
箱型の建物というイメージが強いですが、湾曲した壁や天井など、どんな形も実現可能です

鉄骨造は大空間も可能。大きな魅力は頑丈さ

鉄骨造の家のリノベーション

設計/ジャムズ

柱や梁に鉄を用いた構造を鉄骨造といいます。
木造軸組工法の柱と梁を、木から鉄に置き換えたものと考えると分かりやすいかもしれません。

鋼材の厚さが6㎜以上のものを用いた重量鉄骨造と、6㎜以下のものを用いた軽量鉄骨造の2種類に分けられます。
重量鉄骨造は主に高層建築やマンションなどの規模の大きな構造物に、軽量鉄骨造は一般住宅や店舗などに用いられます。

大きな特徴は、耐力壁を設けずに柱と梁だけで空間を構成できること。
このため大開口や柱のない大空間も可能です。

一方、木造よりはコストが高くつくことと、建物が重くなるため、木造より地盤改良にコストがかかります。
また、仕様によってはRC造より遮音性が落ちることがあります。

軽量鉄骨造のメリット

  • 柱のない大空間や壁一面の開口を設けられる。
  • 鉄はしなやかで粘りのある素材なので、耐震性も高い。
  • 工場で加工した鉄骨を搬入するので、現場での組み立てスピードが速い。

鉄骨造のデメリット

  • 建築資材としての鋼材が高いため、木造と比べると高コストになる。
  • 鉄は高熱で変形してしまうため、耐火性は弱め。

鉄骨造のイラスト

鉄骨造は上方向へ建物を伸ばすことが可能。木造よりも3階建てが実現しやすいという特徴も。

インテリアなどと違い、家の構造だけは建ててしまってからでは変更できません。
家の構造と特徴をよく知ることで、自分たちが建てたい家はどんな家なのかを十分に検討してください。

撮影/飯貝拓司(木造住宅)、大槻夏路(RC造住宅)、川辺明伸(鉄骨造住宅)
構造イラスト/板谷和佳子
※情報は「住まいの設計2020年6月号」取材時のものです。

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