第2波が到来しているといわれている。新型コロナだ。東京の感染者は毎日200人を超え、7月31日に初めて400人を超えた。この流れが大阪、名古屋、福岡へと伝播、全国的に感染者数が拡大している。本来は感染が終息したのちに実施するはずだったGoToキャンペーンは7月22日にスタート。しかし、東京は感染源として土壇場で対象から外れた。こうしたドタバタの試行錯誤はしばらく続くだろう。ここでもう一度、データをもとに冷静に日本の立ち位置を検証したい。広がりつつある規制強化の動きは本当に正しいのか。

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 話を単純にするため、G7での死者数を比較する。新型コロナウイルスによる人口100万人当たりの累計死者数推移を確認した。データは、英オックスフォード大学が運営する「Our World in Data」のものを使った。7月29日時点で、最も多いのがイギリスで675.8人。グラフの曲線を見ると、まだまだ予断を許さない状況が続いている。勢いを止められていないのがアメリカ。450.9人と、このところ沈静化してきた462.8人のフランスを追い越すのも時間の問題だ。

 一方、感染爆発で医療崩壊が起きたイタリアは580.7人ながら収束に向かいつつあるようだ。これら4カ国では、いずれも人口100万人当たり400人以上が亡くなっている。236.1人のカナダがざっくりとそれらの半分、108.9人のドイツがさらにその半分、という状況だ。ヨーロッパの中では、かなりうまく抑え込めた感のあるドイツですら、100万人当たり100人以上も亡くなっているのが事実だ。

 日本はどうか。7.9人だ。日本だけでなく、アジアは全般に少ない。必ずしも、誇れる数字ではないという見方もある。実際、台湾が0.3人、タイが0.8人、シンガポールが4.6人と日本よりもさらに少ない。しかし、思い出してほしい。日本は、世界に冠たる超高齢化社会だ。70歳以上の高齢者比率は、18.5%にものぼる。一方、台湾が8.4%、タイが6.9%、シンガポールが7.0%にとどまっている。高齢者の致死率が高い新型コロナのリスクを考えれば、日本の値はアジアの中でも必ずしも悪いとはいえない。

 ましてや、フィリピンの17.8人、インドネシアの17.9人、インドの24.8人に比べれば、1桁台は大健闘だ。G7で比べれば、死者数はゼロに等しいほど少ない。理由はまだ分からない。ファクターXとして理由の研究が進んでいるが、答はまだ出ていない。もちろん、今後どうなるかは誰にも分からない。一ついえることは、日本は「結果的に」うまくやっている、ということだ。

 もう一つ興味深いデータがある。同じくオックスフォード大学が発表している「Coronavirus Government Response Tracker」だ。各国政府のコロナ対策を「厳格さ」という視点で比較するためにつくられた。休校、休業、イベント中止、イベント人数制限、公共交通機関運休、自宅待機、啓蒙、国内移動制限、国外移動制限の九つを総合し、最も厳格な規制を100として数値化している。

 G7での推移をみると、死者が出始めた2月中旬ごろから、日本はイタリアに次ぐ厳しい規制をとっていたことが分かる。小・中・高校の臨時休校を始めたころだ。しかし、欧州を中心に感染が広がり、各国の規制はどんどん厳しさを増し、日本を上回るようになった。緊急事態宣言を発出しながらも自粛の要請にとどまっていた日本は、規制の厳格さという意味では、G7で最も低い値で推移している。

 このところ死者数の増加が止まってきたドイツは、規制をかなり弱めつつある。フランスに至っては、ついに日本を下回った。再び規制強化に動いている日本とは真逆の動きだ。各国とも、感染症の予防と経済の回転の最適解を探し始めている状況だ。地を這うような死者数の推移と見比べると、日本の規制は果たして適正なのか。過剰ではないだろうか。

 GoToキャンペーンの初日、京都にいた。清水寺周辺を歩くと、これが本当の京都かと思うほど人影はまばら。土産物屋も、多くが店を閉じたままだった。いつ来ても人でごった返している二寧坂も、驚くほど人が少なかった。こんな状況をいつまでも続けるわけにはいかない。

 だからこそのGoToキャンペーンなのだが、キャンペーン以前に、リスクと対策のバランスが崩れているのではないか。このままではいずれ武漢になる、イタリアになる、イギリスになる、ニューヨークになる、そういわれ続けたが、結局どこにもならなかった。日本は日本のままだった。

 厚生労働省の統計では、昨年の1月から7月までのインフルエンザによる日本の死者数は人口100万人当たり23.5人。今回の新型コロナの死者数の実に3.2倍だ。「今のところ」「結果的に」ではあるが、新型コロナウイルスの死亡リスクはインフルエンザよりも小さい。

 当初は、ウイルスの正体も不明でリスクも測り兼ねたが、徐々にリスクの中身が明らかになってきた。リスクの把握と状況の変化に応じた適度で冷静な対策が必要だ。事故死を恐れ車や旅客機の使用を禁止する国を知らない。事故の発生を抑えつつ活用していくのが正しい判断だ。羹に懲りて膾を吹いてはならない。(BCN・道越一郎)
GoToキャンペーンの初日、京都の二寧坂は閑散としていた