【J番記者コラム】横浜FCとの“ダービー”に大勝、試合の流れを変えたラッキーな先制点

 終わってみれば4-0。「前年度王者vsJ1昇格組」という両者の立ち位置を覆すどころか、至極順当な結果に終わった。

 トータルスコアだけを切り取れば、横浜F・マリノスの完勝か圧勝という表現が正しいのだが、内容は然にあらず。試合後、アンジェ・ポステコグルー監督は「横浜FCも最初の10~15分はボールをつなごうとしていたし、フィフティーフィフティーの時間だったと思う」とリスペクトを口にし、序盤は五分の内容だったことも認めていた。

 実際に、開始7分に絶賛売り出し中の18歳FW斉藤光毅が最初の決定機を迎え、前半15分には再び斉藤がバー直撃の惜しいシュートを放っている。ほとんどマンツーマンに近い守備で横浜FM自慢のポゼッションを封じ、攻撃では手数をかけずに背後のスペースを狙う。仮にこの時間帯に横浜FCが先制していれば、試合展開はまったく違ったものになっていた可能性が高い。

 流れが変わる潮目になったのは、シンプルにMFマルコス・ジュニオールが誘発したオウンゴールだった。パス回しや連係で守備陣を切り崩したわけではない。左サイドで始まったスローインからの流れでM・ジュニオールが中央で待つFWエジガル・ジュニオへ送ったボールは、相手DFの足に当たってゴールに吸い込まれた。

 一言で言ってしまえば、ラッキーな先制ゴールである。運・不運が大きなウェイトを占めるサッカーという競技性ならではのもの。それまでの試合展開やチームとしての出来に関係のない、それでもスコアを争うサッカーにおいて最も重要なゴールが、試合の流れを大きく変えた。

 後半に入ってからは、リードしてすっかりリズムを取り戻した横浜FMと、ビハインドを挽回するためにリスクを冒さなければならなくなった横浜FCで、立ち位置がイーブンではなくなった。さらに元々の能力値や完成度で上の“トリコロール”が、余裕を持って試合を進められたのは言うまでもないだろう。

 したがって、後半の3得点を額面通りに受け取るのは危険かもしれない。そして4-0というトータルスコアは、“展開の利”が多分に作用していた。しっかりと追加点を奪って勝利を手繰り寄せた点は評価できるが、90分トータルで満足できる内容とは言い難かった。

気がかりな負傷者の増加、今が序盤戦の勝負どころか

 原因はいくつか考えられるが、ここへきて負傷者が増えてきたのは気がかり。中断期間中にGK朴一圭が右手骨折で、再開初戦でDF實藤友紀が右ハムストリング肉離れで離脱した。さらに前節の鹿島アントラーズ戦でDFチアゴ・マルチンスとFWエリキが負傷したため、横浜FC戦は回避せざるをえなかった。

 また、試合前日にMF天野純にアクシデントがあったため、J1初先発のMF仙頭啓矢がぶっつけ本番状態で中盤の一角を担うことに。試合中にはFW仲川輝人が浮かない表情でベンチに下がった。

 ここまで1試合も同じ11人で戦っていないのは計算済みなのか、それとも多少なりとも誤算が含まれているのか。おそらくは両方が正しく、指揮官も「怪我をさせないようにしていく」と方針を明かしている。少なくとも選手全員が出揃っていない現状はベストメンバーの選定が難しい。オフ期間や中断期間の積極的な補強で層は厚くなっているが、現時点でチーム力の最大値は昨季終盤のそれに及ばない。

 Jリーグ27年の歴史で過去5クラブ(横浜FM含む)しか達成していない連覇への道のりは、決して平坦ではない。それに挑戦する資格を持っているのは“トリコロール”のみ。ならば苦しい試合でもしぶとく勝ち点3を積み上げ、戦力が整う時期を待つことも大切だ。今が序盤戦の勝負どころかもしれない。(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)

横浜F・マリノスは横浜FCとの“ダービー”に大勝【写真:高橋学】