―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―


 時速300㎞を出す性能があっても、それを発揮する場所がない。道なき道を走る性能があっても、それを試す場所がない。もちろんサーキットなど専用コースで試すことはできるけど、何かリアルじゃない……。日本にいると、そんなに速いクルマも悪路に強いクルマも必要ないと思うのですが、そんな過剰な性能を持っているクルマが、今とっても売れているのです!

永福ランプ(清水草一)=文 Text by Shimizu Souichi
池之平昌信(流し撮り職人)=写真 Photographs by Ikenohira Masanobu

◆本格派4WDジープで、本物のオフロードを走ったら、いったいどうなるのか?

 スズキ・ジムニーがいまだに買えない。売れすぎて生産が追い付かず、新型の発売から2年もたつのに、まだ納車待ち1年以上! ジムニーは超本格派のオフロード4WDで、本来超マニアッククルマなのに!

 同じく超本格派オフロード4WDジープラングラーも絶好調だ。1年半前に新型が登場したときは、「先代より値段が100万円近く上がったから、さすがに売れ行きは落ちるだろうな」と思ったのに、逆に上がったんだから信じられない。昨年はラングラーだけで4873台を販売。都会派のチェロキーやコンパスを抑えて、ジープブランドの4割近くがラングラーだった!

 確かに世の中、本物志向になっているのでしょう。頻発する災害に備える気持ちもあるのかもしれません。SUVはなんとなく災害に強そうで、「守ってくれそうでカッコイイ」と女子にも人気だが、なかでもラングラーみたいな超本格派オフロード4WDは、見た目からして別格。なにしろ本物なので。

 でも、この日本には本物のオフロードがほとんどない。こういうクルマが災害に強いというのもイメージ的なもので、実際の災害時には、前にフツーのクルマが立ち往生してたら、どんなクルマもそれ以上進めない。瓦礫を乗り越えて逃げられるわけじゃないのだ!

 私はオフロード趣味がまったくないのですが、その最大の理由は日本にはオフロードがないから。有料のオフロードコースはあるけど、箱庭みたいなもの。「フェラーリだって走るところないだろう」とよく言われるのですが、加速には制限がないので、オフロード4WDよりは実用的だと思っております!

 が、このたびジープ様が、箱庭じゃない本物のオフロードを用意してくれました! 試乗コースとして、白馬のスキー場を丸ごと借り切ってくれたのです!

 まずはラングラーでスキー場脇の林道を上る。これはまったくフツーで、特にスリリングな部分はない。ところが頂上についたら、「ここからゲレンデを降りてください」と言われてビックリ
 最大斜度は25度くらいか? それよりも驚いたのは、前が見えないくらい高く雑草が茂ってること! ここを分け入っていーんスか!? スゲー!! こんなの初めて~!!

 ギアは「4L」で、オフロードの下り坂用の「ヒルディセントコントロール」もオン。下る速度は時速1㎞から8㎞まで選択できる。これでもう、自動的かつ安全に、雑草ジャングルのゲレンデをズンズン降りられた! 実際走ってみると、全部クルマがやってくれて、自分はほぼなんにもしてないのが残念だったけど、「これが本物のオフロード4WDってヤツかあ!」と感動した。

 次の試乗車はチェロキー。さすがにラングラーよりオフロード性能は落ちるが、タイヤはオフロード専用に履き替えてあるし、コースもやや難度が低いってことで、運転を担当Kに交代。さっきより若干斜度のゆるい別のゲレンデを降り始めた。

 ところが。いきなりクルマが滑ってほぼ真横向きに! 大雨+雑草で、ゲレンデの一部が極限まで滑りやすくなっていた! すわ横転か!? まさに本物のオフロード体験!

 ところが運転席の担当Kを見ると、凍り付いたようになにもしていない! ヒエ~!

「カ、カウンター当ててよ~!」

 カウンターとはいわゆる逆ハンドルのこと。誰でも本能的にやると思うのですが、それもしない! あとで聞いたら、「何かやるとかえって事態が悪化すると思って、なにもしませんでした。クルマが自動的に立て直してくれると思ったんで~」。

 昔、知り合いが、スピードの出しすぎでカーブに突っ込んじゃったとき、「今ブレーキ踏んだらクルマが吹っ飛ぶ」と思ってなにもせず、そのまま斜面を駆け上がって横転したって聞いたけど、ソレに似てる……。ヤバいと思ったら何かしようネ!

【結論!】
結局、真横になってもなんともなかったけど、どんだけ性能のいいクルマでも、ドライバーの咄嗟の判断能力はやっぱり重要! それも含めて、いい経験させてもらいました。本物のオフロードを突き進むジープラングラー最高!

【清水草一】
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―


悪路をオラオラ走るジープ・ラングラーは頼もしいのひと言につきます。スキーがうまい男がゲレンデでカッコ良く見えてしまう、あれです。でも、スキーうまい男はゲレンデ外では意外にフツーですが、ジープはゲレンデ外でも女子にモテます