わざとなのか、それとも道を知らないのか。メーターも上がるし、約束に間に合わない。タクシーの「遠回り」に苛立ったことのある人は多いことだろう。

フリー編集者のNさんは、東京の練馬区から隣の杉並区に出向く機会が頻繁にあったという。忙しときはタクシーを使うこともあり、片道2000円前後かかっていた。ところがある日、Nさんが拾ったタクシーはいつもと違う道を走りだしたかと思えば、迷路のような一方通行に引っかかって、同じところを何度もぐるぐると回るハメに陥ってしまった。

結局、予定の時刻よりも30分以上遅れて到着することになり、スケジュールが大きく狂ってしまった。このような場合、タクシーの遠回りで余計にかかった運賃は支払う必要があるのだろうか。また、遠回りしたおかげで遅刻した場合は、損害賠償も請求できるのか。岡田崇弁護士に聞いた。

●「不要な遠回り」で余分にかかった運賃は返してもらえる

タクシーに乗って、乗客が目的地を告げたとき、商法上の旅客運送契約(商法590条)が成立します。

そして、旅客運送契約の内容として、タクシー運転手には、乗客を安全かつ迅速・的確に目的地まで運送する義務があると解釈されます」

――すると、「遠回り」は基本的に許されない?

「そうですね。ただし、(1)渋滞や事故を避けるといった合理的な理由があった場合や、(2)通常のタクシー運転手が用いるルートと別のルートを通ることについて、運転手から事前に説明があり、客も承諾した場合などは、遠回りも許されます」

――運賃はどうなる?

「質問のような事例では、余計にかかってしまった運賃については、損害賠償として請求できるでしょう。

運転手と交渉して、余計にかかってしまった運賃を支払わないようにするか、一度支払った上で領収書を受領し、領収書記載のタクシー会社の連絡先に連絡を入れるとよいのではないでしょうか」

――遅刻の「損害」は、賠償してもらえる?

「遠回りしたおかげで遅刻したとしても、それによる損害は個別の事情によって左右されることから、タクシー運転手が予見するのは困難です。損害賠償請求をするのは難しいのではないでしょうか」

もし仕事の打ち合わせに遅刻したら、「タクシーのせいで……」という言い訳が通用するとは限らない。こんな「遠回りタクシー」に遭遇しないほうがいいに決まっている。そのためには、あらかじめ道を調べて指定したり、スマートフォンチェックしたりといった「自衛策」を講じたほうがよさそうだ。

弁護士ドットコム トピックス)

【取材協力弁護士
岡田 崇(おかだ・たかし弁護士
大阪弁護士会・消費者保護委員会委員(平成18年・19年度副委員長)、日本弁護士連合会・消費者問題対策委員会幹事、関西大学法科大学院実務家教員(消費者取引法)
事務所名:岡田崇法律事務所
事務所URLhttp://www.okadalaw.jp/

タクシーの「遠回り」のせいで遅刻してしまった・・・運転手に賠償請求できる?