テレビドラマや3本の本編映画などが公開され、熱狂を生んだ「HiGH&LOW」(ハイロー)プロジェクトと、高橋ヒロシによる不良漫画の金字塔「クローズ」「WORST」が奇跡のコラボ

【写真を見る】作品によって印象をガラリと変え、“カメレオン俳優”とも謳われる塩野瑛久

2019年、「HiGH&LOW THE WORST」として映画とその序章を描くドラマが公開され、「ハイロー」の不良軍団・鬼邪高校と「クローズ」「WORST」の殺し屋軍団・鳳仙学園が激突するという、想像もしていなかった世界が実現した。

そんな映画「HiGH&LOW THE WORST」のBlu-rayDVDが、7月22日(水)にいよいよリリース。発売を記念して、鳳仙四天王…通称“小沢仁志”の1人、小田島有剣を演じた塩野瑛久に話を聞いた!

――映画公開から半年以上を経て、待望のBlu-rayDVDが発売されます。公開後、共演者との交流はありましたか?

塩野:鳳仙メンバーとの交流はありましたし、四天王では生配信もしました。小沢仁志さんのお名前と、人の考えた“自粛部屋”(※)を借りた“小沢仁志の自粛部屋”でTwitterのトレンドにも入ったりして(笑)。久しぶりにいっぱい話せて楽しかったですね。

※編集部注:鳳仙学園の頭・佐智雄を演じた志尊淳は、Instagramで“志尊淳の自粛部屋”という配信を行っている

楓士雄役の川村壱馬ともちょくちょく連絡を取っています。フォトエッセイを送ってもらったので、「ありがとうねー」と連絡しました。フォトエッセイ、めちゃめちゃ良かったです!

■ “メガネ王子”から一転、金髪のトリッキーキャラ

――塩野さんが今あらためて思い出シーンはどこですか?

塩野:やっぱり、(冒頭の)鳳仙のスキンヘッド軍団ですね。画的にもパンチがありますし、あそこが映画の力を底上げしてるというか。

僕もずっと「クローズ」「WORST」ファンなので、もし中学時代にこの企画があったら、スキンヘッドにしてエキストラに応募してたと思うんですよ(笑)。だから、皆さんの気合いの入りようも分かります

――では、ご自身の好きなシーンやせりふというのは?

塩野:語り尽くした感もあるんですが…評判が良かったのは、「殺し屋鳳仙だす」ですかね。「あのシーンがいい」と言ってくれた方の大半は、原作漫画にある元のせりふを知らない方が多いと思うんです。あれは久保(茂昭)監督からのリクエストで言うことになったせりふで。

――台本にはなかったそうですね。

塩野:急きょだったと思います。鉄の棒をカーンとやってピタッと止まり「殺し屋鳳仙だす」、その後のドロンジョ様を意識した「やっておしまい」でゆるっとする、その緩急は意識しました。

その後、小田島の去り際のせりふが聞き取りにくいという方もいたんですが、あそこは「クスリ、ダメ、絶対ー!」ですね。これもアドリブです。

――久保監督は、塩野さんの役作りに意外性を感じたとおっしゃっていました。シャキッとしたイメージにもなりうるキャラクターですが、なぜあのようなトリッキー小田島像になったのでしょうか?

塩野:単純に製作の方たちを裏切りたいという思いがあったんです(笑)。「THE WORST」の前に出演した「PRINCE OF LEGEND」の久遠誠一郎(メガネ王子)のイメージが求められているというのは分かっていましたが、それではつまらない。鳳仙四天王の中にもユルッとして、線の細い存在がいたほうが面白いし、バランスもいいと思いました。

塩野:四天王のうち2人は知り合いだったので、「そこで違いを出すにはどうしよう?」というところから役作りが始まりました。

沢村役の葵揚だけ初対面でしたが、初めて顔を合わせたときに頭を剃るのを失敗していて(笑)、「何やってんだよ!」ってツッコんだりしたら、もう一瞬で打ち解けました。

■ 轟とのタイマンで表現したかった小田島の人間らしさ

――前田公輝さん演じる轟との対比にも注目が集まりました。河川敷タイマンでは、前田さんは轟の心情を考えて「早く終わらせたい」という気持ちで演じていたとのことでしたが。

塩野:僕は、少しでも長く戦っているところを見てもらいたかったですね。実は小田島が倒された後、奥歯をいじって唾を吐いて、「もう一戦やるか」と構え直すところまで撮影してたんですよ。カットされてしまいましたが…唾を吐いたのが良くなかったのかな(笑)

「THE WORST」では小田島バックボーンはあまり描かれていませんし、そういうところでもっともっと小田島という人間を表現したかったんですが。

――ちなみに、どのような構えを?

塩野:小田島ファイトスタイルは、那須川天心さんのような感じですね。頭を守りながら、肘で弾いて殴るのが基本です。アクション監督の大内貴仁さんが考えてくれました。アクションは演技を見せる前に組まれているものなので、僕たちはその出来上がったアクションの型を自分の芝居に落とし込むんです。

小田島も元々は“正統派ヤンキー”という感じで、無防備じゃないカチッとした型でした。それを崩しながら自分の芝居に落とし込んでいきましたね。轟とのタイマンでも、轟の手を取った瞬間に力を抜いて笑ってみたり…。

――完成した作品からも、小田島キャラクター性は十分伝わってきました

塩野:それはありがたいです。団地の戦いの後、サングラスレンズを片方落としたのも“ユルさ”や人間味を出したかったからなんです。

これもカットされてしまいましたが、鳳仙のスキンヘッドの仲間がレンズを拾ってくれて「小田島さん見つけました!」「おお、どこに落ちてた?」っていうやりとりもあったんですよ(笑)四天王スキンヘッド軍団も、ただの幹部と部下という関係性ではなくて、コミュニケーションはあるはずだと思って。

HiGH&LOW」の世界観はカチッとしたカッコ良さが魅力ですが、鳳仙は高橋ヒロシ先生の世界から来ているので、そんな風に“普段カッコいいヤツの崩したところ”も見せたかったんです。

■ もし「THE WORST」続編が実現したら…

――四天王の麻雀写真や、コミカライズHiGH&LOW THE WORST 鳳仙学園日誌」も話題となりました。鳳仙の次の展開や続編を心待ちにしているファンも多いと思いますが、塩野さんはいかがですか?

塩野:もし続編ができるなら、もっとキャラクターの人間味を表現して、もっと物語に絡んでいきたいです。不良らしくケンカもありつつ、ユルさもあるような、言葉で言い表しづらい“良さ”を出したいなと。

たとえば映画「クローズZEROシリーズでは、たばこ1本を介したやりとりにも物語がありますよね。そういう粋な演出もやってみたい。

ファンの皆さんが喜ぶテイストもわかるんですけど(笑)、日常の描写だけだと少し平和過ぎるかなとも思いますし、そうじゃない部分も含めて好きになってほしいです。

――ファンの方が何を求めているかも熟知されているんですね。

塩野:僕自身“みんな好きだよね”というシチュエーションが好きですし、アニメや漫画をたくさん見ているということもあるんでしょうね。「このパターンはこう来るよね」と想像できますし、それが裏切られた瞬間に「この作品、好きだな」と思ったりキャラに愛情が湧いたりします。こういう話なら、アニメ好きの方と一晩中語り明かせると思いますよ(笑)

――具体的にはどんな作品が好きなんですか?

塩野:少年漫画系が多いかな。少年たちの心の中に、煮え切らない思いや曲げられない意地が見えると、「こういうもどかしさってあるよね!」ってめちゃめちゃ共感してしまいます。よく泣きますもん(笑)。「こういう生い立ちの人物があの選択をしたときに、どんな思いがあったんだろう」って、つい背景を考えちゃうんです。

■ 「THE WORST」は「もう一度やりたいなと思える作品」

――小田島バックボーンを考えたりもしましたか?

塩野:小田島の背景で考えたのは、佐智雄(志尊淳)との関係性です。佐智雄は鳳仙の頭ですが、四天王スキンヘッド軍団がヨイショをするのは違和感があって。元は佐智雄と四天王も友達同士だったと思うんですよ。

特に小田島はキレたら手が付けられないかもしれませんが、めちゃめちゃ強いというわけじゃないはず。でも、仲間が行きすぎたときに制御できるのが小田島だと思うし、四天王はお互いにもそうで、佐智雄も「お互い制御し合えるがのはコイツらしかいない」ってことで四天王を選んだと思うんですよ。

――そういうことも考えられてたんですね。

塩野:みんなで考えながら作り上げていきましたね。これもカットされてしまいましたが、河川敷の戦いの後、小田島が倒れたままで、仁川を呼んでお姫様抱っこしてもらうというアドリブがあったんですね。

そこでも小田島が倒れたままなのは、やられて動けなくなったわけではなくて、ただ起き上がって歩くのが面倒くさかっただけ(笑)お姫様抱っこにも、そういう背景を入れ込みたかったんです。

――同世代の俳優仲間が切磋琢磨して作品を高めようとしている中で、塩野さんが自分の強みだなと思うところはどこですか?

塩野:この作品に限って言えば、全体のバランスが見えることかな。たくさんの人がいる中で、誰がどういう立ち位置でいるべきかのビジョンが見える、俯瞰(ふかん)の視点が生かされたと思います。

もちろんバランスを意識せず、「自然に1人の人間として生きていたら、自然とそのキャラクターになっていた」というのが理想とされる現場もあるので、作品によって“脳みそ”を変えて臨んでいます。

――塩野さんにとって、「THE WORST」とはどのような作品だったのでしょうか。

塩野:まずは本当に出演できて良かったし、鳳仙学園の制服を着られたことも含めて夢がかなった作品です。僕もまだまだこれからですが、それでも「もう一度やりたいな」と思える作品でした。(ザテレビジョン

しおの・あきひさ=1995年1月3日生まれ、東京都出身。男劇団 青山表参道Xのメンバー。