海外では、所属するCAを全員解雇し、新しいCAを雇うまでパイロットが急造でCA業務をするとした航空会社がありました。日本ではその可能性はあるでしょうか。CAに国家資格はありませんが、国交省や現役CAに聞くと非現実的なようです。

新型コロナの影響もあった急造「パイロットCA」の話

現地時間2020年7月17日アイスランド航空が労使交渉の結果、同社に所属するCA(客室乗務員)を近日のうちに全員解雇し、早ければ20日から新しいCAを雇うまでのあいだ、パイロットが一時的にCA業務を実施する方針であると発表しました。

最終的には予定前日の19日、先述したCAの全員解雇を撤回。交渉にひとまずの決着がついたためとしています。

アイスランド航空によると、従来の複雑な機内サービスが新型コロナウイルスの影響で大きく制限されていることから、パイロットがほとんどトレーニングせずとも客室サービスを提供できる、とのこと。

海外ではこのように急ごしらえの「パイロットCA」が誕生一歩寸前までいきましたが、日本では今後このようなことが起き得るのでしょうか。

実は日本では、CAを務めるにあたり、「国家資格」といったものはありません。とはいえ、結論から言ってしまうと「現実的ではない」のが実際のところのようです。

国家資格でなくとも「急造パイロットCA」は厳しいワケ

国内航空会社のCAによると、乗務の際は飛行機の型式、国際線国内線、搭乗クラスごとにそれぞれの社内資格を持ったスタッフしか対応できないそうです。つまり、仮にパイロットがCAとして乗務するなら、訓練を受け、社内の各試験をパスしなければなりません。

この航空会社それぞれの社内規程のもととなる基準を設けているのは、国土交通省です。同省の航空局安全部運航安全課によると、同省が定めた基準をもとに各航空会社が具体的な規程を作成。その後、国土交通大臣の認可を受け、各社でその規程に基づいて訓練プログラムや試験、資格付与が行われる、といったプロセスといいます。

つまり日本では、国が定めた基準に基づいて各航空会社の社内で訓練が実施され、資格を得た人が、CAとしてデビューするかたちになります。万が一パイロットがCAとして乗務するにも同様で、ゆえに即座の配置転換は難しく、少なくともそれらをクリアする必要があるのです。

なお、航空局安全部運航安全課の担当者は「そこは航空会社ごとの判断基準」としたうえで、海外の事例のようなことが発生する可能性は低いことを示唆しています。また、先出のCAも各航空会社内で資格を経たとしても、定期的に審査を受けそれをパスしなければならないとも。なお、国交省ではこういった再審査のサイクルが基準に基づいているか、定期的にチェックをしているとのことです。

羽田空港のJAL機とANA機(2020年、乗りものニュース編集部撮影)。