入管施設の収容者に初の新型コロナウイルス陽性患者が出た。妻が収容されているメキシコ人男性は「心配だ」と眉間にしわを寄せる。

法務省8月7日、東京出入国在留管理局の施設(品川区)に約1年間収容されている50代男性(プライバシーを理由に国籍は開示していない)がコロナに感染したと発表した。PCR検査の結果、陽性と判明した。

被収容者の代理人弁護士や支援者らは8月11日、会見を開き、いまも収容されている人と直接電話をつなぎ、コロナの感染から逃げ場のない不安を明らかにした。

●いまも全国に460人の被収容者

初めて被収容者に感染者が出たことを受け、被収容者の代理人弁護士らは緊急の会見を開いた。

入管施設の収容環境については、日本弁護士連合会が4月、収容施設の三密を解消し、被収容者の解放を求める声明を発表していた。

会見で駒井知会弁護士は、全国の被収容者の数が2019年末の1054人から、現在まで約半数の約460人にまで減少したものの、いまだ約180人が東京入管に収容され、早期の解放が求められているとする。

「被収容者に感染者が出たことで、恐怖を感じて、私のもとに泣きながら連絡をしてくる難民申請者がいます。本件の感染者の性別も(被収容者には)わからないそうで、施設から状況がきちんと説明されているのかも疑問です」

●収容者の生の声「命大事だから、早く出してほしい」

自身や家族が感染におびえる外国人は、不安にさいなまれている。

約2年間も東京入管に収容されているアフリカ出身の男性は、会見場と電話で結ばれ、思いを矢継ぎ早に語った。これまで、仮放免を8回申請しているが、不許可だという。「私、怖い」「毎日不安だよ」「命大事だから、早く出してほしい」

同じ施設に感染者が出ても、被収容者らに何も説明はないそうだ。「ほとんど眠れない人が増えてる。私も怖くて眠れないし、今日は食べてない。毎日心配で子供も二人いる」

「彼は日本人妻の間に2人の子どもがいる。妻は夫の帰りを待ちわびている。帰る場所が日本にあるかたで、逃亡のおそれが1ミリもない人なのに、仮放免が出ない」(駒井弁護士)

出入国在留管理庁の「入管施設における新型コロナウイルス感染症対策マニュアル」は、「 特に仮放免を行うことが適当でないと認められる場合(明らかに感染している場合若しくは感染の疑いがあると判断される場合を含む。)を除き、仮放免を積極的に活用すること。」としている。

指宿昭一弁護士は「つまり、原則、仮放免なんです」と説明する。ところが、このようなマニュアルがあるにもかかわらず、仮放免の基準はよくわからない

メキシコ人の男性「妻は不安がっている」

妻(45)が東京入管に3年間も収容されているメキシコ人の男性(42)は会見に出席した。

感染発表があった8月7日に、妻と話したそうだ。「私も妻も子どもも心配している。死んでいる人もいるし、自分も死んじゃうかもしれない。コロナに感染したら、面会もできない。彼女はすごく怖いと言っているし、子どもに会えなくなるのを心配している」

この男性によれば、施設のなかで混乱が広がっている可能性がある。

「妻から金曜に聞いた。28人、うつっている(感染している)人がいると聞いた」として、具体的な2つ以上の国籍もあげた。情報は定かではない。しかし、被収容者らにきちんとした説明がなされなければ、彼らの不安は高まるばかりだろう。

男性は「彼女(妻)がいない3年間は人生とは言えない」「釈放してください」「(日本政府のやりかたは)正しいと思っていない。収容施設に入ったら人権がなくなる」と訴えた。

弁護士ドットコムニュースでは、施設で下着姿のまま屈辱的な制圧をされたコンゴ出身の女性の事案を紹介した。彼女もまた、今も収容を解かれていないそうだ。「いまだに収容を解かれず、心身の限界が近い」(駒井弁護士)

代理人弁護士らは被収容者への十分なPCR検査の実施と、大規模な解放を入管に訴えた。「それが唯一の解決策と信じています」

「早く出して」「不安で眠れない」東京入管でコロナ、恐怖におびえる外国人の肉声