映画評論家の秋本鉄次氏は、「ジョージ秋山さんの作品の女性は、なんだかんだ言って男性にとっての『最後の砦』として描かれていると思いますね」と話す。すなわち、性は行為そのものであり、「生命の『生』、聖書の『聖』でもある、男性にとっての救い─そんな存在ではないでしょうか」(秋本氏)というのだ。

 そんな一筋縄でいかない男女模様が描かれているのが「うれしはずかし物語」(88年、日活)だ。こちらも「週刊漫画ゴラク」で連載された作品が原作で、妻子ある中年会社員・三国(寺田農)が、偶然声をかけた天真爛漫な若い女性・チャコと週一の性的行為をする契約を結ぶところから始まる「純愛ストーリー」だ。

 チャコ役を演じたのは川上麻衣子。初主演作となる本作で、大胆にも全脱ぎのベッドシーンを演じたことが話題となった。

 初めてチャコが三国に、その美肌をさらすシーンは印象的だ。川上の形のいいヒップ、みずみずしい肌があらわになると、

「いいカラダをしてますねぇ、赤ちゃんの肌みたいだ」

との三国の言葉に、チャコは、男性に脱いだ姿を見せることは「私、初めてだよ」

と答える。そんなやり取りのあと、さらに三国はソファの肘掛け部分にチャコを座らせて、下腹部を広げさせる。

「ピンクです」

「恥ずかしいよ」

 はにかむ川上の演技がまた、妙にソソる。

 初めて「合体」するシーンは、2人がシーツにくるまれたままでの描写。ついに挿入されて「アッ、ウッ」と痛みとも愉悦とも言えない声を上げるところも大きな見どころだ。

 さらに物語は、チャコの若いカラダに溺れる三国が彼女への嫉妬、よき母であったはずの妻のまさかの秘密など、人の煩悩と業が交錯する展開に。まさに秋山作品の真骨頂が味わえる一作となっている。

 91~92年、秋山氏の2作はオリジナルビデオ作品としてリメイク、「新・ピンクのカーテン」2作、「新・うれしはずかし物語」3作が製作された。この両作でヒロインを演じているのが安原麗子だ。

 89年に所属していたアイドルグループ「少女隊」が解散し、本格的に女優へ軸足を移した安原は、文字どおり体当たりで“脱ぎ”とベッドシーンに挑戦。小ぶりな美バスト、しなやかな肢体が存分に楽しめる人気シリーズとなった。まさに彼女は、90年代ジョージ秋山作品の美神(ミューズ)と呼ぶにふさわしい存在だったのだ。

 ちなみに、秋山氏自身の理想の女性像は、どのようなものだったのか。

 秋山氏の実子である、放送作家・脚本家の秋山命氏はこう語った。

「ひと言で言うのは難しいですが、愛嬌と度胸、この2つを兼ね備えた女性こそが父の理想像じゃないでしょうか。具体的にそれが誰かといえば、僕の母だろうと思います。父がいちばん愛し、大切にした女性ですから」

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