Devolver Digital7月23日ホラーアクションCARRION』を発売した。対応プラットフォームはPC/Mac/LinuxSteam)およびNintendo Switch/Xbox Oneで、日本語にも対応している。価格は2050円だ。

(参考:キュートなミニチュアに秘められた、語られない惨劇ーーばらばらの空間を結びあわせるパズルADV『The Almost Gone』

 本作の舞台となるのは地下深くにある謎の研究施設らしき場所だ。人々が秩序だって生活しているなか、突如として謎の生命体が襲来する。うごめく触手に赤黒い肉塊で構成されたクリーチャーは、その目的も不明なまま次々と人間を襲っていく。『CARRION』はこの謎のモンスターと人間の戦いを描いた作品だ……とはいっても、残念ながら人類のターンは永久にやってこない。なぜなら本作の主人公は「怪物」の方。プレイヤーが化け物となり、人間たちを蹂躙する「逆ホラーゲームだからだ。

 『CARRION』で目を引くのはその奇抜なコンセプトと、苛烈なゴア表現だろう。ピクセルアートで抽象化されているとはいえ、飛び散る血飛沫や引きちぎられる人体は目を背けたくなるような凄惨さだ。またこだわりが感じられるのは、逃げ惑う人間たちのリアクションである。絶叫しながら逃げ出す者や諦めの呼気を漏らして屠られる者、いずれも映画さながらの熱演を見せてくれる。クリーチャー側もダクトから這い出てターゲットを引きずり込んだり、密室のトイレに急襲を仕掛けたりと、「ホラー映画あるある」なシチュエーションを心ゆくまで満喫できる。一部の好事家にとっては夢のような作品だ。

 かくも非人道的な『CARRION』だが、実はそのゲーム内容は非常に人間に優しいデザインとなっている。本作にはマップが存在しない。人外に地図など不要ということだろう。この仕様に慣れないうちは戸惑いを覚えるかもしれない。しかし、本作のステージ設計は秀逸で、まず目の前にあるルートを進んでいけば、必ず行くべきところへたどり着くようになっている。これ見よがしに開けてくださいという扉や鉄柵を道標に進んでいけば、必ず全体を把握できる作りになっているのだ。

 また各所にはパズル的なギミックが存在する。この仕組みも美学を感じさせる無駄のない作りで、決してはるか遠くの部屋から鍵を取ってこさせるような真似はしない。必ず、部屋にあるレバーや、人間などの仕掛けを利用すれば完成するミニマルな構成となっているのだ。なお、論理的パズルだが、利用する能力はやはりクリーチャーめいていて面白い。離れた人間に寄生することで遠くのレバーを操作する仕掛けは、本作の趣味の悪さと明快さを同時に表す象徴的な場面だろう。

 また、怪物は身体の大きさによって使える能力が異なっている。必ずしも巨体で強力なパワーを駆使するだけでなく、時にあえて小さくなり、蜘蛛の糸を吐く・透明化するなど搦手的な能力がキーとなる場面も存在するのだ。

 『CARRION』は成長物語でもある。小さな肉塊に過ぎなかった存在が、植物園や軍事施設を巡り、巨大な存在となって生まれ故郷の研究所へと帰ってくる。ここで奇妙な感慨を覚えることができたなら、それは本作がうまくプレイヤーと肉塊との間に絆を繋いだことの証左ともいえるだろう。画面を這い回る触手の塊に「感情」移入することは困難だ。

 しかし、その身体を縦横無尽に動かし、「自分の意思で」扉を開け閉めする瞬間があったなら、そのとき確かにプレイヤーと触手は重なっている。それは小説や映画で語られるのとは異なる同化体験だ。言葉による語りとは違う、体験によってキャラクターの追体験を実現するゲームだからこそ、「逆ホラー」をいう本作のコンセプトは成り立ったのである。そしてそれを裏打ちするのは、同化体験の障害となりうる要素を注意深く取り除いた丁寧なゲーム設計だったといえる。

 『CARRION』PC/Mac/LinuxSteam)およびNintendo Switch/Xbox Oneで、2050円で配信中で、日本語字幕にも対応している。

Yuki Kurosawa

『CARRION』