コンピューターRPGの楽しみが一般的になったのは、1986年に登場したファミコン版の『ドラゴンクエスト』のおかげではないでしょうか。ドラゴンクエストは日本人にRPGがどのようなものかを教えてくれました。今回は、このドラゴンクエストの誕生に大きな影響を与えた2本のゲームについてご紹介します。

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■RPGはボードゲームとして始まった

RPG(ロール・プレイング・ゲーム)はもともと、ボードゲームとして楽しまれていたものでした。『ダンジョンズ&ドラゴンズ』は1974年に発売された世界初の(テーブルトーク)RPGです。

テーブルトークというのは、数人が集まって会話をしながら進めるといった意味です。ダンジョンズ&ドラゴンズは画期的な製品でしたが、その愛好者はマニアックな存在でした。しかし、RPGというジャンルは徐々に認知され、ファンが増えていきます。

RPGを、多人数が集まらなくても楽しめるよう、コンピューター上でプレーできるソフトにするという試みがなされます。折しも、パーソナルコンピューターの黎明(れいめい)期であり、そこにはホビー用のプラットフォームとして格好の『Apple][』がありました。

そして生まれたのが『ウィザードリィ』と『ウルティマ』です。

この2本は、ドラゴンクエストのみならず、後に続くコンピューターRPGの両親といっていいゲームなのです。

●……すべてのコンピューターRPGの元祖として、もう1本『Rogue』(ローグ)が挙げられることがあります。

■伝説の『ウィザードリィ』と『ウルティマ

Wizardry』(ウィザードリィ)は1981年にApple][用にSir-Techから発売されたゲームです。キャラクターを生成し、パーティーを組み、ダンジョンを探索するという、RPGの基本要素が盛り込まれたものでした。

黒一色、ダンジョンが線で表示されるという、今から見ると地味すぎるゲーム画面です。しかし、そこには、キャラクターの成長、冒険の楽しみというRPGの醍醐味があり、熱狂的なファンを生みました。

一方の『Ultima』(ウルティマ)の第1作は1981年に登場しました(これは正式リリースで、非公式には1980年9月2日に発表)。ウィザードリィと同じくApple用でした。

しかし、ストーリーは、大陸、城、迷宮を股に掛ける大冒険のRPGで、一つのダンジョンを攻略するウィザードリィとは対照的なものです。ウルティマはまた、2Dのフィールドをシンボライズされたキャラクターが移動するという表示方法を採用していました。これは後の多くの作品に使用されます。

ウルティマもまたウィザードリィ同様に熱狂的な支持を受けます。

当時は、ウィザードリィ派とウルティマ派が、コンピュータRPGの二大勢力だったのです。

●……Ultimaには、その前身となる『Akalabeth』というタイトルがあり、これは作者のリチャード・ギャリオットが個人で販売していたものをそのオリジナルとしています。Akalabethは1979年に登場しています。

■日本人好みのコンピューターRPG誕生!

ドラゴンクエストを構想した堀井雄二さんと中村光一さんは、この2本をうまく咀嚼し、日本人好みに仕立てるという素晴らしい仕事をされました。武器や防具の装備スタイルなどはウィザードリィからの引用ですし、フィールドを歩くスタイル、エンカウント制はウルティマからの引用です。

しかし、引用だけでは、ドラゴンクエストはこれほどのヒット作にはならなかったでしょう。堀井雄二さんの思い描いた「シナリオ、会話の独特のユーモア、世界観」。

鳥山明さんが描いた「モンスター、キャラクターのかわいらしさ」。すぎやまこういちさんの「音楽」。これらの他にも、盛り込まれたオリジナルのさまざまなアイデアが、日本産RPGを決定づけたと言っても過言ではないでしょう。

そして、今なお、ドラゴンクエストシリーズは日本を代表するRPGであり続けています。

(高橋モータース@dcp)

すべてのRPGの元になった2本のゲーム『ウィザードリィ』『ウルティマ』