北朝鮮は先月24日、「悪性ウイルス」、つまり新型コロナウイルスの感染が疑われる患者が確認されたとして開城(ケソン)市を完全封鎖する措置を取った。この患者とは、3年前に脱北し韓国で暮らしていたが、最近になって北朝鮮に戻った20代男性のことだ。

韓国の中央防疫対策本部は先月30日、この元脱北者の所持品16点を検査したが、新型コロナウイルスは検出されなかったと発表しており、実際に感染していたかは不明だ。

当局は、開城での経済活動を停止させると同時に、消毒作業を行っている。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋は、開城に住む親戚から聞いた話として、市内の全世帯と公共機関に対して消毒作業が行われていると伝えた。

また、当局は今年4月に配布した中央非常防疫指揮部指示第205号にに従うよう改めて強調した。ウイルス対策に全人民が一丸となって立ち上がったが、規則を守らない者が重大な結果をもたらせば、それ相応の重罰を下すという、いつもどおりのレトリックだ。

一方で、市の人民委員会(市役所)に対して中央から、「人民生活を安定させよ」との指示が先週初めに下され、物資が供給されてはいる。しかし、その量は「雀の涙ほど」(情報筋)とのことだ。

市内の市場は閉鎖された状態で、市民は外出もままならず殺伐とした雰囲気で、市外に親戚を持つ人は「送金して欲しい」と頼み込んでいる状況だという。

脱北者を対象とした調査によると、北朝鮮に住む人の半分から75%が市場での商業活動で収入を得ている。つまり、市場が閉鎖されれば収入の多くが絶たれてしまう。

市場の閉鎖は庶民の厳しい反発を生む。北部の両江道(リャンガンド)では今年5月、当局がコロナ対策として道内の市場を閉鎖する措置を取ったが、抗議行動が頻発する事態に陥り、1週間程度で再開となった。

当局が市民に対して食糧の供給に乗り出したのは、市民の反発を恐れてのことだろうが、市民の不満は今のところ当局ではなく、元脱北者の男性に向かっている。市民は口を揃えて、怨嗟の声を上げている。

「韓国に逃げたことで両親や親戚に迷惑をかけたのだから、懸命に暮せばいいものを、適応もできずに逃げ帰ってきた」
「あっちでもこっちでもまともに生活できないやつのせいで、われわればかりが煮え湯を飲まされている」

北朝鮮の防疫活動(労働新聞)