米アマゾン・ドット・コムが年次大型セール「プライムデー」の延期を明らかにしたと米CNBC7月21日に報じた。毎年7月に開催しているが、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期を余儀なくされていると伝えられていた。

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広報担当者、「詳細はまもなく発表する」

 アマゾンの広報担当者は声明でこう述べたという。

 「プライムデーは、これまでの5年間で我々が楽しみに待つ、特別な祝いのイベントになった。今年は従業員の安全を確保し、顧客と出品者を支援しながら、例年よりも遅い時期に開催する」

 ただし、「詳細はまもなく発表する」と述べるにとどめ、具体的な開催日は明らかにしなかった。一方で、インドでの開催は決めた。同国のサイトにプレスリリースを掲載。8月6日午前0時から48時間実施すると説明した。プライムデーはこれまで世界同時開催で実施してきたが、今年は異例の措置を取るのかもしれない。

2日間で7600億円を売り上げる大型イベント

 アマゾンは、売り上げが減少する夏場の販売促進策として2015年にこの会員向け大型セールを始めた。当初は24時間のイベントだったが、年々規模を拡大し、昨年は米国やカナダ、英国、ドイツフランスインド、日本、中国、オーストラリアなどの18カ国で7月15日午前0時から48時間実施した。

 同社によると昨年は、2日間の売上高が「ブラックフライデー」(年末商戦の初日)と「サイバーマンデー」(翌月曜日)のそれまでの販売実績を上回った。このイベントは有料会員「プライム」の新規加入者獲得にも寄与しており、昨年は初日の申込みが1日の件数として過去最多となり、翌日もそれに次ぐ件数があった。

 また、昨年は世界で1億7500万個の商品を販売したという。これについて、ネット通販業界の専門誌インターネットリテイラーは、2日間の世界総販売額は前年比70%増の71億6000万ドル(約7600億円)だったと報じた。

「仮の開催日は10月第2週」と通知

 しかし、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で在宅勤務や自宅待機が広がり、EC(電子商取引)需要が急増。アマゾンの倉庫業務が逼迫した。同社は対策として3月中旬から一時的な入荷制限措置をとった。食料品や医療用品、ベビー用品、健康・美容用品、家庭用品、ペット用品などを除く多くの商品を「不要不急」とみなして入荷を制限した。

 こうした中、さまざまな海外メディアがプライムデーの延期を報じてきた。

 例えば、ロイターは4月、少なくとも8月まで先延ばしになる可能性があると報じた。米ウォールストリート・ジャーナルは5月、アマゾンは9月開催を決めたと伝えた。また、CNBC7月2日、少なくとも10月の初めまで延期されると報じた。CNBCによると、アマゾン7月1日付の出品者宛の電子メールで、10月第2週を仮の開催日として準備を進めるよう案内した。併せて正式な日程を後日発表すると通知したという。

物流業務は正常化も再び入荷制限

 アマゾンは5月初旬から出品業者に対し、入荷制限の解除を通知し始めた。「Limited Restock(補充制限)」の指定を解除、数量制限も撤廃し、出品者は従来通りにアマゾンに商品を預けられるようになった。このころから同社のECサービスは通常体制に回復してきたと伝えられるようになった。

 ただ、ここに来て同社は再び入荷を制限をしている。出品者向けのウェブサイトアマゾンはすべての商品を対象にした種別ごとの数量制限を始めたと明らかにした。

 CNBCによると、3~5月に混乱していた物流網は、ほぼ通常体制に戻っているものの、年末商戦時も滞りなく商品を届けるために入荷を調整しているという。

 一方で、アマゾンは急増している需要に対応するため、大型の配送車両を導入すると伝えられている。ロイターによると、これは「ユーティリマスター」と呼ぶウォークスルー車で、米UPSや米フェデックスなどの物流大手が採用している車両と同モデル。

 従来の独メルセデス・ベンツなどのバンに比べより大きな荷物を多く運べるという。アマゾンは米ミシガン州の商用車両メーカー、シフト・グループにこの車両を2200台以上発注したとロイターは伝えている。

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アマゾンの配達車両(写真:ロイター/アフロ)