洪水の危機が迫る

洪水の危機が迫る

 近い将来、沿岸地域のかなりの部分が洪水に襲われるようになるだろうと科学者が警鐘を鳴らしている。

 護岸工事や堤防などで備えることもなく、さらに現在の地球温暖化をも放置してしまった場合、2100年までに沿岸地域の洪水は50%近く増えるだろうと、最新の研究は予測する。

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洪水の影響で経済的ダメージ

 メルボルン大学(オーストラリア)をはじめとする研究グループによると、現在、海面から高さ10メートル未満の沿岸部には6億人が暮らしているという。

 こうした地域は全世界でおよそ100兆円以上もの富を生み出している地域でもあり、洪水による環境的・社会経済的な被害はきわめて甚大である。

 予測された中でも最悪のケースが現実のものとなれば、世界人口の4%にあたる2億8700万人が沿岸部の洪水によって影響を受ける。被害総額に換算するなら、世界GDPの2割にあたる1500兆円相当の資産が脅かされるとのことだ。

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高潮や台風に起因する洪水の増加


 こうした予測は、世界各地の沿岸部の研究に基づいたもので、それらを検潮器で得られたデータと照らし合わせて妥当性が検証された。

 意外にも海面の上昇による被害は、全体の32%でしかない。それよりも洪水の大部分は、高潮や台風によってもたらされると予測されている。これらは温暖化によって規模が大きくなっているものだ。

 ただし、予測モデルは地域なレベルでは決して正確ではなく、世界全体の観点から見たものであるという。

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image by:Kirezci et al., Scientific Reports, 2020)

洪水に脆弱な地域は特に警戒が必要


 地域レベルで詳しく予測するにはさらなる調査が必要だそうだが、世界にはすでに洪水に対する脆弱さをにおわせる地域がある。

 たとえばアメリカではノースカロライナ州、バージニア州、メリーランド州。ヨーロッパではイギリスフランス北部、ドイツ北部。

 アジアでは中国、バングラデシュ、西ベンガル、インドの一部。オーストラリアではノーザンテリトリーなどが「ホットスポット」として挙げられている。

 また太平洋の島嶼国にとっては、海面上昇はまさに存亡の危機だ。海水が流れ込むと真水が利用できなくなってしまうからだ。

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image by:Kirezci et al., Scientific Reports, 2020)

すでに一定の海面上昇と地球温暖化は不可避


 残念なことに、今の時点ですでにある程度の海面上昇と気温上昇は不可避となっている。

 それでも、そうした被害を緩和するためのチャンスも時間もまだ残されている。今回のような予測は、それに実際に取り組むいい機会になるだろう。最悪の事態に備えていようがいまいが、それはやってくるのだ。

この研究は『Scientific Reports』(7月30日付)に掲載された。

Projections of global-scale extreme sea levels and resulting episodic coastal flooding over the 21st Century | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-020-67736-6#Sec8
References:cnbc/ written by hiroching / edited by parumo 全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52293373.html
 

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