試合勘、体力面で厳しいなと感じる場面が多く見られたと語るセルジオ越後氏
試合勘、体力面で厳しいなと感じる場面が多く見られたと語るセルジオ越後

約4ヵ月ぶりにJ1が再開した。調整が難しいなか迎えた初戦、僕は選手たちのコンディションに注目した。当然ながら多少のバラつきはあったものの、おおむねよく動けていたと思う。

ただ、久しぶりにサッカーができる喜びで張り切りすぎたのだろう。一本調子のサッカーで最初から飛ばし続け、最後は多くの選手がバテバテになっていたね。

かつて、FIFA国際サッカー連盟)のブラッター会長(当時)と話をしたときに、「Jリーグサッカーは忙しい。バスケットみたいだ」と言われたことがある。実際、Jリーグサッカーはタメが少なく、テンポが速いのが特徴。

例えば3-0でリードしていても、同じ調子で4点目を取りにいくとか、最初から最後まで同じようなサッカーをする。リードしているならボールを回して時間を使うとか、相手をイライラさせてゲームをコントロールするとか、そういうシーンはあまり見られない。だから、お互いに攻め合う激しいサッカーになる。

でも、今季の過密日程と暑さのなか、そのリズムで90分戦い続けるのは難しい。そのあたりをどう変化、適応させていくのかが今後のカギを握りそう。疲労もたまりやすいし、選手たちはケガに注意してほしいね。

そして、選手以上に心配なのが審判。試合勘、体力面で厳しいなと感じる場面が多く見られた。再開初戦でも"微妙な判定"が散見された。明らかなオフサイドを見逃したり、どう見てもPKなのに笛を吹かなかったり、あれでは選手もイライラする。鹿島や浦和は損をしてしまった。お客さんが入っていたら大ブーイングだよ。

ただ、審判にも同情すべき余地はある。前述したようにJリーグはテンポが速いから、審判の体力的な負担が大きい。しかも今季は交代枠が3人から5人に増え、後半に入ると元気な選手がどんどん入ってくる。今後の過密日程は審判にとっても大変だろうね。

今季から本格導入されたVARは審判員の確保が難しく、また作業室の「密」を回避するために再開後は中止になった。でも、こういう状況だからこそ、逆に絶対に必要だと思う。

再開後のポジティブな変化を挙げると、五輪世代(23歳以下)の若手がアピールしてくれたこと。

まずはJ1初ゴールを決めた横浜FCのFW一美(いちみ)。やわらかいタッチで一瞬にして抜け出し、最後は前に出てきたGKもフェイントでかわし、見事なゴールを決めた。昨季、J2で17点取っただけのことはある。体も大きいし、これからも期待したい。チームメイトのカズ(三浦知良)もうかうかしていられないだろう。

広島のMF森島とGK大迫もよかった。森島はこの暑さのなかで最後までペースが落ちなかった。スピードと相手に向かっていく姿勢があり、守備でもハードワークできる。ひとりで神戸をかき回していた。大迫はイニエスタのミドルシュート、ドウグラスのFKなど危ない場面でファインセーブを連発、存在感を示したね。

そのほかにも共に18歳でJデビューを果たした鹿島のFW染野、仙台のGK小畑(おばた)など面白い選手も出てきた。

今季は過密日程で、しかも5人交代、降格もない。ある意味、若手を発掘するには絶好のシーズン。選手たちはチャンスを逃さず、今後もどんどんアピールしてほしいね。

構成/渡辺達也

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