コロナ禍で訪ねられない母のオンライン誕生日会のため、自宅近くのおいしい洋菓子店へタルトとゼリーとムースを買いに行ったときのこと。これまでどおりレジ袋に入れてくれた。お総菜の店でも、私がボーッとしているうちに、やはり無料のレジ袋に。またやっちまった……。黙っていてはいけないのだ。その店がレジ袋を無料配布するかどうかを見極めて、すばやく「レジ袋はいりません」と声を出さなくては。その習慣がまだ身に着いていない。

「バイオマス素材を25%以上使ったレジ袋は無料配布可」

 身近なプラスチックごみの削減を目指し、この7月からレジ袋が有料化された。レジ袋は「ください」「買います」と言わなければもらえない生活になるのかと思ったが、案外そうでもない。国が定めた有料化ルールの抜け道が、しっかり生きている。

 洋菓子店のレジ袋には「植物性プラスチックが25%以上使用されています」と書かれている。総菜店のレジ袋には「サトウキビ由来の植物プラスチックを25%使用しています」。いずれも一般社団法人「日本有機資源協会」が認定したクローバー模様の「バイオマスマーク」が、「25」という数字つきでプリントしてある。

 これは、国のルールが認めた「バイオマス素材を25%以上使ったレジ袋は無料配布可」という例外規定を使ったものだ。バイオマスマークの「25」は、バイオマス素材の含有率が25%以上30%未満という意味だ。だから、無料配布しても、もちろん脱法行為ではない。

セイコーマート、吉野屋、松屋は無料配布

 コンビニにしても、セブン‐イレブンやファミリーマート、ローソンなどは有料化したが、セイコーマートは6月末、バイオマス素材を30%含むレジ袋に切り替えて当面は無料配布を続けると発表。私の自宅近くでは牛丼チェーンの吉野家や松屋も無料配布を続けている。バイオマス素材を25%以上含むレジ袋にしたうえで有料化している例もあるので、そのあたりは企業の姿勢によるのだろう。

「レジ袋有料化ルール」3つの抜け道

 国が定めたレジ袋有料化のルールには、三つの抜け道が用意されている。一つは、厚さが0.05ミリメートル以上のもの。使い捨てではなく繰り返し利用できるという理由だ。二つめは、ごみとなって海に流れ込んでも自然に分解されて消滅する「海洋生分解性プラスチック」だけでできているもの。そしてもう一つが、バイオマス素材が重さにして25%以上含まれているものだ。

 この「バイオマス素材」がわかりにくい。「生物」を意味する「バイオ」は、困ったことに、「環境によい」というプラスイメージを与える魔法の言葉としてよく使われる。バイオマス素材を含むレジ袋なら、国も無料配布でよいといっているし、プラごみの削減にも役立つのではないか。そんな誤解まで生みそうだ。

バイオマスプラスチックも放置すれば「永遠のごみ」

 すこし整理しておこう。バイオマスプラスチックとは、生物由来の原料を使って作るプラスチックのことだ。その多くはサトウキビなどの植物を原料にしている。植物は成長するとき大気中の二酸化炭素を吸収する。バイオマスプラスチックを焼却処分すれば、石油から作ったプラスチックと同様に二酸化炭素が出るが、植物が成長段階で吸った二酸化炭素とプラスマイナスでゼロとみなそう。だから、二酸化炭素を増やして地球温暖化を進めることはない。そういう理屈になっている。

 注意が必要なのは、いま説明したように、地球温暖化を考えるとバイオマスプラスチックは有効かもしれないが、「ごみ」としてみた場合は、ふつうのプラスチックと変わりはない点だ。「バイオ」と名がつくからといって、そして植物から作ったからといって、生ごみのように、放っておけば土にかえるというわけではない。放置すれば、分解されることなく、いつまでも野や海を汚し続ける「永遠のごみ」になる。地球にはやさしくない。

 どうも、バイオマスプラスチックが「生分解性プラスチック」と混同されているようだ。生分解性プラスチックは、微生物などの働きにより、自然界で二酸化炭素と水に分解されて消滅するプラスチックだ。だが、それには、たとえば温度が60度以上になる土の中といった条件があって、適当にポイ捨てしても、そのうちなくなるというものではない。むしろ、早期に細かい「マイクロプラスチック」となり、生き物の体内に取り込まれやすくなるという指摘もある。

「バイオマスプラスチック」と「生分解性プラスチック」を合わせて「バイオプラスチック」という。ここが、ややこしい。バイオマスプラスチックの話なのに、それをバイオプラスチックと誤記している例も、よくみかける。植物由来のバイオマスプラスチックでも生分解性とは限らないし、石油から作ったプラスチックでも生分解性を持つものもある。

「プラごみ削減」に対しては実効性に欠ける

 繰り返しておこう。レジ袋有料化に関する国のルールには、「バイオマス素材」の抜け道がある。これは、プラごみ削減の観点から設けられたものではない。地球温暖化の進行抑制という別の目的が混入した。地球温暖化も、早急に対策を講じて行動すべき大きな問題ではある。広くとらえれば、レジ袋の有料化も地球の環境を守る方策の一つであり、そこに温暖化防止策を潜り込ませても問題ないという見方はあるだろう。だが、二つの別の目的を混在させたため、わかりにくく、しかもプラごみ削減という喫緊の課題に対しては実効性に欠けるルールになってしまったことは否めない。

 レジ袋は便利だ。そして、有料化に反対しようと思えば、いくらでも理屈はつく。「プラスチック全体の数%にすぎない」「新型コロナウイルスの拡散防止に使い捨てレジ袋は有効」「ごみ袋に再利用している」という具合に。私たちは、買った品物を無料のレジ袋に入れてもらって持ち帰るこれまでの便利な生活を、なかなか捨て切れない。レジ袋の無料配布が続くのも、そうした消費者心理の反映なのだろう。

 だからこそ、レジ袋を始めとするプラごみを削減するには、市民一人ひとりが気持ちを切り替え、これまでの行動を変える必要がある。国がルールに抜け道を設けようとも、私たちがそれに惑わされる必要はない。プラスチックを使うべきところには使い、不要な場合、我慢できる場合は使わない。無料のレジ袋を出し続ける店があっても、もらわなければよいだけの話だ。これからのプラごみ削減は、ようは私たちの出方しだいだ。

(保坂 直紀)

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