(北村 淳:軍事社会学者)

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 本年(2020年4月23日の本コラム(「経済より安全を、リムパック反対に転じたハワイ州」)で紹介したように、新型コロナウイルスパンデミックによって、2年ごとにハワイを中心にアメリカ太平洋艦隊が主催している大規模多国籍海軍・環太平洋合同演習「リムパック(RIMPAC)」の開催が危ぶまれていた。

 しかし、アメリカ海軍力の偉大さを国際社会に宣伝する機会であるリムパックを是が非でも開催したい米海軍当局は、ハワイ州など地元の危惧に配慮して規模や内容を大幅に縮小し、なんとかリムパック2020を開催することにした。

極めて少ない参加国

 これまでのリムパックは6月下旬から8月上旬にかけて6週間近く実施されていたが、リムパック2020は開始時期が遅れ、8月17日から開催される。日程も31日までと2週間に短縮された。

 今のところ新型コロナウイルス感染症は一向に衰えないどころかますます猛威を振るっている状況である。そのためリムパック2020へ参加する国は10カ国を下回る見通しとなってしまっている(リムパック2018には25カ国が参加した)。

 リムパックを主催するアメリカ海軍第3艦隊司令部はいまだに公式発表をしていないが、現時点でリムパック2020にほぼ間違いなく軍艦を派遣するのは、アメリカ海軍の他には、日本の海上自衛隊カナダ海軍、オーストラリア海軍、ニュージーランド海軍、フィリピン海軍、シンガポール海軍、そしてブルネイ海軍といったところである。このほかにも数カ国が参加する可能性はあるものの、新型コロナウイルス感染状況の関係もあって確定していない状況である。

参加する各国の艦艇

 海上自衛隊からはヘリコプター空母「いせ」とイージス駆逐艦「あしがら」が派遣される見込みだ。

 7月にアメリカ海軍海上自衛隊と共に南シナ海で対中国示威演習を実施したオーストラリア海軍は、そのときと同じく強襲揚陸艦「キャンベラ」、駆逐艦「ホバート」、フリゲート「スチュワート」と「アルンタ」、それに補給艦シリウス」で構成される戦闘艦隊を派遣するかもしれない。フィリピン海軍からは、韓国製の新鋭フリゲート「ホセリサール」がハワイに向けて出発した模様だ。

 カナダ海軍は2隻のフリゲート、「レジャイナ」「ウィニペグ」を参加させる予定だ。海上自衛隊のような大規模海軍と違って、中規模海軍のカナダ海軍では12隻のフリゲートが主要戦力である。さらに小規模のニュージーランド海軍は沿海域多目的支援艦「マナワヌイ」を派遣する模様だ。すなわち、多国籍海軍救難訓練を主眼に置いた参加と思われる。

米海軍空母も不参加か

 これまでのリムパックでは、アメリカ海軍航空母艦が中心的存在となっていた。しかし今回、アメリカ海軍航空母艦の参加を見合わせることになりそうである。

 本コラムですでに述べたように、空母「セオドア・ルーズベルト」での大量の新型コロナウイルス感染者の発生や、メンテナンス作業の停滞、新型艦の不具合などが重なったうえ、中国海軍と対峙するために南シナ海に派遣する戦力を常に準備しておかなければならない状況に直面しているため、リムパック2020には空母を参加させることができなくなっている状況だ(参考「グアムにイージス・アショアを配備する米海軍の本音」)。

 そのため、今回参加する大型艦は強襲揚陸艦エセックス」だけとなりそうだ。

 それも、エセックスにとってリムパックへの参加はある意味、“ついで”である。リムパック2020終了直後の9月2日に、真珠湾に浮かぶ戦艦ミズーリで、第2次大戦での日本降伏記念式典が行われる(噂によると選挙戦挽回のためにトランプ大統領が参加するようである)。その式典に合わせて展示飛行が実施されるのだが、展示飛行に参加する第2次世界大戦中の航空機カリフォルニアからハワイに運搬するのがエセックスの主たる任務といわれている。

 ただし、エセックスにはMV-22オスプレイF-35Bステルス戦闘機が積載されており、今回の合同演習では中心的役割を担うことになる。

特別参加するかもしれない招かれざる客

 このように、アメリカ海軍なんとかリムパックの開催に漕ぎ着けたとはいえ、目玉の空母を参加させることができず、また、やはり前回から目玉となっていた地対艦ミサイルで軍艦を撃破する訓練も中止となり、さらには複雑なシナリオで実戦を彷彿とさせる海洋戦闘訓練も中止となり、各国の海兵隊が参加する水陸両用訓練も取りやめとなってしまった。そのうえ、参加国も10カ国に達するかどうかといった状態に留まってしまうと、アメリカ海軍はかなり面目を失うことになってしまう。

 そして現在囁かれている“不吉”な噂がある。それは、「参加国が極めて少ないリムパック2020に招待されてはいないものの、中国海軍とロシア海軍がそれぞれスパイ艦を派遣してくれば、10カ国を超えることになる」というものだ。

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