―[魂が燃えるメモ/佐々木]―


いまの仕事楽しい?……ビジネスだけで成功しても不満が残る。自己啓発を延々と学ぶだけでは現実が変わらない。自分も満足して他人にも喜ばれる仕事をつくる「魂が燃えるメモ」とは何か? そのヒントをつづる連載第204回

 政治家の麻生太郎は2005年から2007年にかけて外務大臣を務めました。この時に彼が掲げた外交政策が「自由と繁栄の弧」です。

「自由と繁栄の弧」は北欧諸国、バルト諸国、中・東欧、中央アジア・コーカサス、中東、インド亜大陸、東南アジア、北東アジアの諸国に対して、民主主義や市場経済を根付かせようとする試みです。日本はアジアでいち早く民主化しており、そのために必要なノウハウを蓄積しています。このノウハウを民主化してまだ日の浅い国々に提供することで、日本の国益に繋げるのが目的です。

 彼はなぜこの政策を掲げたのか。やる気は「人物の影響」によって引き出されます。「あの時、あの人が、ああ言ったから」あるいは「あの時、あの人が、ああしたから」ということがあって、人は「だから自分はこうしよう」と考えて行動できるようになります。麻生太郎が影響を受けたのは、彼の祖父である吉田茂です。

 吉田茂は1946年から1947年および1948年から1954年の7年間にわたって総理大臣を務めました。その時の功績として知られているのが、日本国憲法の公布と、サンフランシスコ平和条約および日米安全保障条約の締結です。これにより日本は民主化と市場経済の発展という路線を取りました。

 麻生太郎は吉田茂について、著者『麻生太郎の原点-祖父・吉田茂の流儀』(徳間書店)で、「祖父は私の政治家としての原点であるのは間違いないところですが、私のものの考え方や生き方など、人間・麻生太郎の原点とも言える人でした」と記しています。そして実際に、吉田茂が日本を民主化と市場経済の発展に導いたように、麻生太郎は民主主義市場経済体制の国々と協調しようとしました。

 この時の彼の心情は「お手本」です。政治家である麻生太郎が、同じく政治家である祖父の吉田茂を、「これが政治家か」とお手本にすることは自然な成り行きです。

 また同時に、歴史の教科書に載るような大人物として尊敬していることで、その心情が強くなっているのは言うまでもありません。祖父の影響について本人も「原点」と明言していますが、その行動を見ても麻生太郎と吉田茂に重なりがあることは明らかです。このように自分を尊敬する人物や憧れの人物に重ねることで、やる気は高まります。

◆無形のアドバンテージこそ世襲議員の強さ

 もちろんだからといって、彼の政策が正しいとは限りません。麻生太郎は吉田茂の行動をアレンジしていますが、それが国際情勢に適しているのか、そして日本の国益に繋がるのかは試してみなくてはわからず、後年の評価を待つしかないからです。

 ただ少なくとも言えるのは、こうした「人物の影響」によって引き出されるやる気がなければ、様々な批判の矢面に立たされる政治家という仕事は務まりません。サンフランシスコ平和条約の締結に向かう吉田茂は、当時小学生だった麻生太郎に対して、「ポーツマス条約にサインした小村寿太郎が帰国した際に沿道から石を投げられ、家を焼かれる騒ぎがあった」という話をしたと言います。

「小村寿太郎のように、自分の家も民衆に焼かれるかもしれない」と心配する羽目になる小学生は滅多にいません。こうした経験を幼い頃から重ねていると、肝が据わって政治家になりやすくなります。世襲議員が増えるのは、こうした無形のアドバンテージがあるからです。

「祖父が総理大臣」という大人物なのは麻生太郎だからこそです。しかし政治家の孫と政治家の祖父という関係をみれば、それは「家業」の話として受け取ることができます。もしあなたが祖父や父親から家業を継いだ身であれば、「祖父のように働きたい」「父親のように働きたい」と考えたことがないか振り返ってみてください。もしそうした過去の体験を思い出すことができれば、それがあなたのやる気を引き出してくれるでしょう。

【佐々木】
コーチャー。自己啓発とビジネスを結びつける階層性コーチングを提唱。カイロプラクティック治療院のオーナー、中古車販売店の専務、障害者スポーツ「ボッチャ」の事務局長、心臓外科の部長など、さまざまな業種にクライアントを持つ。現在はコーチング業の傍ら、オンラインサロンを運営中。ブログ「星を辿る」。著書『人生を変えるマインドレコーディング』(扶桑社)が発売中

―[魂が燃えるメモ/佐々木]―


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