「裁判官は『女性器=わいせつ』という思い込みがあるのではないか」

自分の女性器の3Dデータを配ったとして、わいせつ電磁的記録頒布などの罪に問われた芸術家、ろくでなし子さん(本名:五十嵐恵)は7月16日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いて、このようにぼやいた。最高裁第1小法廷がこの日、ろくでなし子さん側の上告を棄却したことで、罰金40万円とした1審・2審の有罪判決が確定する。

最高裁の判決はこちら
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/579/089579_hanrei.pdf

●わいせつ物陳列罪では無罪になっていた

ろくでなし子さんは2013年から2014年にかけて、都内のアダルトショップで、自分の女性器をかたどった作品を展示した。さらに、その活動を支援した人たちに対して、自分の女性器を復元できる3Dデータを配布した。

ろくでなし子さんは2014年、わいせつ電磁的記録頒布とわいせつ物陳列の罪で逮捕・起訴された。裁判では、ろくでなし子さんの作品が「わいせつ」かどうかという点が争われた。

1審・2審は、女性器の3Dデータの配布については有罪(罰金40万円)としたが、女性器をかたどった作品を展示したことについては無罪としていた。

●「最高裁は、わいせつ性の判断から逃げた」

ろくでなし子さんは「女性器がなぜ卑わいなイメージを持っているのか疑問に思って、活動してきた。プロジェクトアートの一環として、データを提供したと主張していたが、最高裁では、一切考慮されなかった。『女性器だからわいせつだ』という従来の古臭い価値観から抜け出せない時代錯誤の判決だった」と語った。

主任弁護人をつとめた須見健矢弁護士は会見で「残念な結果となった。弁論が開かれない時点で、結論は見えていたが、もう少し中身のある判決をもらえると思っていた。中身のない判決だった。(1審・2審判で)わいせつ物陳列の無罪を勝ち取ることができたが、今日は残念な結果に終わってがっかりしている」と話した。

南和行弁護士は「犯罪か否かの基準は、自由を確定するところもある。ろくでなし子さんのように、作品をつくりたい、表現をしたい人にとって、なんでもかんでも犯罪になるんだとすると、萎縮させられることになる」と指摘した。

ろくでなし子さんの弁護団によると、3Dデータの印刷物は、火星や月の表面の拡大写真と変わらないようなものだという。山口貴士弁護士は「これを見て、性的興奮を覚える人間はいるのか。最高裁は、わいせつ性の判断から逃げたと考えている」と話していた。

ろくでなし子さん「古臭い価値観から抜け出せない時代錯誤の判決だ」 最高裁で上告棄却