「まだ実感はないですが、とても嬉しく思っています」

 藤井聡太七段(18)が、将棋界の第一人者、渡辺明棋聖(棋王、王将も保持・36)に挑んだ棋聖戦が7月16日、決着した。

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 3日後に18歳の誕生日を控える藤井は、五番勝負を3勝1敗で制し、屋敷伸之九段(48)が保持していた18歳6カ月という史上最年少タイトル獲得記録を30年ぶりに更新した。

 快進撃はこれにとどまらない。木村一基王位(47)に挑戦する王位戦七番勝負も進行中で、現在2勝0敗。最速で8月20日には「藤井二冠」が誕生している可能性もあるのだ。そうなれば豊島将之竜王・名人(30)、永瀬拓矢二冠(27)に次ぐ、棋界の序列3位に“昇級”することになる。

 加えて収入も“昇給”。勝てば勝つほど収入が上がるのがプロ棋士だが、高校3年生の藤井が手にするお金はいかほどなのか。

 観戦記者が言う。

「棋聖のタイトル料は500万円前後。王位は約1000万円といわれています。藤井さんの昨年度の獲得賞金は全棋士中9位の2108万円でしたが、二冠を達成すれば倍増、つまり4000万円を超えるでしょう。そうなると昨年約4000万円だった羽生善治九段(49)を抜き、豊島竜王・名人、渡辺二冠、永瀬二冠に続くトップ4に食い込む可能性があります」

棋士の「固定給」はいくら?

 棋士の収入事情について、現役棋士が解説する。

「棋士の基本収入は、棋戦ごとのランクに基づいています。藤井さんは順位戦(名人挑戦者を決めるリーグ戦)のクラスがB級二組ですが、その場合、毎月約18万円を受け取ります。他の棋戦も前年の実績でランク分けされ、たとえばCランクの棋士には毎月約3600円、Aランクには約1万円。あとは『年功』として、棋士になってからの年×千円。これらが“固定給”です。

 藤井さんは、おそらく来年は最低でも毎月60〜70万円程度の固定給になるでしょう。もちろんこの他に、1局ごとの対局料、そしてタイトル料などが加わることになります」

 さらに“藤井マネー”を巡り、周囲の動向がかまびすしくなることも確実だ。

 別の観戦記者が言う。

「2017年、デビューから連勝を続けていた時、藤井さんにはCM依頼が殺到しました。大手飲料、自動車、製菓など、20社以上がこぞって手を挙げましたが、当時、日本将棋連盟は藤井さんの負担を考慮して全て断った。今回タイトルホルダーになったことで、各社が改めて依頼するはず。が、解禁は早くとも高校卒業以降でしょう」

「普段は休み時間に友達と鉄道の話をしている」

 藤井の師匠、杉本昌隆八段(51)が語る。

「私の師匠、故・板谷進九段の悲願は、東海地区にタイトルホルダーを誕生させることでした。今回その目標を達成してくれた藤井に感謝しています。

 確かに本人の口座に毎月数十万円の振り込みがあるわけですが、基本的にご両親が管理されていると思いますし、本人は金銭には全く頓着していないでしょう。

 タイトルを獲得した日の夜、将棋連盟から近くのホテルまで彼を送り届けたんですが、ほんの少し前まで和服の対局姿で醸し出していたオーラがスッと消え、スラックス、シャツ、スニーカーでテクテクと歩く後ろ姿を見ていると、『普通の高校生だよなあ』って改めて感じました」

 藤井が通う名古屋大教育学部附属高校の教師も、17日の記者会見で「普段は休み時間に友達と鉄道の話をしている」と、盤外の素顔を語った。

 普通のようで、でも全く普通ではない高校生。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年7月30日号)

色紙を掲げる藤井新棋聖