長澤まさみ主演・人気ドラマ劇場版第2弾『コンフィデンスマンJP プリンセス編』が7月23日に公開初日を迎え、舞台挨拶は全国201館の劇場で生中継された。この作品には急逝した三浦春馬さんも出演している。

 ファンに向けて長澤は、「愛すべきコンフィデンスマンたちが、みんなそれぞれ、映画の中で頑張ってます。その姿をたくさんの人に観ていただきたいなという風に思います」と話した。ライターの平田裕介さんが、いつのまにかコンフィデンスマン(信用詐欺師)たちに転がされ、引き込まれていく劇場版2作の見どころを綴る。

*以下の記事では、現在公開中の『コンフィデンスマンJP プリンセス編』と、前作『ロマンス編』の内容や結末が述べられていますのでご注意ください。

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長澤まさみ「その姿をみんなの目に焼き付けてほしい」

「今日この日を迎えることができて、安心したという気持ちと、とても感慨深い思いでいっぱいです」

 7月23日、映画『コンフィデンスマンJP プリンセス編』初日舞台挨拶で長澤まさみが語った、公開を迎えての一言。新型コロナウイルスの影響で2カ月半あまり公開が延期されていた。

 彼女をはじめ、東出昌大小日向文世ら舞台挨拶に登壇した全員が恋愛詐欺師・ジェシー役で、劇場版前作『ロマンス編』と今作『プリンセス編』で共演した三浦春馬さんには一切触れず、作品の魅力や、撮影現場での和気あいあいとしたエピソードを語る場にしようとする一致団結した想いが感じられた舞台挨拶だったが、その背景には同日朝から、フジテレビの各情報番組へ立て続けに出演したこともあったのかもしれないと思わされた。

めざましテレビ」で軽部真一アナウンサーから三浦さんについて訊かれた長澤は、「愛敬があって人懐っこくて、とても正義感の強い子だったんじゃないかなと思います。私も弟のように思っていたところがあったので、とても残念ですが、コンフィデンスマンの映画に映っている春馬くんはとてもキラキラと輝いておりますので、その姿をみんなの目に焼き付けてほしいなという気持ちです」と話した。

東出昌大「彼のした選択を言い訳にして…」

とくダネ!」では三浦さんの名を出して彼に対するコメントを求めたMCの小倉智昭に対し、長澤は「まだ自分の中では消化しきれていないですから……」と言葉を選ぶように話し、三浦さんとの共演シーンについて、「春馬くんは忙しかったんで、朝来て振り付けを覚えて。その日の一日の撮影を二人で乗り切ったんですけど。踊りのシーンリードしてもらって。一緒に頑張って演じました。踊って」と明かした。

 東出昌大は長い沈黙の後、「まだ当分は受け入れられないだろうなと思います。ただ、すごい頑張り屋さんで、大好きだった彼なので、彼のした選択を言い訳にして僕らが頑張んないということを決めちゃったら、それこそ彼に対して申し訳が立たないので」と語った。

 公開初日に映画の中身よりも尋ねるべきことだとばかりに三浦さんに関して問われ、答える彼らの表情には明らかに辛そうなものがあったし、それを見ているこちらも非常にいたたまれない気持ちになった。事前にこうした状況をわかっていたゆえに、舞台挨拶では集まったファンに向けて、作品を語ることに徹したのではないだろうかと想像した。

三浦春馬さん演じた「ジェシーが本当に素敵なんです」

 だが、「とくダネ!」で東出昌大が続けて放った言葉「ジェシーが本当に素敵なんです。『ジェシーってさすがだな』というセリフがあったんですけど、それを心の底から言えるジェシーだった」にはハッとさせられた。

 そう、『コンフィデンスマンJP』映画版シリーズは新作も前作もジェシーが本当に素敵なのだ。それは彼が亡くなった7月18日地上波初放送された『ロマンス編』を観てこちらも確信したことだった。

前作『ロマンス編』好敵手として不足なし

 巧妙かつ大掛かりな嘘を重ねに重ねてターゲットをとことん信用させ、巨額の金品を騙し取っていく信用詐欺師=コンフィデンスマンのダー子(長澤まさみ)、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード小日向文世)。彼らは香港の裏社会を牛耳る女帝“氷姫”ことラン・リウが隠し持つダイヤパープルダイヤ”をいただこうと香港へ。

 公の場に姿を見せようとせず、その顔や素性を知る者は皆無に等しいラン・リウが占術に執心しているのを知ったダー子は百発百中の霊能者に扮して彼女に取り入ることに成功。虎視眈々とパープルダイヤを狙うなか、かつてダー子と恋人同士を装って共に詐欺を働くも本気で惚れてしまって痛い目に遭わされたらしいジェシーがラン・リウの邸宅に現れる。狙いは同じパープルダイヤかそれとも他にあるのか……ただでさえ悶々とするなかで恋愛詐欺の天才である彼がその手腕を発揮してラン・リウをよろめかせていくさまに、複雑な表情を見せるダー子。

 時に味方をし、時に邪魔をしてコンゲーム映画としての緊張感を上昇させるだけでなく、ダー子の知られざる過去を知り、そこを突いて翻弄し、ボクちゃんやリチャードには見せなかった顔を引き出してしまう存在のジェシーは、まさにスケールアップした映画版の好敵手として不足なし。

 そしてクセ者たちを転がしてきたはずのダー子を逆に転がしまくった果てにとことんやっつけられ、物語を観る者に破格の高揚感を与えてくれる彼がいたからこそ大成功した『ロマンス編』だったといえる(興行収入29.7億円)。ゆえに地上波放送冒頭のテロップ三浦春馬さんが本日お亡くなりになりました。謹んでお悔やみ申し上げますと共に、心からご冥福をお祈りいたします。〉が深く刺さって仕方がなかった。

新作『プリンセス編』でも、ひたすら転がされる

 新作の『プリンセス編』の舞台はマレーシア。世界屈指の富豪レイモンド・フウが逝去し、10兆円とも囁かれる遺産が子女の3姉弟ではなく誰も存在を知らなかった隠し子ミシェル・フウに相続されることに。ダー子は身寄りのない少女コックリ(関水渚)をミシェルに仕立て、自身も彼女の母を装ってフウ家に入り込むが、その前にミシェルの存在など許すわけがないブリジットビビアン・スー)、クリストファー古川雄大)、アンドリュー(白濱亜嵐)の3姉弟と、フウ家を守ることに命を賭ける執事トニー柴田恭兵)が立ちはだかる。

 騙す者も、騙される者も、観ている者もひたすら転がされる、なにもかもが容易に信じられない展開。画面に映るもの、出てくるキャラクター、ちょっとしたゲスト、耳に飛び込んでくる台詞、すべてがクライマックスに繋がっていくワクワクするような緊張感。シリアスになったかと思えばコミカルに転じる、キャストが織りなす千変万化な演技の応酬。スクリーンに映し出されるクアラルンプールランカウイ島といった風光明媚の地の数々も、大ヒットした前作に負けるわけにいかないという意気込みがひしひしと感じられる仕上がりだが、それでも目を惹きつけるのがジェシーだ。

ダンスシーンと、ダー子の「死ぬんじゃないよ」

 世界中から富豪やセレブが集まるフウ家の玉璽授与パーティーに、なにかしら獲物を釣り上げられると考えたのかジェシーも参加。そこでダー子と出くわしてダンスをする羽目になり、憎まれ口を叩き合いながらも流麗に踊ろうとする姿は絢爛豪華な世界を舞台にしたコンゲーム映画に相応しい軽妙洒脱を極めたシーンといっていい。

 長澤まさみも〈ジェシーと一緒にダンスをしながらやりとりをするところは練習時間も少なくて大変ではあったんですが、やっていて楽しかったです。三浦春馬くんとは前作でもご一緒させていただいて気心の知れた仲になれていたので、安心して一緒に取り組むことができました。春馬くんはもともとダンスがとても上手なので、リードしていただきましたね。〉と、『プリンセス編』パンフレットでも語っており、その楽しさが見事に反映されている。

 また、その登場も単なる“賑やかし”などにはなっておらず、ダー子の計画に深く関わっていてしっかり見せ場もさらっており、「ジェシーってさすがだな」と唸らずにはいられなくなる。

 エンドクレジット後に、ダー子が銀ちゃん、ボクちゃんがヤスに扮して繰り広げる『蒲田行進曲』“階段落ち”のパロディが繰り出される。そこでダー子が放つ「死ぬんじゃないよ」というセリフ。階段を転げ落ちて満身創痍になったヤス=ボクちゃんに向けられたものだが、今となってはどうしてもジェシーのことが思い出されてならなかった。

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 7月23日、座長の長澤まさみは、初日舞台挨拶の最後に「この世界がいつまでも愛され続けるといいなという風に思いますし、コンフィデンスマン、これで最後になるのかどうかわかりませんが、過去作も、今回の作品もずっとずっと、たくさんの人に見ていただけるように、これからもコンフィデンスマンとして頑張っていきたいなと思います。本日はどうもありがとうございました」と締めくくった。

(平田 裕介)

ジェシー役・三浦春馬さん ©︎Imaginechina/時事通信フォト