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ニューレイアウト&ニューデザイン

text:Kenji Momota(桃田健史

メルセデス・ベンツは2020年7月28日、乗用小型バンに特化したTクラスを新設すると発表した。

最も強調しているのは、ファミリーユースだ。日常生活からレジャーまでをアクティブにこなすファミリー層で、メルセデス・ベンツの小型ミニバンに対する期待が高いと見ている。

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メルセデス・ベンツが公式発表した「Tクラス」の公式イメージ。    メルセデス・ベンツ

メルセデス・ベンツバン部門のトップは、ニューレイアウトとニューデザインという言葉を使い、Tクラスがファッショナブルな乗用バンであると説明する。

同バン部門としては、商用車が主体のビジネスモデルだが、新たなる経営戦略として乗用バンのTクラスを企画した。

今回の発表では、ティザーとしての画像が公開されている。ボディサイズのイメージとしては、全長はBクラス級に感じる。

ウエストラインは低めで、フロントガラス、サイドウインドウ、リアハッチガラスの面積は大きい。

また、リリース文書には、左右ドアがスライド式となることが明記されている。インテリアの造りは、利便性を重視したニューレイアウトだという。

発売時期については、2022年半ばとしている。いま(2020年7月末)から2年近い先の導入にもかかわらず、なぜいま発表したのか?

そこに、他メーカーとの関係が見て取れる……。

「シタン」知ってる? 後継なのか?

Tクラスは、ルノー日産三菱アライアンスとの共同開発となる。

となれば、「シタン」後継なのか、と思われる方がいるかもしれない。

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メルセデス・ベンツ・シタン    AUTOCAR

日本では正規販売されておらず、また並行輸入車もほとんど見かけないシタンは、ルノー・カングーの兄弟車だ。

主に欧州で販売されており、日本人には馴染みが薄いモデルである。

今回のTクラス発表では、シタンについても触れている。

それによると、ダイムラーメルセデス・ベンツ)は2012年から、ルノー日産がOEM(相手先ブランド)供給するシタンを販売してきた。

また、2019年8月には、メルセデス・ベンツとして将来的に、都市型の配送バンのEV(電気自動車)を市場導入することを明らかにしている。

その上で、Tクラスと次期シタンがルノー日産三菱アライアンスとの共同開発となるとした。

ルノー日産三菱アライアンス側から見れば、今年5月にアライアンス全体としての将来事業計画を発表し、各社が担う開発領域と製造販売領域について明確化している。

その中で、ダイムラーなど他社との連携について、具体的な説明はなかったが、シタンについては継続案件ということであろう。

時期的には、カングーのフルモデルチェンジが2022年頃と言われており、そのタイミングでシタンとTクラスが登場するというシナリオに見える。

Vクラス同様の考え方での展開か?

シタンがEV化されることが確実な状況では、当然Tクラスでもメルセデス・ベンツがいうEQ化され、EQTモデルとして登場する可能性はあり得るのではないだろうか。

また、メルセデス・ベンツ側からTモデルとシタンを見ると、こうした商品企画の基盤には、2019年11月に行われたメルセデス・ベンツの大幅な組織再編がある。

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メルセデス・ベンツEQV    メルセデス・ベンツ

ダイムラーAGを持ち株会社とし、その傘下にメルセデス・ベンツAG、ダイムラートラックAG、さらにダイムラーモビリティAGの3社構成とした。

その中で、メルセデス・ベンツAGは、乗用車と商用車の両部門を担うことになり、以前よりも両部門の関係性が深まっている。

現状で、メルセデス・ベンツのバンは、中大型車が「スプリンター」。荷室優先のカーゴバン、乗車席とカーゴを融合させたクルーバン、パッセンジャーバン、さらに多様な展開が行えるベース車としてのキャブシャシーがある。

中型車では、「メトリス」があり、業務用のカーゴバンやパッセンジャーバンに加えて、Vクラス相当のパッセンジャーバンをラインナップする。

さらに、小型車ではルノー日産三菱からシタンの供給を受けてきたわけだが、この領域でTクラスを導入することになる。

フランス商用車ブーム、Tクラスに派生?

では、日本市場でTクラスはどのように捉えされるだろうか?

これについては、様々な見方ができると思う。

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ルノー・カングー    神村 聖

背景にあるのは、近年のフランス商用車人気だ。

カングーは個人事業主から個人の乗用まで着実な需要があるが、乗用でのカングー愛好家は、カングーが優れた商用車であることが購入動機の主な要因になっている。

シトロエン・ベルランゴについては、商用車という側面よりも、日本車にはないフランス車ミニバンとして魅力が重視されて、これまでフランス車と縁のなかった層でのベルランゴの認知度が上がっている。

その上で、Tクラスが次期シタンの兄弟車だとすると、日本のユーザーは両モデルと次期カングーをどのように比較し、認識するのだろうか?

欧州市場では商用車をバンと称しているが、欧州に日本のようなミニバン文化は存在しない。その中で、独自の成長を遂げたフランス商用バンの乗用化。

そこに加わる、メルセデス・ベンツの商用小型バンと、それをベースとする乗用モデルを、日本人はどう捉えるのか?

そもそも、Tクラスと次期シタンは日本市場に正規導入されるのだろうか?


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