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3.9L V型8気筒ツインターボに8速DCT

text:Matt Saunders(マット・ソーンダース
translationKenji Nakajima(中嶋健治)

 
新しいフェラーリローマがまとう美しいボディの内側にあるのは、アルミニウム製のシャシーで、ポルトフィーノと共通。フェラーリも認めている。

【画像】比較 ポルトフィーノ, GTC4, SF90 全115枚

ただし、全体の70%はローマ用に新開発したという。重量や体積的に70%ではなく、部品の数ではないかと推測する。

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フェラーリローマ(欧州仕様)

主要な寸法を比べてみると、ホイールベースはポルトフィーノと一致している。反面、全高は明らかに低く、全幅とトレッドは広い。

ドライブトレインの搭載位置が見直され、ローマポルトフィーノより重心高が20mmも低い。車重も100kg近く軽量だ。

エンジンは、ポルトフィーノだけでなくGTC4ルッソTにも搭載される、3.9LのV型8気筒ツインターボ。新しいカムと知的なターボ制御が与えられ、ポルトフィーノより最高出力は20ps高い。最大トルクの発生回転域も広げられた。

エグゾーストには、ガソリン・パティキュレート・フィルターが仕込まれている。サイレンサーポルトフィーノの一般的なものから、新設計のバイパス・システムを採用したものへ変更。時と場合によって、ノイズレベルの制御が可能となる。

トランスミッションは8速デュアルクラッチATで、リアタイヤ側の低い位置にレイアウトされるトランスアクスル。SF90由来のユニットで、ポルトフィーノの7速よりレシオ幅が広い。

フェラーリ製のトルクベクタリング・システム、eデフは標準装備。サイドスリップ・コントロールは最新の6.0で、ブレーキを電子制御するフェラーリダイナミック・エンハンサー(FDE)を搭載する。

ポルトフィーノの比ではない第一印象

磁気粘性流体を用いたアダプティダンパーはオプション。試乗車には装備されていた。たとえアダプティブ・ダンパーがなくても、フェラーリ最新の技術は不足なく盛り込まれているといえるだろう。

仕様の確認はこれくらいにして、走り出してみよう。第一印象の良さは、ポルトフィーノや前身のカリフォルニアの比ではない。タイヤが転がり始めてすぐ、低い速度域から感じ取れる。

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フェラーリローマ(欧州仕様)

今どきのフェラーリらしく、ステアリングはダイレクト。切り始めてすぐに、反応が返ってくる。正直にいうと、慣れるまでに少しの時間が必要だ。

コーナーへ速めのペースで侵入すると、ボディロール量はポルトフィーノより明らかに小さい。かなり自然で機敏だ。クイックなステアリングに見合うだけの、シャシーレスポンスが与えられている。操縦性は、調和が取れていながらも、鋭い。

前輪にかかる負荷を直感的に判断し、高めていける。不安感なく、ローマを操れる。

乗り心地は、引き締められていながらも、ポルトフィーノより穏やか。フェラーリによれば、フロントのサスペンションスプリングポルトフィーノと同じもので、リアは10%柔らかいという。

トレッド値が広げられているから、相対的なスプリングレートは、さらに柔らかいことになる。フロント側も。

ポルトフィーノより重心高が低く軽量だから、同じ速度で生じるボディロール自体も抑えられる。結果、クルマとしてより良好な基礎構成になり、しなやかで、優れた操縦性へとつながる。乗り心地も良くなるというわけ。

軽快でリニア、懐が深いハンドリング

試乗で走り込んだ、路面の荒れたタイトコーナーが続くワインディングでも、印象は良かった。ヘアピンカーブへ見事に食らいついていく。カブリオレポルトフィーノにはなかった仕草で。

上級スーパーカー並みの、息を呑むほどの勢いはないものの、中回転域では極めて活発。湧き出すトルクはたくましく、高回転域での柔軟性にも優れている。このエンジンを搭載してきた最近のフェラーリを、際立たせてきた特徴でもある。

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フェラーリローマ(欧州仕様)

加速時もコーナーへの進入時も、スポーティなグランドツアラーとして、ローマは軽快でリニア。放つサウンドも、印象を際立たせる。

甘美で圧倒される音色ではない。しかし、フラットプレーン・ブランクを備えるV8ターボに期待するとおりに音楽的。金属質でどこか切なく、本物らしい個性的な響きだ。

マネッティーノ・スイッチを回せば、5種類のドライブ・モードが選べる。電子制御の介入を変化させ、ハンドリング・バランスや、アクセル操作でのリアタイヤによる姿勢制御の自由度が選べる。488やF8トリブートのように。

ミドシップ・フェラーリ並みに、ローマも懐が深く、積極的な操縦が可能。グリップの限界領域での挙動は、まるでフロントエンジンの458や488のようでもある。

フェラーリローマは、固定式ルーフを備えたポルトフィーノではない。また、マセラティを目指したフェラーリでもない。ローマは、間違いなくそれ以上の完成度を備えた、新しいフェラーリだ。

長い間われわれが待ち望んでいたクルマ

V8ツインターボ・エンジンを搭載したローマは、容姿の美しさでも動的性能でも、新次元と呼べる領域に達している。ハイエンドのポルシェ911アウディ、アストン マーティンメルセデスAMGに大きな脅威を与える、真の跳ね馬が登場した。

日常的に乗りやすく、角が取れ、1年を通じて楽しめる。長距離旅行でもワインディングでも、場面を選ばず運転したいと思える、スマートなフェラーリ製グランドツアラーだ。久々の復活といっても良いだろう。

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フェラーリローマ(欧州仕様)

マラネロが生み出す、素晴らしいフロントエンジンのロードカー。フェラーリローマは、長い間われわれが待ち焦がれていたクルマ、そのものだといえる。

フェラーリ・ローマ(欧州仕様)のスペック

価格:17万984ポンド(2308万円)
全長:4656mm
全幅:1974mm
全高:1301mm
最高速度:320km/h
0-100km/h加速:3.4秒
燃費:−
CO2排出量:−
乾燥重量:1570kg
パワートレインV型8気筒3855ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:620ps/5750-7500rpm
最大トルク:77.4kg-m/3000-5750rpm
ギアボックス:8速ツインクラッチ・オートマティック


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