7月10日雨上がり決死隊宮迫博之が、YouTubeチャンネル登録者数100万人を記念した生配信『YouTubeチャンネル登録者100万人!?記念ライブ』を行った。同時接続視聴者数は4万人以上を記録し、Twitterのトレンドにもランクイン。宮迫博之という男の人生が垣間見れたYouTubeのドラマを振り返りたい。

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・100万人達成までの軌跡
 2020年1月末に自身のYouTubeチャンネル『宮迫ですッ!【宮迫博之】』にて、一連の騒動の謝罪とYouTubeでの活動開始を報告する動画を初投稿してから、約5ヶ月。同チャンネルは7月5日に登録者100万人を突破した。

 初投稿時、宮迫自身が「自分はやっぱりお笑いが好きだ」という真摯な気持ちとともに、「この場所でまた皆さんに認めてもらえるように、許してもらえるように、できることは何でもやります。チャンスをください」と告白したように、開設当初より制限をかけることなく、YouTuberのヒカルやレペゼン地球らと積極的にコラボを行ってきた。

 また動画の企画も幅広く、本業であるトークやコントや、自身の歌唱力を使っての米津玄師など流行りの楽曲のカバー、こちらも得意の料理動画、自身もキャラクターモデルとして登場している『龍が如く』などのゲーム実況、質問コーナー、ドッキリなど、惜しみなく様々な企画に挑戦してきた。最近では、全国チェーン『串カツ田中』の命名権を買い取り『串カツ宮迫』を期間限定でオープンしたり、ファッションブランド『ロコンド』とのコラボで騒動後初めて“CM”という形でTV復帰を果たすなど、様々な人々の縁と助けを得て前向きな活動を行っている。YouTubeという場所でガムシャラに進んできた、約5ヶ月という短い期間での100万人達成は、芸能人としての知名度だけで成し得たものではない。

・宮迫と仲間によって魅せた1時間半
 そして、7月10日。都内で600人程を収容できる東京キネマ倶楽部にて無観客で行われたライブ配信は、その集大成であり、これからを進み切り開いていく“宮迫博之”という一人の男の人生が表れたドラマ性のある時間だった。

 まず、宮迫による人気コントキャラクター“轟さん”が、お祝いのビデオレターと共にライブのスタートを合図。ステージに画面が切り替わると、緊迫した雰囲気の中で小さな檻に宮迫の写真が閉じ込められた。檻を布で覆い去った瞬間、素早く本人に入れ変わっているというイリュージョンによって宮迫がステージに登場する。

 その後は、事前にリスナーから人気投票を行い決定した、中島みゆき「糸」やwacci「別の人の彼女になったよ」、 欧陽菲菲「LOVE IS OVER」などの楽曲を次々に披露した。今回のライブは宮迫による歌が基本軸であるが、歌の合間のMCや進行などもほとんど宮迫ひとりで行っている。30年の芸能人生の中で初めて一人で舞台に立つと語った宮迫だったが、そのトーク力はさすがだ。数々のTV司会などを担ってきた実力を発揮しており、生であるにも関わらず大きなトラブルもなく、円滑に進んでいった。盟友(?)である三又又三のパフォーマンスに飛び蹴りやキレのあるツッコミを入れながら、お笑いとしての要素ももちろん忘れない。

 そして今回、スペシャルゲストとして氣志團が登場。氣志團のデビュー以来20年の付き合いがあるとしながらも、一緒にステージに立つのは初めてだという綾小路翔とトークを交わしながら、昨月リリースされた宮迫のデビュー楽曲「雨上がり」を氣志團と共に披露した。

 コンビ名を連想させるタイトルを掲げたこの楽曲はレペゼン地球のDJ社長が作詞作曲を担当しており、宮迫の現在の境遇やそれに負けずと進んでいくドキュメンタリー性の高い楽曲となっている。滅多に連絡などないはずの母親からも「あなたのここ何年かを表した歌詞で涙が出ました。素敵な仲間に巡り会いましたね」と連絡をもらうなど、周りからの反響も大きいようだ。持ち前の歌唱力もさることながら、歌詞を噛みしめるように現在の心境を込めながら一言一言大切に歌う宮迫に、視聴者側もとても熱いものを感じた。

 <雨上がり/風が止み/晴れ渡り/ゆく日が/また来ると信じて/食いしばり/立ち上がり/歩き出し/ここで諦められない/さぁ進もう/未来へ><沢山の出会いが/この足を遠くへと/大丈夫止まるなと/言い聞かせながら>と歌う楽曲終盤。氣志團のメンバーがサプライズで、宮迫の相方である蛍原の仮装をして登場した。宮迫自身も聞いていなかった演出に思わず笑顔が漏れ「早着替えをしてまで登場してくれた気持ちと、“相方が隣にいる”というので泣きそうになった」と心情を語った。

・20年の時を超えたOne Night Carnival
 アンコールの後、再びステージに現れた宮迫は、ライブ冒頭でも登場した人気コントキャラクター”轟さん”として登場。氣志團と一緒に『One Night Carnival』を披露した。実はこの『One Night Carnival』、歌詞はだんすぃー(男子)の筋肉が大好きな轟さん仕様となっており、20年前にフジテレビで放送されていた人気コント番組『ワンナイR&R』で披露されて以来となる。当時は轟&筋肉青年隊として、轟さんと同じ格好をした青年達をバックダンサーに従えていたが、今回は20年の時を経て、本家である氣志團とコラボするという夢のようなサプライズ。YouTubeのコメント欄は大いに盛り上がり、最後は真髄であるコント芸人としての宮迫を見せつけた。

 生配信の後すぐに投稿された、氣志團綾小路翔との対談で宮迫はこう語っている。

「たった1年で自分の人生がこんなにも変わるのかと、騒動がなかった自分ではありえなかったことがYouTubeを通して沢山起こってくれている。どちらかと言うとYouTubeを敵視していた人間が今、YouTubeで色々なことが出来て、色々な人と触れ合えて、TVにいた頃はベテラン芸人として司会業を担当する立場になっていたため、コントや漫才をしていた自分を知らない若い層が今YouTubeを見て『実は面白い人だったんですね』とコメントをくれる。気付いてもらえたという、今までの自分とは違う人生との出会いが生まれた」

 今回のライブも冒頭のイリュージョンから、配信、カメラ、演出、助っ人MCや、衣装を作ってくれたロコンド、楽曲を提供してくれたレペゼン地球や、放送中にスーパーチャット投げ銭)を送ったヒカルや最後まで見届けたリスナーら、様々な人の協力の中、宮迫は1時間半を乗り切った。

 YouTubeを始めるきっかけは、決して褒められるようなことではないかもしれない。しかし、50歳になってもイチからまたガムシャラに挑戦するステージ上の宮迫は、道を間違えても、気力と真摯な思いがあれば、何度でもやり直せるのだという、メッセージを体現していた。これはTVには映らなかった彼の姿であり、一人の人間のドラマを映し出し、それをリアルタムで追いかけられるYouTubeの魅力だと、筆者は感じた。

 どんな人にも開かれ、ポテンシャルと努力さえあれば人を引きつけることができる。それがYouTubeであり、宮迫博之はそこで100万人という人々を集めた。今後も宮迫は動画で、彼の人生や人柄を切り出し、映し出してくれるだろう。それが彼の望む「テレビ復帰」という未来へ繋がっているかは今は誰も分からないが、それでも彼の“現在”をYouTubeで今応援することができる。筆者はそれを温かく見守りたいと思う。

(こたにな々)

『宮迫ですッ!YouTubeチャンネル登録者100万人!?記念ライブ』より