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ダイハツ・アプローズ覚えているか?

text:Kouichi Kobuna(小鮒康一)

ダイハツのイメージといえば、軽自動車コンパクトカーに強いメーカーというイメージがあるだろう。

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先日デビューするや否や、月販目標台数の4.5倍もの受注を獲得したタフトや、安定した人気を誇るタントなどはダイハツを代表する軽自動車と言える。

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ダイハツ・アプローズ    ダイハツ

一方の普通車も5ナンバーサイズのコンパクトSUVとして大ヒット車種となったロッキーや、トールワゴンのトール、ベーシックカーのブーンとどれも1000cc未満のエンジンを搭載するリッターカーとなっており、OEM供給を受けるモデル以外はすべてコンパクトカーというラインナップだ。

しかし、過去にはもう少し大きなモデルもダイハツは生産していたことがあり、古くは1970年代に存在したシャルマンが知られるところ。

シャルマンは旧型のカローラプラットホームをベースとしてダイハツオリジナルの外装を乗せたモデルだ。

初代モデルは当時のクラス唯一となる4灯式ヘッドライトを採用するなど、上級感を売りとしたモデルだった。

そんなシャルマン1986年には2世代目の生産も終了し、しばらく空白だった同クラスに1989年に登場したのが今回ご紹介するアプローズである。

プラットホームも含めダイハツのオリジナルモデルとなったアプローズはどんなクルマだったのだろうか?

欧州でも通用するクルマとして登場

ダイハツとしては久しぶりに大衆車市場に送り込むこととなったアプローズは、ヨーロッパでも通用するクルマとして開発された意欲作。

エクステリアもどことなく輸入車風のデザインとなっていた。

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ダイハツ・アプローズ    ダイハツ

同車のコンセプトモデルとなった「MS-X90」が初披露されたのは89年のジュネーブショーだったと聞けば、その触れ込みもあながち嘘ではないということがおわかりいただけるだろう。

一見するとコンサバティブな4ドアセダンに見えるアプローズであるが、実はリアウィンドウもろとも大きく開くハッチバック車であり、開口部もバンパーレベルからという非常に使い勝手に優れたもの。

現在でもプリウスを筆頭に5ドアハッチバック車は珍しくなくなってきたが、ここまであからさまなノッチバックスタイルを持った車種はアプローズ以外に存在しない。

リアシートは人が座ることが前提の肉厚なものとなっているが、座面を引き起こして背もたれを倒せばフラットかつ広大な荷室スペースが現れるという点も、いかにも欧州で受けそうなポイント。

一説にはレーシングカートがそのまま積めるほどの広さと言われていた。

4輪独立式となるサスペンションには周波数感応式ショックアブソーバーが上級グレードにはおごられ、1.6Lエンジンは120psを発生する充分なもの。

これならヒット間違いなしと思われていたのだが……。

リコールによりネガティブイメージが

ダイハツ独自開発の大衆車として肝いりで開発されたアプローズは、使い勝手はもちろん欧州を見据えて煮詰められたサスペンションの完成度も高く、好評だった。

しかし、初期ロットの車両のオルタネーターとATミッションに不具合があったということで、登場から3か月という早いタイミングでリコールを届け出ることになった。

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ダイハツ・アプローズ

さらに同年11月にはブレーキ系統と燃料タンクの不具合も発見され再びリコールを届け出る。

この燃料タンクの不具合は、エア抜き穴の形状が不適切で給油時にガソリンが吹きこぼれる恐れがあるというものだった。

不運にもこれが原因となる火災が発生し、ガソリンスタンドのスタッフがやけどを負うという事故があり、これを一部報道機関がセンセーショナルに報道してしまったのだ。

その結果、「アプローズ=燃える欠陥車」という負のイメージが付きまとうことになり、マイナーチェンジを繰り返しながら2000年まで生産が続けられたものの、販売が上向くことは最後までなかった。

不具合発生時のダイハツの対応は非常に迅速で、リコール届け出後は一度も火災事故も発生しなかったにもかかわらず、報道がきっかけで正当な評価がなされなかった悲運の名車、それがアプローズというクルマなのである。


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